【高射砲】(こうしゃほう)

航空機などの飛翔体を撃墜するための火砲
旧軍では「高角砲」と呼んでいた。

高速の航空機に直撃させるのは難しいため、敵機の近くで砲弾を爆発させ、その破片で攻撃する。
初期のものは時限信管を採用しており、命中精度はお世辞にも良いとは言えないものであった。
あらかじめ敵機の針路、高度速度などを計算して爆発の機会を計る必要があったためである。

のちに近接信管の登場で精度が格段に向上したが、それでも撃墜戦果の主体とは言い難かった。

実際、第二次世界大戦から朝鮮戦争にかけての高射機関砲はしばしば「挽肉製造器」と揶揄された。
航空機撃墜する機会は皆無であった一方、敵歩兵を撃退する機会には事欠かなかったためである。

近接戦闘力に欠ける自走榴弾砲などと異なり、高射砲を相手取っての白兵戦はほぼ死を意味する。
間接砲撃とは異なり、機関砲の掃射は小銃の射程圏内では最大限の破壊力と命中精度を発揮する。
そして、口径20mm以上の砲で直射された歩兵の末路は「挽肉」と呼ぶに相応しい酸鼻なものであった*1

近年では爆薬に頼らず徹甲弾を直撃させるほど優れた火器管制装置を備えるものも出現した。
しかし、現在では地対空ミサイルなどの発達によって重要度が下がってきている。

関連:機関砲 FLAK AAA


*1 ハーグ陸戦条約に定められた「過度の傷害・無用な苦痛を与える兵器」に該当するものとみられ、「他に攻撃手段を持っている場合は、直接人間に照準・発砲してはならない」ことにはなっていたが。

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