【縦深】(じゅうしん)

Depth

に移動する、あるいは前後に往復する際のさ。
軍事的な文脈では、策源地から前線までの距離を指す。

攻勢において、縦深が深ければ深いほど兵站輸送や後送の手間が増え、戦闘効率が低下する。
前線は戦っている限り常に突撃を繰り返して前進していく一方、策源地の移設には膨大な手間がかかる。
このため、縦深が制御不能なほど伸長して補給や機動が滞り、攻勢限界点を越えてしまう危険性がある。

一方、縦深が浅すぎる場合、防御的な局面に際して危険を伴う。
不利な局面で撤退を強いられれば縦深は縮み、最終的には策源地まで敵が突撃して敗北に至るからだ。
自軍の縦深が浅いのであれば、当然、敵軍が攻勢に出た際に突破すべき縦深も浅く、敗戦までの猶予も短い。
このため、防御側はできる限り深い縦深を確保する事が望ましい。

ただし、これは純軍事的観点で見た土地運用の原則であり、政治経済の視点では別の問題が生じる。
戦争に際しての縦深として想定される地域は、戦時に管理放棄され、戦災で荒廃するものと予想される。
そのような地域は平時から投資が控えられる可能性が高く、従って他の地域より貧困に陥りやすい。
また、国境付近は思想的浸透の影響も受けやすく、統治する上で社会問題を起こしやすい。

翻って国境地帯に多くの経済的投資を行った場合、開戦時の経済的損害はより甚大になる。
また、国境地帯が発展する事は、すなわち敵国がその地域を占領する事で得る利益の増大でもあり、戦争のリスクは上昇する。
資源産出など重要な利権のある土地は争奪戦の対象になりやすいため、経済上重要な土地の近くに国境線が引かれた事例は多い。

戦災が予想される資源地帯では、最大限の利益を引き出しつつ、戦時退避の困難な不動産をできるだけ確保しない、という経済政策が必要になる。
つまり、国家経済は潤しつつ、現地住民の懐は温かくならない、という植民地的な収奪が行われやすい。

関連:非武装地帯


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