*&ruby(こうふく){【降伏】}; [#ued772fa]
Surrender.~
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[[戦闘員]]、およびその集団である[[部隊]]が[[紛争]]当事者としての立場を放棄する事。~
または、国家そのものが国家主権の一部または全部を放棄し、国民を保護する義務を放棄する事。~
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法律上の契約の一種であり、常に敵国の同意を必要とする点で[[敵前逃亡]]と異なる。~
このため、奇襲などを目的とした虚偽の降伏は戦争犯罪とみなされる。~
また、虚偽の降伏を行った国家は外交上の信用を失い、再び降伏を試みても拒絶されるリスクを負う。~
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現代では[[ジュネーブ条約]]・[[ハーグ陸戦条約]]などの戦時国際法で[[戦闘員]]に降伏する権利が保証されている。~

>従って、[[民兵]]・[[テロリスト]]・[[傭兵]]([[民間軍事会社]]に勤務し、会社の業務として紛争地帯で戦闘行為に従事する従業員を含む)などは降伏を申し出ても認められない場合がある。~
それらは[[非合法戦闘員]]であり、そもそも[[紛争]]に関与する権利を認められないからである。~
そういう人物であっても投降する事は可能だが、それによって何らかの免責が保証される事はない。~
[[文民統制]]による保護を受けられないため、現地の法に従って殺人・器物損壊などの罪を問われる((実際の所、戦場で投降した[[テロリスト]]の運命は「理不尽な釈放」か「[[略式の処刑]]」かの極端な二択になる事が多い。&br;  こと[[紛争]]地帯において、裁判と処罰の精度が厳格に遵守されている事はまずないからだ。))。

一般的には敵軍に身を委ねて捕虜となる事を意味するが、定義上は虜囚を必須とするわけではない。~
とはいえ、武装した人間が銃を構えたまま降伏する事は常識的に考えて認められない。~
従って、降伏する人間は武装していてはならないし、いつでも武装できるような状態であってもならない。~
よって普通、降伏する際は敵軍に身柄を預け、再武装する事が不可能な環境に隔離される必要がある。~
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関連:[[無防備都市宣言]] [[玉砕]]

**降伏の実態 [#h9824fde]
一般に、戦闘継続と[[撤退]]のいずれも不可能と判断した指揮官は降伏を決断すべきだとされる。~
何をもってそう判断するかは個々の事例によるが、原則としては以下のような場合に降伏すべきとされる。

-交通路を封鎖される、[[艦艇]]が損傷するなどの理由で[[機動]]・[[撤退]]が事実上不可能になった。
-[[燃料]]・弾薬・食料などの[[兵站]]物資が尽きた。
-死傷者による欠員によって[[部隊]]としての組織的活動に支障をきたした((一般に、兵員数の1/3以上が死傷すると組織的な行動が不可能になるとされる。))。

降伏の意図を示すため、白旗・信号旗・ジェスチャー・口頭などで''ハッキリと''意志を伝達する。~
降伏を受けた側は、付帯条件などの要求を行った上で武装解除などの確認を行う。~
この時、「虚偽の降伏」であると判断された場合は戦闘を再開して良いものとされる((つまり、逃亡や抵抗を試みる者は即時に射殺して良い、とされる。&br;  実際に射殺を命じた指揮官を事後の[[軍法会議]]がどう処理するかはまた別の問題だが。))。~
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問題なく降伏を承認された者は敵国側に[[後送]]され、捕虜収容所などの[[紛争]]に関与できない環境に隔離される。~
この隔離は基本的に[[紛争]]の終結まで続くが、外交交渉の一環として戦中に返還される事もある。~
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降伏した人間に対し、正当な理由なく危害を加えるのは戦争犯罪である。~
よって、[[師団]]単位などの大規模な降伏が虐殺などの悲劇に繋がる事はほとんどない。~
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しかし、小規模な[[部隊]]、特に数人以下での降伏では惨劇が生じやすいのも事実である。~
降伏のために姿を見せた者が[[誤って射殺>誤射]]され、そのまま皆殺しに至る、などという事例は珍しくない。~
また、[[ヒューミント]]における拷問や、捕虜収容所での無意味な虐待などといった事態もしばしば発生する。~
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そうした悲劇を防ぐのは[[憲兵]]の職務であるが、実際の[[紛争]]では完全な抑止はできていない。~
特に最前線の強ストレス環境下や、半ば密室と化した捕虜収容所では監視の目が行き届かない事が多い。

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