【戦車駆逐車】(せんしゃくちくしゃ)

Tankdestroyer(タンクデストロイヤー)(英)
Jagdpanzer(ヤクトパンツァー)(独)

戦車を撃破する事を目的とする装甲車両。「対戦車車両」「対戦車自走砲」とも。

現代の軍事戦略に照らし合わせて考える場合、戦車駆逐車は予算の無駄遣いとしか言いようがない。
陸戦で主力戦車と互するならば主力戦車をもって充てればよく、わざわざ対戦車のみに特化する必要はない。
実際、戦車駆逐車という畸形の兵器が運用されたのは後にも先にも第二次世界大戦とその直後のみである。

実態を言えば、戦車駆逐車は型落ちして役に経たなくなった旧式戦車を再利用するための苦肉の策である。
国家総力戦の最中に高価な戦車用途廃棄にする余裕などあるはずもなく、使えるものは無理にでも使い続けるしかなかった。
このため、旧式戦車主砲を換装するなど改装を施し、必要最低限の戦力を確保して戦場に送り返したものである。

無論、元が旧式なので装甲機動力ともに新世代の戦車に比べれば明らかに見劣りする代物だった。
よって必然的に待ち伏せが多用され、敵戦車から反撃を受ける前に撤退するゲリラ的な運用が主であった。
しかし火力だけは戦車に互するものであり、最新の戦車を確保できないような逼迫した前線では大いに活用された。

このとき、どのような改装を施すかという設計思想は各国で異なっていた。
ドイツでは比較的に装甲など生存性を重視し、砲塔を撤去するなど戦闘時の機動力を犠牲にする傾向にあった。
逆にアメリカでは装甲を犠牲にして軽量化し、使い勝手と機動力を重視する傾向にあった。
これは前線が次第に連合国有利に傾いていき、アメリカが攻勢に、ドイツが防戦に傾いていった戦況を反映するものとされる。

戦後は国家総力戦体制の影響で混乱状態にあった兵站が整理統合され、戦車駆逐車は新造の戦車に事後を託して姿を消していった。
また、今日では対戦車ミサイルの発達により、ほぼ全ての軍用車両が必要とあらば一切の改装なく戦車駆逐車として運用可能になっている。

関連:Strv.103 60式自走無反動砲 61式戦車 74式戦車


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