【推力偏向ノズル】(すいりょくへんこうのずる)

vectored thrust nozzle
ジェットエンジンロケットエンジンに備えられた噴射ノズルのうち、噴射方向が機体に対して可変のもの。
機体の旋回性能を向上させることが期待されるものであり、特に動翼での操縦ができない宇宙ロケットではほぼ必須の存在と考えられる。*1
反面、固定式ノズルに比べれば機構が複雑となり、その分信頼性が劣る。

飛行機においても機動性やSTOL性を向上させる目的で用いられる。
アメリカ空軍では、F-15をベースとした「F-15S/MTD」実験機が開発された。
これは、主としてSTOL性向上を目的に試作されたもので、1軸の偏向しかできないノズルのものであった。
NASAに移管されて「F-15ACTIVE」と名を変えた後は、機動性向上のため2軸式のノズルに変更されている。

実用機では、F-22に1軸式の推力偏向ノズルが採用されている。
また、ロシアのMiG-35Su-37に、機動性向上のため2軸式の推力偏向ノズルが採用されている。

一方、単純な機構で偏向能力や信頼性の向上を狙った「推力偏向パドル」も開発されている。
NASAではX-31?に採用され、従来の飛行機では実現不可能な機動*2を実現している。
日本で研究開発中の「心神」にも推力偏向パドルが設けられている。

VTOLを実現するにも、推力偏向が有効であるとされる。
ハリアーやその派生機種には4ノズル式の推力偏向ノズル、Yak-141では推力偏向ノズルとリフトジェットの組み合わせが使われている。
F-35Bには推力偏向ノズルとリフトファン?を組み合わせたものが使われているが、こちらのノズルにもYak-141の技術が応用されている。

関連:VIFF


*1 姿勢制御装置を使うことで固定ノズルでも旋回可能だが、その分推進剤を多く消費する。
*2 既に現在の技術で人間が耐えられる限界を超える機動性が可能となっている。

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