【垂直発射システム】(すいちょくはっしゃしすてむ)

Vertical Launching System (VLS)

ミサイル発射装置の一種。戦闘艦の甲板下に埋め込むように設置される事が多い。
発射筒は真上に向くように設計され、平時は蓋をされた発射筒が弾薬庫を兼ねる。
発射されたミサイルは、真上に上昇しながら初期中間誘導を受けて目標へ飛翔する。

垂直発射システムは以下のような特徴を持つ。

  • 利点
    • 発射機および弾薬庫のペイロード容積を必要最小限に留められる。
    • 機械駆動の装填機構が存在しない為信頼性が高い。
    • レーダー反射面積にほとんど影響を与えない。
    • 被弾時に被害を受けにくい。
    • 互換性が比較的高く、多種多様な弾体を発射できる。
    • 砲塔などの可動部分を必要としないため、連続発射が容易。
    • 悪天候時の保管が容易。
  • 欠点
    • 大型艦艇などの巨大な発射母艦を想定しており、小型艦や車両への搭載が困難。
    • 発射されたミサイルが極端な軌道での飛翔を強いられる。

主な垂直発射システム

  • アメリカ
    • Mk41?
      汎用型。
      SM-1/2/3VLAトマホークESSMなど、様々な用途のミサイルを発射する事が可能。
      イージス戦闘システムの要であり、1基8セルで構成される。
      現在世界でもっとも多く運用されているVLSで、11ヶ国の海軍で16クラス、173隻の艦艇に搭載されて運用されている。

    • Mk45:
      潜水艦用。
      ロサンゼルス級原子力潜水艦「プロビデンス(SS-719)」以降の艦とヴァージニア級原子力潜水艦全艦の前部に搭載されている。

    • Mk48:
      シースパロー艦対空ミサイル用。ESSMも搭載可能。
      • Mk.56:
        Mk.48のデュアルパックタイプ。ESSMを2発収容できる。

    • Mk.57 PVLS*1
      現在開発中の新型VLSでMk.41と同じく汎用型。
      ズムヴォルト?級ミサイル駆逐艦に搭載予定。

  • ソ連/ロシア
  • フランス
  • イギリス
    • シーウルフ
      GWS26(後期型)で採用され、即応性が向上した。
      VLSは円筒形の1本1本独立した発射機を組み合わせ、8本で1基を構成している。

    • CAMM*5/シーセプター:
      レイピアやシーウルフの後継として開発中の短距離防空/個艦防空ミサイル。
      SVL(ソフト・バーティカル・ランチ)と呼ばれる発射機のピストンによってミサイルを射出したのち、空中で固体燃料ロケット・モーターに点火するという新しい発射方式を採用している。

  • イスラエル
    • バラク
      1基8セルで構成される。VLSからの運用を前提に開発された。
      艦隊防空用ミサイルのバラク-8(開発中)もMk41か専用VLSにより運用される予定。

  • 中国
  • 南アフリカ
    • ウムホント:
      個艦防空ミサイル。8セルで1セットを構成する。

  • 韓国
    • 国産VLS:
      艦対地ミサイル「天竜(チョニョン)」巡航ミサイルおよび「紅鮫(ホンサンオ(K-ASROC))」対潜ミサイル専用。
      外形・寸法はMk41とほぼ同一だがコールドローンチ方式を採用している。
      世宗大王級駆逐艦に搭載。

  • インド
    PJ-10「ブラモス」:
    ロシアと共同開発した対艦巡航ミサイル用。1基8セルから構成される。
    ラージプート級駆逐艦の一部が改装により搭載されたほか、今後新造艦への搭載が予定されている。

http://www4.plala.or.jp/klesa108/diary/yksk0407/dd-107_vls.jpg
いかづちのMk.41 VLS(RUM-139用)


*1 Peripheral Vertical Launch System.
*2 後に、3K96「リドゥート」に変更されている。
*3 Универсальный Корабельный Стрельбовой Комплекс:汎用艦発射複合体
*4 SM-2MRトマホークの運用も可能である。
*5 Common Anti-Air Modular Missile.

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