【国連軍】(こくれんぐん)

国際連合(国連)が組織する軍隊
常設の組織はなく、必要に応じて加盟各国から部隊を拠出して組織される。
その形態によって、以下に述べる二種類に大別される。

狭義の「国連軍」

国連憲章の規定により、加盟国への侵略行為に対する軍事的措置を行うために組織するもの。
安全保障理事会(安保理)の決議によって、(あらかじめ、安全保障理事会と特別協定を結んでいる)加盟国から兵力を拠出して組織され、国連の統制下にて任務を遂行する*1
この任務遂行にあたり、安保理は兵力使用計画の作成及び部隊の指揮運用に関して軍事参謀委員会からの援助・助言を受けることになっている。

しかし、国連発足以来現在まで「国連への兵力提供協定」を結んでいる加盟国が無いため、この形態の国連軍が組織されたことはない。

朝鮮戦争の際の「国連軍」は、国連の統制下にはなかった*2ため厳密にはこれに含まれない。
(現在で言えば「多国籍軍」に近しいといえる)

国連軍後方司令部

上記の「朝鮮戦争において組織された国連軍」の一組織として日本に設置されている機関。
1953年7月の休戦を受けて1954年に締結された「日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定」(国連軍地位協定)を根拠として、在日米軍横田基地に設置されている。
現在は4名の常駐スタッフ、及び各国大使館在勤の駐在武官を含めた23名の連絡将校団が勤務しており、年3〜4回程度の頻度で情報交換のための非公式会合を行っている。

なお、本司令部は朝鮮半島から国連軍が撤退するまでの臨時組織であり、朝鮮半島から国連軍が撤退した後、90日以内に日本から撤退しなければならないと定められている。

平和維持活動の一環としての「国連軍」

国連が、地域紛争の平和的解決を図るために実施する「平和維持活動」の軍事部門として組織するもの。
一般には「平和維持軍(PKF)」や「停戦監視団」などと呼ばれ、紛争地にて以下のような活動に従事する。

  • 紛争当事者相互間の調停
  • 停戦監視
  • 武装解除及び接収した兵器の保管・廃棄など
  • 捕虜交換
  • 移動統制
  • 密輸阻止
  • 非武装地帯の設置
  • 避難民に対する救援活動(難民キャンプの設営や給食・給水・医療支援など)
  • 現地で活動する国連スタッフに対する兵站

こちらは上記の「狭義の国連軍」とは違い、総会の決議によって組織され、国連の統制下にて、必要最小限の武器使用権限のみを与えられて個々の目的を達成する。

参加する各国部隊の将兵は、母国軍の軍服(戦闘服)に、水色のベレー帽*3やヘルメットをかぶることから「ブルーベレー」「ブルーヘルメット」と通称される。
また、装甲車・トラックなどの車両やヘリコプターは、国連所属であることを明記するため車体(機体)を白色に塗装され、「UN」(United Nationsの略)と大書されている。

わが国のPKF活動

わが国は1956年に国連に加盟して以来、憲法との関連から国連の行う軍事的活動に長らく参加してこなかったが、1991年、湾岸戦争の戦後処理の一環として行われたペルシャ湾への掃海部隊派遣を契機に制定された国際平和協力法に基づき、1992年、「国連第2次アンゴラ監視団(UNAVEM 2)」に初参加(この時は3名の自衛官を選挙監視要員として派遣した)。
そして、同年に参加した「国連カンボジア暫定機構(UNTAC)」には、陸海空3自衛隊がそれぞれ部隊を拠出*4
以後、さまざまな地域で活動が行われていった。


2013年7月現在、自衛隊が参加しているPKF活動は次の通りである。
(特に注記のない限り、参加部隊はいずれも陸上自衛隊所属)

任務派遣期限派遣部隊及び人数日本以外の参加国
国連南スーダン派遣団
(UNMISS)
2013/10/31第4次施設隊
(約330名・西部方面隊基幹)
及び現地支援調整所要員
(20名・統合幕僚監部基幹)
オーストラリア、バングラデシュ、ベニン、ブラジル、ブルキナ・ファソ、
カンボディア、カナダ、中国、デンマーク、エクアドル、
エルサルバドル、フィジー、ドイツ、ギリシャ、グアテマラ、
ギニア、インド、ヨルダン、ケニア、キルギスタン、
マレーシア、マリ、モンゴル、ナミビア、ネパール、
ニュージーランド、ナイジェリア、ノルウェー、パラグアイ、ペルー、
フィリピン、ポーランド、韓国、ルーマニア、ロシア、
ルワンダ、シエラレオネ、スリランカ、スウェーデン、スイス、
タンザニア、ウガンダ、ウクライナ、英国、イエメン、ザンビア

*1 フィクション作品で描かれる「国連軍」は、この形態のものとして描かれることが多い。
*2 安全保障理事会において、常任理事国であるソ連が拒否権を発動したものの、アメリカがこれを無視して強行的に編成、当時日本に拠点を置いていたGHQが実質支配していた。
*3 国連の紋章である「オリーブの冠を巻いた地球儀」のバッジがつけられる。
*4 この他に、警視庁・道府県警察から「文民警察官」として派遣された警察官や一般公務員、ボランティアの民間人も参加した。
  なお、このときには警察官1名とボランティア1名が犠牲となった。


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