【師団】(しだん)

Division.
主として陸軍における戦闘部隊の単位のひとつ。
大半の国家が採用する編成であるため、陸軍兵力の概数を指し示す国際単位としても用いられる。
また、近現代の陸上戦において戦略的に扱われる部隊の基本単位でもある*1

つまり、ある師団の司令部と連絡が取れなくなった場合、その師団は全滅したものと仮定される。
隷下の部隊が健在であっても、その部隊が上層部から継続的に指令を受ける事はない。
死守撤退が命じられるか、近隣の師団に組み込まれ、後は続報あるまで忘れ去られる。

指揮官(師団長)はいわゆる「将軍閣下」で、階級的には少将中将程度が妥当とされるが、イスラエルや中東等の様に准将の職とする国もある。

「師団」に必要とされる兵力

師団は、その軍で想定される一般的な軍事作戦を一切の外部支援なく実行できる事を要求される。
即ち、陸上戦闘に不可欠な全種類の部隊を、作戦に必要な規模で指揮下に置かなければならない*2
現代の場合、その条件を満たすために不可欠とされる兵科は概ね以下の通り。

司令部・参謀
機甲部隊
戦車及び偵察車両
歩兵
可能であれば機械化歩兵
砲兵
野戦砲および高射砲
航空機各種
典型的にはヘリコプター
工兵
兵站
通信兵、物資輸送、野戦病院、補給基地とその管理人員

1個師団を構成する人員の規模は、想定される戦場の広さによる。
大陸国家の場合、広大な前線を形成するため10,000人以上を必要とする。
一方、海軍重視の戦略を採る場合や国土が狭い場合、6,000〜9,000人程度の小規模師団も編成される。*3

しかし、大規模になりすぎると戦略レベルでの機動力を失うため、1個師団が15,000人を上回る事は基本的にない。

航空師団/飛行師団

空軍における戦闘部隊の単位の一つで、(陸軍の師団と同様)複数の航空団(飛行団)、或いは飛行連隊から成る戦略級部隊組織である。

国・時代によってその位置づけには細かな差異がある。
以下にその一例を述べる。

アメリカ空軍
かつて、序数航空軍と航空団*4の中間結節として存在していた。
師団長には概ね准将*5が充てられていたが、1990年代の再編で廃止され、これによって規模の大きくなった航空団*6の司令に師団長が横滑りで就任する事となった。
ロシア空軍
3個程度の飛行連隊(3個飛行隊編制)より編成される組織であった。
再編によって現在は連隊と共に廃止*7されているが、此の度、復活する動きがある。
師団長には大佐ないし少将が充てられていた。
イギリス空軍
飛行師団に相当する組織として飛行集団(Group)が置かれている。
司令官には代将ないし少将が充てられている。
1940年代のバトル・オブ・ブリテン以降、直接飛行隊を指揮する様、指揮系統が簡素化されている。
旧日本陸軍航空隊
複数の飛行団をまとめた上級司令部として編成されていた。
師団長は中将職だが、実際には少将もその職にあった。
太平洋戦争末期の本土防空戦に於いては、指揮系統が簡素化され、飛行師団司令部が直接戦隊を指揮するようになった。
航空自衛隊
航空総隊隷下の「航空方面隊」・航空混成団が飛行師団に相当する。

*1 ただし近年では、国家総力戦思想の退潮に伴って師団の概念を廃し、一回り小さい単位である旅団を基本的な戦略単位とする国も増えている。
*2 例外的に、特殊な命令しか受け持たないために極端に特化された師団も存在する。
  山岳地帯での戦闘しか行わない「山岳師団」、空挺部隊の運用のみを想定した「空挺師団」、戦略レベルでの火力支援を任務とする「砲兵師団」など。

*3 嘗てのフランス陸軍(現在は全て旅団に改編されている)や陸上自衛隊などに例が見られる。
*4 当時、団司令は大佐。
*5 一部に少将や大佐が充てられていた。
*6 かつては二群(医療、兵站)、三副長編制であったものが、現在は四群編制(運用、支援、医療、兵站)である。
*7 代わりに「航空基地」という単位が置かれていた。

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