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*&ruby(じゅんようせんかん){【巡洋戦艦】}; [#j6e7eca1]
Battle Cruiser.~
かつて存在した[[水上艦]]の一種で、[[巡洋艦]]並みの速度性能と、[[戦艦]]級の[[艦載砲]]を兼ね備えた[[艦艇]]。~
1908年にイギリス海軍が建造した「[[インビンシブル]]」級が、世界初の巡洋戦艦である。~
~
日本語では「巡洋戦艦」と呼ばれ、戦艦の一種に分けられているが、実態的には「[[装甲巡洋艦>巡洋艦]]」を拡大発展させたもので、英語表記も「巡洋艦(cruiser)」を語源としたものとなっている。~
>これは、この艦種の生い立ちや実際の運用法から見てまったく妥当な呼び名であり、また本艦種の限界も良く表している。
かつて存在した[[水上艦]]の一種。~
艦種記号はイギリス[[海軍]]で「BC」、[[アメリカ海軍]]で「CC((ただしアメリカ海軍では就役なし。CCの符号は戦術指揮艦([[指揮巡洋艦>巡洋艦]])に改めて割り振られた。))」。~
[[巡洋艦]]並みの速度性能と、[[戦艦]]並みの[[砲火力>艦載砲]]または[[装甲]]を兼ね備えた[[戦闘艦]]を指す。~
>「巡洋艦並に速い戦艦」という意味ではない。

「速力と砲撃戦能力を高いレベルで兼ね備えた艦」としては、1930年代後半以後に出現した「高速戦艦((アメリカの[[アイオワ]]型、日本の[[金剛]]型(近代化改装後)など。))」があるが、巡洋戦艦とこれらとの違いは、速力のために[[装甲]]を犠牲にしている(あるいは重視されていない)点で、装甲など直接的な防御力は「巡洋艦よりも多少マシ」というレベルに抑えられている。~
そのため、巡洋戦艦同士の砲撃戦が発生した[[ユトランド沖海戦>第一次世界大戦]]では英独双方で大きな損害を出した。~
本艦種は戦艦よりも高価になる傾向が強く、安易に沈む事は財政上からも重大な問題と成り得る。同時に鈍足な戦艦では砲戦に参加するのに時間~がかかり過ぎ、海戦の趨勢を決めるに足りない。その結論として達したのが、戦艦としての防御力を維持しつつ、高速力を発揮しうる「高速戦艦」であったが、それはより高価な存在であり、思うように数を揃える事が出来ず、大艦巨砲主義の凋落の一端となった。((他に航空機、潜水艦、魚雷、機雷といった、安価な兵器に思いの外脆いといった要素も重なった。))

[[第一次世界大戦]]後は、その[[戦訓>バトルプルーフ]]から各国とも防御力強化のため改装を施したが、やはり本式の戦艦に比べればその防御力は劣り、[[第二次世界大戦]]に投入された巡洋戦艦のうち、生き残ったのは英国の「レナウン」とトルコの「ヤウズ」((旧ドイツ艦「ゲーベン」→オスマン・トルコ帝国「ヤウズ・スルタン・セリム」→「ヤウズ・セリム」。&br;  なお、本艦は戦後の1960年まで艦籍があり、[[NATO>北大西洋条約機構]]参加国海軍の統一艦籍番号「B70」を与えられていた。))だけだった。~
分類上、戦艦と同じ扱いを受ける事が何かと多いこの艦種だが、当初の艦種類別は装甲巡洋艦であった事から[[弩級>ドレッドノート(戦艦)]]あるいは[[超弩級>超ド級]]装甲巡洋艦と言った方が正確で、本来の運用形態は[[巡洋艦]]に近い。~
日本語の研究史の文脈では「巡洋戦艦」と訳出されているが、「戦闘巡洋艦」と表記した方が本質に近いという主張もある。~
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ちなみに、[[アメリカ海軍]]のアラスカ級は、12インチの主砲を備えているものの[[巡洋艦]]に分類されている。~
新たに創出された艦種であるため、国によって性質が異なった。~
英国その他多くの国では「[[巡洋艦]]に[[戦艦]]と同等の[[主砲>艦載砲]]を載せた武装哨戒艦あるいは通商破壊艦」として建造された。~
一方、ドイツ・ロシアでは「[[巡洋艦]]に[[戦艦]]相当の装甲を施した高速戦闘艦」として建造されている。~
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当初の運用想定は「継続的な[[通商破壊戦]]のために[[巡洋艦]]を排除する艦艇」であり、[[戦艦]]との遭遇は想定されていなかった。~
しかし、[[第一次世界大戦]]前夜の[[戦略]]環境においては、[[通商破壊戦]]の過程で[[戦艦]]との交戦を想定せざるを得なくなった。~
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実際に1914〜1916年にかけての各海戦で投入された巡洋戦艦は、[[戦艦]]・巡洋戦艦との撃ち合いで壊滅的被害を被った。~
英国式は[[戦艦]]級の砲撃に耐えられる[[装甲]]を持たず、継戦能力が著しく低かった。~
ドイツ・ロシア式では砲撃を受けてもある程度耐えられたが、[[主砲>艦載砲]]の口径を抑えたため打撃力に欠け、[[戦艦]]に対して有効な反撃手段がなかったため、結局は同じ事だった。~
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この[[戦訓>バトルプルーフ]]を受けて各国が巡洋戦艦の装備強化を図ったが、結局は[[戦艦]]に対抗できるだけの性能には至らなかった。~
にも関わらず、構造上巨大な機関部を内蔵している為に下手な[[戦艦]]よりも大型化し、価格も高騰する傾向にあった。~
技術の進歩により小型軽量で高出力の機関が造れるようになったため、攻・走・守にバランスの取れた高速戦艦に取って代わられた。~
~
結局のところ設計思想そのものに錯誤があったと言わざるを得ず、1930年代には主要国海軍の装備要目から姿を消している。

**代表的な艦(カッコ内は完成年と隻数) [#a1f49017]
-英国海軍
**代表的な艦 [#a1f49017]
※カッコ内は1番艦の就役年度と建造隻数
-英国
--[[インヴィンシブル級>インビンシブル]](1909年、3隻)
---インヴィンシブル、インフレキシブル、インドミダブル
--インディファティガブル級(1911年・3隻)
---インディファティガブル、オーストラリア、ニュージーランド
--ライオン級(1912年・3隻)
--タイガー(1914年・1隻)
---ライオン、プリンセス・ロイアル、クイーン・メリー
--[[タイガー>タイガー(巡洋戦艦)]](1914年・1隻)
--レナウン級(1916年・2隻)
--フッド(1920年・1隻)
---レナウン、レパルス
--フッド(1920年・1隻)~
~
-ドイツ帝国(([[第一次世界大戦]]までは重巡洋艦や装甲巡洋艦を含めて、全て「大型巡洋艦」に分類されている。))
-ドイツ
--フォン・デア・タン(1910年・1隻)
--モルトケ級(1911年・2隻)
---モルトケ、ゲーベン(([[第一次世界大戦]]勃発直後にトルコ領内に逃げ込んでそのまま譲渡され「ヤヴズ・スルタン・セリム」→「ヤヴズ・セリム」→「ヤヴズ」となり、1950年代まで現役にあった。))
--ザイドリッツ(1913年・1隻)
--デアフリンガー級(1914年・3隻)
---デアフリンガー、リュッツオウ、ヒンデンブルク
--シャルンホルスト級(1938年・2隻)
---シャルンホルスト、グナイゼナウ~
~
-大日本帝国
--筑波型(1907年・2隻)
---筑波、生駒
--鞍馬型(1909年・2隻)
--[[金剛型>金剛]](1913年・4隻)
---鞍馬、伊吹
--[[金剛型>金剛(巡洋戦艦)]](1913年・4隻)((近代化改修後は戦艦に再分類される場合がある。))
---金剛、榛名、比叡、霧島~
~
-ソ連/ロシア
--[[キーロフ]]型([[ミサイル巡洋艦>ミサイル艦]]だが[[ジェーン海軍年鑑]]において巡洋戦艦に分類。)~
***未成艦 [#c5d9afbe]
-[[米国海軍>アメリカ海軍]]([[ワシントン海軍軍縮条約]]により廃棄)
--[[レキシントン級>レキシントン]](1920年・6隻計画)
---「レキシントン」および「サラトガ」は航空母艦に設計変更。~
--[[キーロフ型>キーロフ]](1980年・4隻)(公称艦型は[[ミサイル巡洋艦>巡洋艦]]だが[[ジェーン海軍年鑑]]において巡洋戦艦に分類)~

***未成艦(カッコ内は1番艦起工年度と計画隻数) [#c5d9afbe]
-アメリカ合衆国([[ワシントン海軍軍縮条約]]により廃棄)
--[[レキシントン級>レキシントン]](1920年・6隻)~
---レキシントン、[[コンステレーション]]、サラトガ、[[レンジャー]]、コンスティチューション、[[ユナイテッド・ステーツ]]~
※「レキシントン」および「サラトガ」は[[航空母艦]]に設計変更。~
~
-ソ連/ロシア(ロシア革命により中止)~
--ボロディノ級(1913年・4隻計画)~
--ボロディノ級(1913年・4隻)~
---ボロディノ、イズメイル、キンブルン、ナヴァリン~
~
-大日本帝国([[ワシントン海軍軍縮条約]]により廃棄)
--天城型(1920年・4隻計画)
---1番艦「天城」は空母改装予定だったが関東大震災により廃棄。2番艦「[[赤城]]」は[[空母]]へと改装。~
--天城型(1920年・4隻)~
---天城、赤城、[[高雄]]、[[愛宕>あたご]]~
※1番艦「天城」は空母改装予定だったが関東大震災により廃棄((船体の一部は、現在でも民間の造船所で浮桟橋として供用されている。))。2番艦「[[赤城]]」は[[空母>航空母艦]]へと改装。~
--十三号艦型(1923年・4隻)~
資材発注前に計画中止。~
~
-ドイツ帝国(敗戦のため中止)
--マッケンゼン級(1915年・4隻計画)
--ヨルク代艦級(1916年・3隻計画)
---ローン級装甲巡洋艦2番艦「ヨルク」及びシャルンホルスト級装甲巡洋艦「シャルンホルスト」「グナイゼナウ」の代艦として計画。
-ドイツ(敗戦のため中止)
--マッケンゼン級(1915年・4隻)
---マッケンゼン、グラーフ・シュペー、プリンツ・アイテル・フリードリヒ、フュルスト・ビスマルク~
--ヨルク代艦級(1916年・3隻)~
---ヨルク代艦、グナイゼナウ代艦、シャルンホルスト代艦~
※ローン級装甲巡洋艦2番艦「ヨルク」及びシャルンホルスト級装甲巡洋艦「シャルンホルスト」「グナイゼナウ」の代艦として計画。ヨルク代艦のみ起工。~
~


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