四式重爆撃機のバックアップ(No.17) - 航空軍事用語辞典＋＋

【四式重爆撃機】(よんしきじゅうばくげきき) †

三菱キ67「飛龍」。

三菱航空機が設計、第二次世界大戦末期の1944年に日本陸軍に制式採用された双発の重爆撃機。
「四式重爆」や「ロクナナ」などの略称がある。
連合国軍におけるコードネームは"Peggy(ペギー)"。

海軍の一式陸上攻撃機を開発した三菱の機体のため、それと似た外観であるが、機体はスリム化され空力的な性能は向上している。
そのため、単発機並みの運動性能を誇り、爆弾を搭載していない状態であれば曲技飛行もできると言われた。
また、急降下爆撃用の急降下速度計が装備されていた。
本土からの長距離任務を見据えた航続距離は3,800kmで、それまでの前線部隊支援を主任務としていた陸軍重爆の2,000km前後と比べて長くなった。

1944年に制式化、生産が始まったが、米軍による空襲やこれに対応した工場の疎開などで量産化が進まず、実戦投入は遅れた。

生産の途中から雷撃機仕様に設計変更され、陸軍機ながら魚雷を搭載し台湾沖航空戦や九州沖航空戦、バリクパパン攻防戦など雷撃任務に出撃した*1。
また、航続距離の長さを活かして沖縄戦でも多用された。

陸軍は良好な性能の本機を四式戦闘機（キ84）「疾風」とともに「大東亜決戦機」として最重点生産機種に指定し、川崎航空機や陸軍立川航空廠でも生産された。
また、海軍指揮下の陸軍雷撃隊である「靖国部隊」に所属した雷撃機型が「靖国」という非公式名称で呼ばれた。

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性能諸元 †

形式	四式重爆撃機（キ67）	キ109
種別	爆撃機（兼雷撃機）	特殊防空戦闘機
主任務	戦術爆撃（及び雷撃）	爆撃機迎撃
乗員	6～8名	3～4名
全長	18.7m	17.95m
全幅	22.5m
全高	7.7m	5.8m
主翼面積	65.85㎡
全備重量	13,765kg	10,800kg
発動機	三菱「ハ104?」空冷式複列星型18気筒×2基
出力	1,900馬力×2
速度（最大/巡航）	537km/h / 400km/h	550km/h / -
最大航続距離	3,800km	2,200km
上昇力	14分30秒/6,000m	-
実用上昇高度	9,470m	12,500m
武装	二式20mm機関砲×1門（胴体上部）一式12.7mm機関砲×4挺（機首、胴体左右、尾部）	ホ501 75mm固定砲×1門（機首）ホ103 12.7mm旋回機関砲×1門（尾部）
爆装・雷装	50kg爆弾×15発 250kg爆弾×3発 500kgまたは800kg爆弾×1発 800～1,070kg魚雷×1発のいずれか	-

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各型式 †

一型甲（キ67-Ⅰ甲）：
初期生産型。製造番号160番以降の機体は魚雷搭載可能。
一型乙（キ67-Ⅰ乙）：
後期生産型。尾部銃座を20mm機関砲2門にした。
一型改（キ67-Ⅰ改）：
武装強化型。発動機を排気タービン装備のハ104ルに換装。
試作のみ。
二型（キ67-Ⅱ）：
改良型。
発動機をハ214（公称2,150hp）に換装した。試作のみ。
靖国：
海軍での非公式愛称。
キ69：
爆撃装備を撤去し、機銃を増やした編隊掩護機。計画のみ。
キ97：
胴体を再設計した輸送機型。計画中止。
キ109：
対B-29の邀撃機として開発された特殊防空戦闘機。
副操縦士席を廃し、機体を軽量化、八八式7.5cm野戦高射砲をベースにした「ホ501」75mm対空砲を機首に搭載した。
しかし、高高度性能不足のため当初の目的である爆撃機迎撃任務ではさしたる戦果をあげることが出来なかった。
その後、連合軍の日本本土上陸侵攻に備えて上陸舟艇の迎撃任務に転用されることになったが、そちらにも出番の無いまま終戦を迎えた。
キ112：
全木製化計画機。計画のみ。
雷撃装備搭載型：
増加試作機に雷撃装備を搭載したもの。
雷撃装備は後に標準化された。
電波警戒機実験機：
電波警戒機「タキ1号」を搭載した実験機。
右翼前縁に八木式アンテナを、後部胴体両側面に受波アンテナを設置。
電波高度計実験機（低空用）：
電波高度計「タキ13号」を搭載した実験機。
電波高度計実験機（高々度用）：
電波高度計「タキ11号」を搭載した実験機。
十型爆撃照準具実験機：
墜落したB-29から回収した、米国製のノルデン爆撃照準器を国産化したものを搭載した実験機。
軍用グライダー曳航機型：
火砲を搭載可能な試作大型軍用グライダー「ク-7」を曳航するための改造機。
空中探照機型：
胴体に探照灯を搭載する探知機型。
キ109とペアで運用される。
長距離爆撃改造型：
硫黄島失陥後に、サイパン島やテニアン島のB-29基地を途中無着陸で爆撃することを目的に計画された長距離爆撃機型。実現せず。
翼端を延長し、軽量化のために胴体側面の銃座を廃止した。
特殊遠距離襲撃機：
ガンシップ型。
長距離爆撃改造型と同様の機体に、20mm機関砲×5門を下向きに装備した。
無線誘導弾発射母機：
無線誘導式の空対艦ミサイル「イ号一型甲無線誘導弾?」の搭載装備を持つ発射及び誘導母機改修型。
誘導爆弾発射母機：
撃ちっ放し能力を持つ対艦誘導爆弾「イ号一型丙自動追尾誘導弾?」の発射母機として改修された型。
実験中に終戦を迎えたため実戦投入されなかった。
空中運転機：
試作エンジン（ハ104ルやハ214フ）の試験用機。
ト号機：
800kg爆弾2発を機体に固定した特攻機型。
機首・背部銃座の風防を金属製カバーに置き換え（後者には旋回機関砲のダミーとして黒色の棒を装着）、乗員数を2～3名に減らした。
また、機首から長く付きだした棒状の着発式信管が装備されたが、これは空力的に悪影響があったという。
桜弾機（キ167）：
直径1.6m、重さ2.9tの対艦用大型爆弾（モンロー効果を意図した成形炸薬弾）「桜弾」を搭載する型。
機体内部に収容できないため機体上部が膨らんだ形状に改造されたほか、重量軽減が図られ、防御火器を撤去、乗員も4人に減らされている。

*1 海軍の天山や一式陸攻は損失が大きく、銀河も少数の配備であったため。

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