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*&ruby(にんげんのたて){【人間の盾】}; [#j7e9d2c7] Human Shield.~ 交戦中、[[軍事目標]]の内部または周囲に民間人(主として女性や乳幼児、病人、高齢者などの非戦闘員)がいることを相手側に知らせ、以って攻撃を思いとどまらせようとすること。~ また、軍隊が作戦行動で[[人海戦術]]を取ろうとする場合において、非戦闘員を意図的に兵士の前に置いて強制的に前進させ、兵士の損失を防ごうとすることもこれに当てはまる。~ ~ [[ジュネーブ条約]]では「非人道的」として禁じられている戦術であるが、近年では反戦運動の一環として、運動家やその思想・活動に共鳴した一般市民のボランティアによって行われることもある。~ 彼らはこれにより「軍隊による攻撃の巻き添えで犠牲となった市民」の写真や映像を世界中の[[メディア>マスコミ]]へ配信させ、以って「交戦当事国への厭戦機運の醸成」「戦闘行為の抑止」などといった目的を達成しようとするが、実際には、[[アメリカ軍]]のように精密攻撃ができる技量・装備を持つ軍隊が相手となった場合ではほとんど無意味となる。~ (そうした軍隊は、日時・場所を事前に相手側に通告してから攻撃することができるので、「事前通告があったにもかかわらず、市民が退去しなかったのは自己責任」という理屈になる)~ [[テロリスト]]が犯行現場や戦場に居合わせた民間人を人質として利用する事。~ [[非合法戦闘員]]との混同を避けるため、女性・乳幼児・病人・高齢者などが特に利用される。~ ~ 2003年のイラク戦争において、イラク政府は上記のことから、人間の盾となることを志願して入国しようとした外国人を[[スパイ]]として取り扱うことを通告。~ このため、イラク領内でそうした活動をしようとした者のほとんどが何もできないまま帰国する羽目になった。 学術的定義のないプロパガンダ用語であり、その意味するところは不明瞭である。~ 一般的には、[[空爆]]を避けるために市街地に[[潜伏>アンブッシュ]]する事などを指す。~ ~ [[文民統制]]された[[軍隊]]の[[交戦規定]]は、普通、民間人を攻撃して殺す事を認めない((現代の戦時国際法では明示的に禁止されている。))。~ よって、人間の盾は敵の[[戦略]]的自由を奪い、[[非対称戦争]]における[[防御]]の不利を相殺する事ができる。~ また、人間の盾とされた者が死傷すればこれを「虐殺」として喧伝し、[[第五列]]を通じて敵国の[[敗北主義者>敗北主義]]からの[[支援]]を引き出す事もできる。~ ~ 近年では[[平和主義]]に基づく[[テロリズム]]として、自発的に人間の盾になろうとする人間も出現している。~ [[軍隊]]による民間人殺傷を撮影・記録して公表する、という暴力的行為には戦争を妨害する力があるからだ。 >2003年のイラク戦争では、イラク政府はそうした「自発的志願者」を[[スパイ]]として取り扱うと通告した。~ この通告のどの程度までが防諜の意図で、どの程度までが戦後処理を見据えた政治的配慮だったのかは定かでない。~ 実際に[[スパイ]]もいたのだろうし、「人間の盾を使った」という悪評を避けたかったのも確かだろう。~ ちなみに、渡航禁止令が出たわけではなく、戦争を見物するためにイラクに入国した人間も少数存在する((大半は報道関係者だが、合理的な動機を想定できない奇怪な事例もわずかながらあったようだ。))。 近年の戦争ではこうした[[第五列]]への影響を避けるため、事前に徹底した[[スパイ]]活動が行われるようになっている。~ 現代の先進軍事技術は、十分な[[ヒューミント]]があれば、[[間接砲撃]]や[[空爆]]でも民間人を避けて敵だけを殺す事ができる。~ また、[[非対称戦争]]では事前に攻撃日時・対象を公表し、避難する時間を与える事も可能である。~ >攻撃が行われる事を知りながら民間人が退去しなかった、という事実は政治的問題を変質させる。~ そんな事が起こりえるのは、件の民間人が[[非合法戦闘員]]であったか、拉致監禁されていたかのいずれかである。~ そしていずれにせよ、自軍が敵国の民間人を巻き込んだのではない、と立証するに足る状況証拠である。 **戦術的ゲリラ戦 [#s9d95151] 損耗し死傷する事を前提として[[陽動]]に用いる使い捨ての兵士を「人間の盾」と称する場合もある。~ ~ たとえば、奴隷・囚人・貧困層などに質の悪い雑多な武器を与えて[[民兵]]とし、大した訓練も[[支援]]もなしに[[突撃]]させる。~ 突撃した促成兵士たちは当然、敵の反撃にあって殺されていくのだが、敵はその対応に忙殺され、正規軍を相手取る余裕を失う。~ つまり[[戦術]]上、人間を盾として使い捨てれば反攻[[作戦]]の実行に必要な機会と時間を得る事も可能となる。~ ~ [[ベトナム戦争]]などの[[ゲリラ戦]]、特に少年兵を徴用した事例はこの類型の典型だろう。