【水メタノール噴射】(みずめたのーるふんしゃ)

内燃機関の出力を向上させる手段の一種。
レシプロエンジンガスタービンに取り入れられる空気を冷却するために、水とメタノールの混合気体を噴射する事。
この機構を搭載した機体では、水メタノール噴射時の推力を「ウェット推力」、通常時の推力を「ドライ推力」と呼んで区別する事がある。

断熱圧縮された吸気に水を噴射し、その気化熱で吸気を冷却し、酸素密度を上げ、効率を高める。
また、冷却する事で燃料(混合気)の自然発火とノッキングが抑制され、高圧下での挙動を安定させる。
原理的に必要なのは水だけだが、高空で用いるために凍結防止剤としてメタノールが添加される。

開発された1940年当時には有用な技術だったが、現代では完全に陳腐化しており、用いられていない。
技術的問題点としては以下のような点が指摘されている。

  • 航空機搭載を想定すると100kg近い巨大な機構が必要になり、ペイロードや整備性を大きく圧迫した。
  • ノッキングの問題は燃料の質に依る所が多く、石油精製技術の進歩した現代ではあまり意味がない。
    全盛期の1940年代当時でさえ、上質な高オクタンガソリンを豊富に支給できた連合国側では顧みられていない。
  • 水噴射を均等化するのが難しいため、エンジン内で温度差が生じて異常振動を誘発する。
  • エンジン内に水が混入する関係上、シリンダーの腐食などで故障を誘発する。

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