*&ruby(せんびよく){【先尾翼】}; [#k9f4dcf9]
&ruby(カナール){Canard};(仏) / &ruby(エンテ){Ente};(独)~
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機首と[[主翼]]前縁との間に設けられる小翼。~
[[水平尾翼]]が、通常の[[飛行機]]と違い、機首部につけられるものと考えられる。~
初期のものは機体形状が羽を広げた鴨に似ていたことから、フランス語とドイツ語でそれぞれ鴨を意味する「カナール」「エンテ」と呼ばれるようになった。~
日本では、フランス語の「カナール」を英語読みした「カナード」という呼び方が一般的である。~

一般的な単発プロペラの[[戦闘機]]は、機首部分を[[プロペラ]]と[[エンジン]]に占有されるため、機首部分に[[機関砲]]を集中的に配置することが難しかった。~
このため[[水平尾翼]]を機首部に、[[主翼]]や[[エンジン]]・[[プロペラ]]を機尾部に移せば、機首部に[[機関砲]]を集中配置することができると考えられた。~
また通常の[[水平尾翼]]と異なり、先尾翼自体も[[揚力]]を分担する設計にすることが可能であり、[[主翼]]を小さくして[[抗力]]を抑えることができる。しかし、翼弦長が短くなるため主翼に比べてあまり効率が良いとは言えず、限界がある。~
さらに[[プロペラ]]の[[推力]]が胴体に邪魔されないため、加速性能は通常のプロペラ機よりも優れる。~
この考えに基づき、[[XP-55]]や[[震電]]などの機体が試作された。火力と速力に優れていたものの(([[XP-55]]は設計に問題があり、速力や安定性も劣っていた))、旋回性能は通常の[[レシプロ>レシプロエンジン]]型[[戦闘機]]に劣っていた。~

その後程なくジェット機の時代に入り、超音速機の開発競争が激化すると、[[音の壁]]を破る手段のひとつとして[[デルタ翼]]が注目された。しかし[[デルタ翼]]は低速時に[[迎え角]]が極端に大きくなるという弱点があった。~
この対策として、先尾翼と[[デルタ翼]]を組み合わせた[[クロースカップルドデルタ]]と呼ばれる翼形が登場した。現代の[[デルタ翼]]機は、この[[クロースカップルドデルタ]]が大半を占める。~
ただしこの場合の先尾翼には渦流を発生させることのみを目的とした固定式のものもあり、必ずしも[[尾翼]]と同一の役割を持っているとは限らない。~

なお、史上初の[[飛行機]]、[[フライヤー]]は先尾翼機である。

関連:[[水平安定板]] [[昇降舵]] [[スタビレーター]] [[三面翼]]~

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