【准将】(じゅんしょう)

Brigadier general(陸軍および空軍)/Rear admiral lower half(海軍

軍隊の階級の1つで、将官に区分され、少将の下、大佐の上*1に位置する。
NATOが定めた階級符号では「OF-6」に相当する。
陸軍の場合、古くは「旅団少将」と呼称されていたこともあった。

かつて、"Coronel(大佐)"は階級とともに役職(連隊長)も兼ねており、大佐になるには自費で連隊を編成・維持しなければならなかった。
そのため、連隊を維持し得る財力を持つ貴族は経験が無くとも大佐に昇進できる一方、有能であってもそうでない人材は中佐止まりであった。
この人材登用のため、1667年にフランスのルーヴォア侯ミシェル・ル・テリエによって制定された*2

このため、アンシャン・レジーム期の陸軍将官は

  • Maréchal-général des camps et armées du roi(大元帥)
  • Maréchal de France(元帥)
  • Colonel-général(上級大将)*3
  • Général(大将)
  • Lieutenant-général(中将)
  • Maréchal de camp(少将*4
  • Brigadier des armées du roi(准将)
    の七階級制であった。 このBrigadier des armées du roiは、18世紀の頃には1つ星の階級章を使用していたが、1788年5月17日に廃止*5されて今日に至ったため、フランス軍の将官は2つ星から始まる。
    また、この国における「Général de brigade」は上述のMaréchal de campを1793年2月25日に改称したもので、第二次世界大戦後に准将相当官となった。*6

国によっては伝統的に置かれていないところもあり、そのような軍隊では「上級大将*7上級中将*8或いは「上級少将*9」のような階級が置かれることもある。

准将の階級に補せられた軍人は、軍種に応じ、主に以下のような配置を勤める。

陸軍
副師団長、旅団*10など。(国によっては師団長の職にある)
海軍
戦隊司令官など。
空軍
航空団司令官など。(アメリカ空軍では1992年まで航空師団長の職にあった)

日本における「准将」

明治維新後、わが国が近代軍制を採用して以来、「准将」という階級が公式に置かれたことはない。

旧陸海軍において「准将」の階級は置かれず、また、戦後の自衛隊でも公式には採用されていないが*11、一佐(1)が准将もしくは代将と同等とみなされている。
但し、この中には陸上自衛隊の「副旅団長」や「師団幕僚長」といった、本来なら将官を充てる筈のないポストや航空自衛隊の高射群司令*12等も含まれている。

21世紀に入って以後、国連PKFなどで他国軍隊との共同行動の機会が増えるにつれて「他国軍隊の指揮官との階級均衡*13」が問題となっていることから、「准将」位の導入が検討されているというが、現時点で具体的な動きは見られていない*14
但し、少将相当官とされる将補には、実際にアメリカ軍の少将および准将の扱いを受ける、いわゆる対外的な階級区分が内在しており、旅団長、団長等とそれと同位あるいは準じる職にある将補は外国軍とのと人事バランスに対応するために外国では准将の扱いを受ける。

アメリカ海軍における「准将」

アメリカ海軍では准将位は無く、「Rear admiral lower half(下級少将)」が准将に相当する。*16

これは1862年に恒久的な階級となった代将が将官と見做されず、諸外国の代表者から然るべき尊敬を受けられず、個人の名誉も国の尊厳も損なう結果となったため、1899年に全ての代将を少将に任じ、財政上の事情から、少将名簿の下半分の給与を陸軍准将と同額としたためである。
ただし、この頃は陸軍少将と同格であり、連邦最高裁が「代将の削除と陸軍准将相当の階級の消失」との見解を出したことにより、自分達よりも下位だった士官達に追い越される形になってしまった准将は不満を抱き、果ては海軍との論争に発展した。
結局、1916年に准将をそれまでの佐官扱いから将官扱いとし、同格とされた。

そのような経緯から、海軍では押し並べて少将乃至、下級少将を准将相当官とする場合が多い。


*1 国によってはこの間に代将が挟まることもある。
*2 このため、当時は中佐から大佐を経ずに登用されるものであった。
*3 兵科最先任将官に対する称号。
*4 当時Major-généralは参謀総長を意味するものであったため、使用されていなかった。
*5 http://en.wikipedia.org/wiki/G%C3%A9n%C3%A9ral 1.1.2History 参照。
*6 但し、第一次世界大戦のアメリカ陸軍の階級チャートの記述には、准将扱いしているものもある。(MILITARY AND NAVAL RECOGNITION BOOKより)
*7 旧ドイツ軍、ロシア軍やスペイン海軍等。
*8 フランス海軍やトルコ海軍,一昔前のルーマニア海軍等。
*9 イタリア海軍や、嘗ての警察予備隊(保安隊)、(海上)警備隊等。
*10 特殊な例として、1999年に准将位が制定されたポルトガルでは、それ相応のNATO部隊の指揮官のみに適用されるにとどまり、自国の旅団長は少将職とされている。
*11 保安隊時代までの監補は実質准将相当と考えて差し支え無い。
*12 高射群自体が大隊規模(陸自の高射特科群等も同様だが)であり、陸自の大隊長と同格とされる筈のポストである。
*13 特に旅団規模の地上部隊を派遣しようとする際に問題となりうる。
  陸自の旅団長には、他国陸軍では少将に値する「陸将補」が補せられているが、他国の旅団長は基本的に准将のポストであるため、共同行動時に障害が起きうる。

*14 これには将補を准将位とする案の内局と一佐(1)を准将位とする案の制服組の意見対立が原因と云われている*15
*15 この件に関しては、仮に一佐(1)を准将位とした場合、将官インフレ傾向が一層強まる事になるという観点から内局案のほうが正しいと思われる。
*16 准将を少将、少将を上級少将とする記述も見られる。

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