【巡洋戦艦】(じゅんようせんかん)

Battle Cruiser.
かつて存在した水上艦の一種で、巡洋艦並みの速度性能と、戦艦級の艦載砲を兼ね備えた艦艇
1908年にイギリス海軍が建造した「インビンシブル」級が、世界初の巡洋戦艦である。

日本語では「巡洋戦艦」と呼ばれ、戦艦の一種に分けられているが、実態的には「装甲巡洋艦」を拡大発展させたもので、英語表記も「巡洋艦(cruiser)」を語源としたものとなっている。

これは、この艦種の生い立ちや実際の運用法から見てまったく妥当な呼び名であり、また本艦種の限界も良く表している。

「速力と砲撃戦能力を高いレベルで兼ね備えた艦」としては、1930年代後半以後に出現した「高速戦艦*1」があるが、巡洋戦艦とこれらとの違いは、速力のために装甲を犠牲にしている(あるいは重視されていない)点で、装甲など直接的な防御力は「巡洋艦よりも多少マシ」というレベルに抑えられている。
そのため、巡洋戦艦同士の砲撃戦が発生したユトランド沖海戦では英独双方で大きな損害を出した。

第一次世界大戦後は、その戦訓から各国とも防御力強化のため改装を施したが、やはり本式の戦艦に比べればその防御力は劣り、第二次世界大戦に投入された巡洋戦艦のうち、生き残ったのは英国の「レナウン」とトルコの「ヤウズ」*2だけだった。

ちなみに、アメリカ海軍のアラスカ級は、12インチの主砲を備えているものの巡洋艦に分類されている。

代表的な艦(カッコ内は完成年と隻数)

  • 英国海軍
    • インヴィンシブル級(1909年、3隻)
    • インディファティガブル級(1911年・3隻)
    • ライオン級(1912年・3隻)
    • タイガー(1914年・1隻)
    • レナウン級(1916年・2隻)
    • フッド(1920年・1隻)
  • ドイツ帝国*3
    • フォン・デア・タン(1910年・1隻)
    • モルトケ級(1911年・2隻)
    • ザイドリッツ(1913年・1隻)
    • デアフリンガー級(1914年・3隻)
    • シャルンホルスト級(1938年・2隻)
  • 大日本帝国
    • 筑波型(1907年・2隻)
    • 鞍馬型(1909年・2隻)
    • 金剛型(1913年・4隻)
  • ソ連/ロシア

未成艦

  • 米国海軍ワシントン海軍軍縮条約により廃棄)
    • レキシントン級(1920年・6隻計画)
      • 「レキシントン」および「サラトガ」は航空母艦に設計変更。

  • ソ連/ロシア(ロシア革命により中止)
    • ボロディノ級(1913年・4隻計画)

  • 大日本帝国(ワシントン海軍軍縮条約により廃棄)
    • 天城型(1920年・4隻計画)
      • 1番艦「天城」は空母改装予定だったが関東大震災により廃棄。2番艦「赤城」は空母へと改装。

  • ドイツ帝国(敗戦のため中止)
    • マッケンゼン級(1915年・4隻計画)
    • ヨルク代艦級(1916年・3隻計画)
      • ローン級装甲巡洋艦2番艦「ヨルク」及びシャルンホルスト級装甲巡洋艦「シャルンホルスト」「グナイゼナウ」の代艦として計画。

*1 アメリカのアイオワ型、日本の金剛型(近代化改装後)など。
*2 旧ドイツ艦「ゲーベン」→オスマン・トルコ帝国「ヤウズ・スルタン・セリム」→「ヤウズ・セリム」。
  なお、本艦は戦後の1960年まで艦籍があり、NATO参加国海軍の統一艦籍番号「B70」を与えられていた。

*3 第一次世界大戦までは重巡洋艦や装甲巡洋艦を含めて、全て「大型巡洋艦」に分類されている。

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