【高速炉】(こうそくろ)

「高速中性子炉」の略。
原子炉核分裂炉)の一種で、減速材を用いず、高速中性子のままで核分裂反応をさせるもの。
高速中性子は確率的に核燃料の原子核に衝突しづらいため臨界を得づらいが、核燃料の利用効率がよく、放射性廃棄物も軽水炉等に比べて少ないとされている。
核燃料を密集させる必要があるため、冷却材としては溶融金属が用いられるが、将来の展望として超臨界水等の使用も研究されている。

高速炉の中で特にウランからプルトニウムへの転換率を高めたものを高速増殖炉と呼ぶが失敗も多く、転換率にこだわらない高速炉の商用実用化に向けた研究もされている。

潜水艦への応用

ソ連軍ではK-27?アルファ?級といった攻撃潜水艦に、鉛-ビスマス冷却材を使用した高速炉を採用していた。
特にアルファ級は小さな炉で強大な出力を誇り、「追尾してくる魚雷を振り切る」といわれるほど驚異的な速度性能を発揮した。
しかし鉛-ビスマス合金は比重が重いうえ、放射能を帯びやすく厳重な放射線対策が必要になる。さらには循環パイプに用いられるステンレスを腐食させやすいなど、厄介な性質もある。
このため循環路を特別頑丈に造る必要があり、保守性も劣悪であった。

また溶融金属に共通する問題として、通常の金属に比べれば融点が低いものの、常温では凝結してしまうため、いったん炉を停止させてしまうと循環路全体に大きなダメージを与えてしまうという難点もあった。この問題のためK-27は炉心停止後の崩壊熱でメルトダウンの危機を起こしかけたと言う。
アルファ級の場合は、後に循環路を外部ボイラーの熱で加熱することで炉心を停止させることができるようになった。
ただしこの方法は、炉心停止中は常に母港から熱供給を受け続ける必要があり不経済であった。
また航海中に炉心停止した場合、再始動できないことに変わりない。

こういった問題から、アメリカの中速中性子炉と同様に、潜水艦への利用は途絶えている。
ただし、この経験を基にロシアでは高速増殖炉の研究が進められている。


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