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*&ruby(せんとうきふようろん){【戦闘機不要論】}; [#j5e71816]
何らかの技術的進歩により、従来の[[戦闘機]]は不要になるという考え方。~
戦闘機無用論、戦闘機廃止論とも。~
何らかの技術革新や新兵器の登場という[[軍事革命]]により、従来の[[戦闘機]]は不要になるだろうという考え方。~
戦闘機という兵器が登場してから幾度となく語られているが、代表的なものには以下のようなものがある。

+高速[[爆撃機]]の発達による戦闘機不要論~
戦間期に発生した思想。~
当時は[[レーダー]]の未発達から[[爆撃機]]の探知、[[要撃]]が困難であったため、[[戦闘機]]並み、もしくはそれを上回る速度を誇る[[爆撃機]]が有れば[[戦闘機]]に迎撃される事は無い。また、[[機関銃座>機関銃]]を多数装備した[[爆撃機]]を攻撃するのは困難である、という考え方が生まれた。~
しかし[[レーダー]]・無線などの防空網の整備による迎撃効率の向上と[[戦闘機]]の飛躍的な高速化により[[爆撃機]]が[[戦闘機]]の迎撃を突破する事は不可能となり、この思想は立ち消えた。~
**1930年代〜高速爆撃機、あるいはマルチロール爆撃機〜 [#o558aec8]
[[第二次世界大戦]]前、「迎撃不可能な[[爆撃機]]を開発できれば[[戦闘機]]の存在意義は失われる」との主張があった。~
当時、まだ[[カウンターエア]]の戦術は未発達で、[[爆撃機]]の迎撃は極めて困難であったためである。~
~
関連:[[九六式陸上攻撃機]]~
具体的な[[戦術]]論としては、高速の[[爆撃機]]によって敵地に素早く侵入し、攻撃後は敵[[迎撃戦闘機]]の追撃を振り切って速やかに脱出する――[[ヒットアンドアウェイ]]戦法が想定されていた。~
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また、[[機関砲]]を備えた[[ガンシップ]]を集中的に投入する[[攻勢対航空作戦]]も提案された。~
[[迎撃戦闘機]]はその性質上、各地の[[航空基地>飛行場]]に分散配置する必要がある。~
よって、[[ガンシップ]]の[[密集編隊>コンバットボックス]]に遭遇した場合に各個撃破を避けるのは困難であった。~
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+[[ミサイル]]の発達による戦闘機不要論~
[[冷戦]]初期〜中期に発生した思想。[[ミサイル万能論]]。~
[[地対空ミサイル]]や[[空対空ミサイル]]の発達により、従来のような空中戦は発生せずミサイルの撃ち合いのみになる。また、[[爆撃機]]も[[弾道ミサイル]]に取って代わられ、[[戦闘機]]の役割は無くなるであろうという考え方。~
実際にIM-69[[地対空ミサイル]]の配備により、カナダが開発していた[[CF-105アロー>CF-105]]迎撃戦闘機は(アメリカの圧力もあって)試作機を完成させたところで中止、イギリスの[[ライトニング]]は実機を作る前に開発中止が決定された((後に撤回しライトニングは量産された))。~
しかし、[[弾道ミサイル]]を撃ち合うような[[全面戦争>国家総力戦]]はついに発生せず、一方で局地[[紛争]]においては、[[ミサイル]]自体の信頼性が低すぎて安定した命中精度が得られず、結局は旧来のような[[戦闘機]]対[[戦闘機]]の[[ドッグファイト]]が展開されることになった。
しかし、[[レーダー]]と無線による[[防空網]]が整備されると[[爆撃機]]の優勢は失われ、この思想は立ち消えた。~
[[超音速]][[戦闘機]]と[[ミサイル]]の発達した現代では、迎撃不能な[[爆撃機]]は存在し得ない((しかし、迎撃を掻い潜って敵地に爆弾を投下する方法そのものについては、[[ステルス]][[爆撃機]]や[[攻撃衛星>軍事衛星]]など、技術革新の可能性は現状でもまだ残されている(実現可能性を度外視すれば)。))。~
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ただし、この時期に生み出された航空戦の思想が後年の[[マルチロールファイター]]の登場を予言していた、と見る向きもある。~
「[[迎撃戦闘機]]を[[撃墜]]できる[[爆撃機]]」((正確に表現すれば「[[爆撃]]に転用できる[[戦闘機]]」だが、この辺りは単に解釈と分類の問題だろう。))の登場により、純粋な意味での[[戦闘機]]が不要になったのは事実である。~
~
関連:[[九六式陸上攻撃機]] [[コンバットボックス]]

**冷戦初期〜ミサイル万能論〜 [#u94c886c]
1940年代後半〜1960年代、[[ミサイル]]の実用化と共に新たな戦闘機不要論が台頭した。~
正面戦力としての[[航空機]]を[[ミサイル]]に置換する事を目指す思想――「[[ミサイル万能論]]」である。~
~
[[爆撃機]]は[[弾道ミサイル]]に、[[戦闘機]]は[[地対空ミサイル]]に置換する事が想定された。~
実際、[[地対空ミサイル]]の開発・配備に伴い、いくつかの次世代[[戦闘機]]開発計画が凍結されている。~
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しかし、[[冷戦]]が本格化していくにつれて[[ミサイル万能論]]は破綻していった。~
[[相互確証破壊]]の確立により、[[核兵器]]の[[搭載母機>プラットフォーム]]である[[弾道ミサイル]]は事実上使用不可能になった。~
結果、航空戦略において[[攻撃機]]・[[爆撃機]]・[[護衛戦闘機>戦闘機]]は必要不可欠であり続けている。~
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また、その他の[[ミサイル]]も様々な運用上の問題が指摘され((警告射撃ができない、搭載可能弾数が少ない、[[電子戦]]に対して脆弱、等。))、運用が制限された。~
このため、[[通常爆弾]]・[[機関砲]]など旧式の兵器も戦術的間隙を埋めるために投入され続けた。~
こうした兵器の[[プラットフォーム]]として[[戦闘機]]・[[攻撃機]]は未だ健在であり続けている。~
~
とはいえ、[[ミサイル]]の発達が航空戦術を大きく塗り替えたのも事実である。~
[[目視外射程]]から放たれる[[空対空ミサイル]]は[[ファイタースウィープ]]を過去のものとし、長射程距離の[[巡航ミサイル]]や[[弾道ミサイル]]は[[戦略爆撃機]]の[[密集編隊>コンバットボックス]]による絨毯爆撃を過去のものとした。~
また、対地戦闘においても[[地対空ミサイル]]と[[対レーダーミサイル]]の応酬が一般的になっている。

**21世紀初頭〜無人機台頭論〜 [#yb7d7cb8]
コンピュータ技術の飛躍的進歩に伴い、現代でも新たな戦闘機不要論が生まれている。~
「将来的には[[無人機]]が[[航空戦>カウンターエア]]の中核となり、[[パイロット>エビエーター]]は前線から姿を消す事になる」という主張である。~
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将来、[[パイロット>エビエーター]]は機体から離れ、遠隔操縦がされるようになるとの予想は大きな広まりを見せている。~
実際、戦闘機ではないものの無人[[攻撃機]]は世界各国で実用の域へと達しており、実戦でも度々戦果を挙げるようになった。~
しかし、現時点において戦闘機の無人化への移行には、各国で目処がついていない。~
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関連:[[MQ-1>RQ-1]]


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