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*&ruby(ななめひこうかんぱん){【斜め飛行甲板】}; [#ad3ecf87] &ruby(アングルドデッキ){angled deck};~ [[航空母艦]]において、[[CTOL]]式[[艦上機]]を着艦させるために用いられる、[[飛行甲板]]に設けられた斜め向きの部分。~ [[飛行甲板]]の艦尾中央から左舷中部にかけ、ヨー角約10度前後で設けられる。~ &ruby(アングルドデッキ){angled deck.};~ ~ 初期の[[航空母艦]]は直甲板を設けており、[[艦上機]]は離艦も着艦も同じヨー角でおこなっていた。~ しかし、これにはいくつかの問題があった。~ [[航空母艦]]の[[飛行甲板]]を、前後に対して斜め向きに設置する事。~ [[飛行甲板]]の艦尾中央から左舷中部にかけ、[[ヨー]]角約10度前後で設けられる。~ ~ まず離艦と着艦を同時におこなうことができなかった。~ 離艦のためにはある程度の滑走距離が必要であったし、逆に着艦時は[[アレスティングワイヤー]]を引っ掛け損ねる場合に備えて艦尾を広く空けておく必要があった。~ また、艦尾部分を空けておいたとしても、着艦に失敗した機体が艦首部分に駐機していた他の機体に衝突する危険もあった。~ それを避けるにはすべての機体を格納しておく必要があったが、運用上現実的ではなかった。((衝突を避けるため、緊急着艦用のナイロンバリケードを通常着艦時にも張るという手法も採られたが、これも危険であった。))~ この問題は、[[朝鮮戦争]]の前後に[[艦上機]]がジェット化されると一気に顕在化した。~ 重くて[[速度]]の速いジェット機では、事故の確率が飛躍的に増大したのである。~ これとは別に前後水平の[[飛行甲板]]も設置され、交差点を形成する。~ ~ この対策としてイギリス海軍のキャンベル大佐が発案したものが、斜め飛行甲板である。~ 着艦のヨー角を船体に対して斜めにそらすことで、着艦に失敗してもそのまま上昇してやり直すこと([[ボルター>ゴーアラウンド]])が可能となった。~ また、着艦時の航跡が定まることで[[艦上機]]の配置がやりやすくなり、着艦させながらの駐機や離艦も容易になった。~ これらの利点は斜め飛行甲板の他、同時期に開発された[[蒸気カタパルト>カタパルト]]や[[ミラーランディングシステム]]との組み合わせによって実現された。~ これらを近代空母における三種の神器と呼ぶ場合がある。~ [[艦載機]]は艦に対して水平の角度で[[発艦>離陸]]し、斜めの角度に[[着艦>着陸]]する。~ [[発艦>離陸]]と[[着艦>着陸]]の経路を分ける事で、[[艦載機]]の渋滞を緩和し、衝突事故を回避する事ができる。 >[[航空母艦]]の甲板上で[[艦載機]]が駐機した状態で、さらに別の[[艦載機]]が着艦しようとする場合がある。~ 斜め飛行甲板があれば、衝突の恐れのない安全な位置に[[艦載機]]を駐機させたまま着艦を行う事ができる。~ そうでない場合、甲板が空になるまで空中で待機するか、衝突の危険性を承知で着艦を強行するしかない。~ [[ジェット>ジェットエンジン]][[艦載機]]が初めて本格運用された[[朝鮮戦争]]の[[戦訓>バトルプルーフ]]から必要とされ、1950年代以降の[[正規空母]]の基本常識となった。~ 一方、この設計思想は甲板の面積拡張・重量増加を招き、[[正規空母]]の巨大化・価格高騰を招く一因となっている。~ ~ イギリスでこれらの発明が成されると、アメリカの[[エセックス]]級や[[ミッドウェイ]]級はこぞって改造され、柔軟な[[艦載機]]運用が成されるようになった。~ 現代において、[[正規空母]]になくてはならないもののひとつとなっている。~ ~ ただし[[CTOL]]を必要としない[[STOVL空母]]や[[ヘリコプター空母]]などには装備されていない。~ また、[[ソ連軍]]の[[キエフ]]級[[航空巡洋艦]]も[[飛行甲板]]が斜めになっているが、これは艦首に武装を施すため[[飛行甲板]]全体が斜めになっているものであり、ここで述べる斜め飛行甲板とは存在意義が異なる。~ また、[[STOVL]]機や[[ヘリコプター]]は着艦時に[[ホバリング]]が可能なため、斜め飛行甲板を必要としない。~ このため、[[V/STOL空母]]や[[ヘリコプター空母]]では斜め飛行甲板を設置しないのが通例。