【成形炸薬弾】(せいけいさくやくだん)

High Explosive Anti Tank (HEAT(ヒート)).

戦車の装甲を破壊するために設計された弾頭の一種。
対戦車榴弾、ホローチャージ弾ともいう。

戦車滑腔砲に装填される他、対戦車ミサイルロケット弾に利用される。
滑腔砲では軌道を安定させる翼を取り付けたもの、通称HEAT-FS(Fin Stabilized、翼安定式成形炸薬弾)を用いる事が多い。

弾頭を直列に二つ並べたタンデムHEATもあり、爆発反応装甲などの対策として用いられるが、重量が増加するため射程は短くなる。

関連:戦車 対戦車砲 粘着榴弾 多目的対戦車榴弾 高速徹甲弾 装弾筒付徹甲弾 モンロー効果 ノイマン効果

原理

弾頭の爆薬は円筒状に成型され、その先端に円錐状の窪みを付けて金属板の円錐(ライナー)を填め込まれている。
この特殊な形状で成型された炸薬は、以下のメカニズムによって装甲車両を貫徹・破壊する。

  1. 弾頭の先端に設置された接触信管によって起爆。
  2. モンロー効果によって爆風の圧力が窪みの内側へ集中し、前方へ噴出する。
    この際、ユニゴオ弾性限界?を超えた圧力で液状化した金属板も同時に噴出し、金属ジェットを形成する。
  3. 金属ジェットの着弾によって装甲ユニゴオ弾性限界?を超えて液状化し、金属ジェットを貫通させる。
    この金属ジェットはごく短距離で拡散するため、金網や中空装甲などによって貫通が阻害される。
  4. 装甲を貫通した場合、その孔を通して爆風と高温ガスが侵入し、中にある機器や乗員を破壊・殺傷する。
    車両に対して使用すれば半密閉空間に超高温の爆風が充満する事になり、乗員の生存は絶望的である。
  5. 砲弾の殻が爆風で破裂、飛散し、周囲に榴弾としての破壊力を発揮する。

飛翔速度に関係なく爆薬のみで破壊力を得るため、歩兵が携行できる大きさであっても戦車を破壊し得る。
一方、弾体が回転していると遠心力によって金属ジェットの形成が阻害されるため、ライフリングされた砲には不向きである。
また、原理上金属ジェットが形成されて初めて威力を発揮するため起爆のタイミングがずれると十分な金属ジェットが得られず、威力が落ちる。


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