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*&ruby(せいけいさくやくだん){【成形炸薬弾】}; [#k624ac0d]
High Explosive Anti Tank (&ruby(ヒート){HEAT};).~
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戦車の[[装甲]]を破壊するために設計された弾頭の一種。~
対戦車[[榴弾]]、ホローチャージ弾ともいう。~
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円筒状に成型した[[爆薬]]にくぼみをつけて発火させると、そのくぼみから超高温の燃焼ガスが超高速で噴出するという原理([[モンロー効果]]・[[ノイマン効果]])を利用した弾頭の一種。~
爆薬は弾体に収められるが、一方をライナーと呼ばれる円錐の金属で構成する。~
こうすることにより、爆発エネルギーは円錐の頂点方向に向かい、ライナーを溶かすと同時に運動エネルギーを与える。こうして生成された高温高圧のメタルジェットが一方向に向かう。~
このジェット噴流の運動エネルギーによって戦車等の装甲を穿孔し、中の乗員を殺傷する。さらに、爆薬を収めた弾体自体も破壊されるため、榴弾としての効果も見込める。~
[[戦車]]の[[滑腔砲]]に装填される他、[[対戦車ミサイル]]や[[ロケット弾]]に利用される。~
[[滑腔砲]]では軌道を安定させる翼を取り付けたもの、通称HEAT-FS(Fin Stabilized、翼安定式成形炸薬弾)を用いる事が多い。~
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これらの原理から、口径のほかに、信管のスタンドオフ距離(メタルジェットが生成される前や生成されてから装甲まで遠すぎると、意味が無くなる)やライフル・弾体の回転の有無(メタルジェットの集中が阻害される)も有効性に影響を与える。逆に、装甲側もこの原理を使って防御が出来る。~
弾頭を直列に二つ並べた[[タンデム]]HEATもあり、[[爆発反応装甲]]などの対策として用いられるが、重量が増加するため射程は短くなる。~
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砲弾や[[ミサイル]]の飛翔速度(運動エネルギー)に影響されないため、戦車砲だけでなく、低速な歩兵携帯型の対戦車火器や[[ロケット弾]]など幅広い分野で採用されている。~
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近年では、戦車砲から発射されるものでは翼安定式成形炸薬弾(HEAT-FS:High Explosive Anti Tank - Fin Stabilized)が多数を占めるが、まとめてHEATと呼ぶことが多い。~
その他、基本原理は同じだが対装甲目標以外にも利用可能な[[多目的対戦車榴弾]](HEAT-MP)も増えている。~
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関連:[[戦車]] [[対戦車砲]] [[粘着榴弾]] [[高速徹甲弾]] [[装弾筒付徹甲弾]] [[爆発反応装甲]]
関連:[[戦車]] [[対戦車砲]] [[粘着榴弾]] [[多目的対戦車榴弾]] [[高速徹甲弾]] [[装弾筒付徹甲弾]] [[モンロー効果]] [[ノイマン効果]]

**原理 [#k71d6646]
弾頭の[[爆薬]]は円筒状に成型され、その先端に円錐状の窪みを付けて金属板の円錐(ライナー)を填め込まれている。~
この特殊な形状で成型された炸薬は、以下のメカニズムによって[[装甲]]車両を貫徹・破壊する。

+弾頭の先端に設置された接触信管によって起爆。
+[[モンロー効果]]によって爆風の圧力が窪みの内側へ集中し、前方へ噴出する。~
この際、[[ユゴニオ弾性限界]]を超えた圧力で液状化した金属板も同時に噴出し、金属ジェットを形成する。
+金属ジェットの着弾によって[[装甲]]も[[ユゴニオ弾性限界]]を超えて液状化し、金属ジェットを貫通させる。~
この金属ジェットはごく短距離で拡散するため、金網や[[中空装甲]]などによって貫通が阻害される。~
+装甲を貫通した場合、その孔を通して爆風と高温ガスが侵入し、中にある機器や乗員を破壊・殺傷する。~
車両に対して使用すれば半密閉空間に超高温の爆風が充満する事になり、乗員の生存は絶望的である。
+砲弾の殻が爆風で破裂、飛散し、周囲に[[榴弾]]としての破壊力を発揮する。~

飛翔速度に関係なく[[爆薬]]のみで破壊力を得るため、歩兵が携行できる大きさであっても[[戦車]]を破壊し得る。~
一方、弾体が回転していると遠心力によって金属ジェットの形成が阻害されるため、[[ライフリング]]された砲には不向きである。~
また、原理上金属ジェットが形成されて初めて威力を発揮するため起爆のタイミングがずれると十分な金属ジェットが得られず、威力が落ちる。


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