【秋月】(あきづき)

  1. 大日本帝国海軍・大型防空駆逐艦「秋月」。
    同型艦に照月、涼月、初月、新月、若月、霜月、冬月、春月、宵月、夏月、花月の11隻*1があった。

    本艦型は、航空機の発達に伴う艦隊の防空能力を向上させるべく計画された。
    当初は、従来の艦よりも対空・対潜能力を強化し、機動部隊に随伴できる速力・航続力を持つ直衛専用艦とされ、名称もずばり「直衛艦」として計画された。
    しかし、現場からは「艦隊決戦にも使えるように」という要望があり、魚雷発射管が追加されて大型駆逐艦としてデビューした*2

    備砲には、従来よりも砲身長の長い「九八式65口径10サンチ高角砲」が搭載され、強力な対空射撃能力を獲得した。
    しかし、この砲は構造が複雑すぎて量産ができず、本艦型以外には重装甲空母大鳳?」及び軽巡洋艦「大淀」にのみしか搭載できなかった。
    その上、帝国海軍が最後までレーダー連動式の射撃指揮装置を実用化できなかったため、実戦での効率的な対空射撃は望めなかった。

  2. 海上自衛隊・大型護衛艦「あきづき(初代)」(JDS Akizuki DD-161/USS Akizuki DD-961)。
    同型艦に「てるづき」(JDS Teruzuki DD-162/USS Teruzuki DD-962)がある。

    本艦は、アメリカ政府が第二次世界大戦後、海外同盟国への軍事援助の一環として実施していた「域外調達(Off Shore Procurement,OSP)」*3により、合衆国の1957会計年度軍事予算で日本の造船所に発注・建造された。
    そのため、建造中はアメリカ海軍の艦籍番号*4を持っており、竣工と同時に海自へ「供与」の形で引き渡された。

    基準排水量2,000トン以上と、当時の海自艦艇の中ではかなりの大型であり、このスペースを生かして司令部スペースや長官公室などが備えられ、艦隊旗艦として活用された。
    ネームシップ「あきづき」は竣工後、1963年に陸上に移されるまで自衛艦隊の旗艦を務め、姉妹艦の「てるづき」は1985年まで護衛艦隊の旗艦となっていた。

    その後、1980年代半ばには「はつゆき」型に任務を譲る形で艦隊から退き、練習艦や特務艦などに改装された後、1993年に2隻とも除籍・解体された。

  3. 海上自衛隊汎用護衛艦「あきづき(2代)」(JDS Akizuki DD-115)。
    従来の護衛艦を大型化した「仮称5000トン級護衛艦(19DDG)」として、2007年(平成19年)度防衛予算で発注・建造された大型護衛艦。

    2010年10月にネームシップ「あきづき」が進水、2012年の就役を目指して艤装工事が続けられている。
    このほか、姉妹艦3隻が建造・計画中である。

*1 計画では、他に20隻建造予定だった。
*2 サイズ的には大正末期に建造された小型軽巡洋艦「夕張」に匹敵していた。
*3 アメリカが対象国に資金を与えて兵器を作らせ、完成後は対象国軍の装備として供与するもの。
*4 「あきづき」が「DD-961」、「てるづき」は「DD-962」であった。

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