【航法】(こうほう)

Navigation.
乗り物(特に航空機や船舶)の乗員が、自分の現在位置(緯度・経度・高度)及び目的地との位置関係を把握し、正しく目的地に向かわせるための技術。

関連:JAL公式サイト内「航空実用用語辞典 航法」(http://www.jal.co.jp/jiten/dict/p295.html

航法の発達史(概略)

本項では、主に航海における発達史を述べていく。

古代〜中世

人類が「船」という乗り物を考案し、海に出るようになった古代〜中世の頃の航海は、自らの現在位置を正確に把握する術に欠けていたこともあり、沿岸の陸地を目視しながら進む「沿岸航法」または「近海航法」と呼ばれる方法に頼っていた。

この方法では、海岸線の地形が非常に重要であった。
また、沿岸部では常に座礁する危険があったため、測深用のロープによって手探りで水深を測りつつ進む必要もあった。

大航海時代

15世紀頃、ヨーロッパでは「大航海時代」と呼ばれる時代を迎えた。
この時期までに、アジアやアラビアとの交易などでもたらされた「砂時計」「羅針盤」「天文観測器(アストロラーベや四分儀)」「ハンドロク(ひも付き木片)」といった道具が実用化され、これらを活用した「推測航法」が開発された。
これは(あらかじめ判明している位置を基準として)自船の方位を羅針盤、緯度を天文観測器、船速を繰り出されたログの長さと砂時計の経過時間によって測定し、そこからさらに航行距離を測るものである。
また、海図が発達し、それらにより沿岸から離れることが出来るようになった。

しかしながら、砂時計で計れる時間は正確では無かった*1ため、緯度を正確に知ることができず、難破・逃亡は当たり前の時代であった。

近代・現代

18世紀頃になると、航法の器具は更なる進化を遂げた。
天文観測器は「八・六分儀」に、時計はより精密な「クロノメータ」になり、太陽や星を観測して自船との相対的な位置関係を知る「天測航法」により、ほぼ正確(誤差1海里程度)に緯度・経度を知ることが出来るようになった。

そして現代では、これら確立された地文(海図・地形との照合)・推測・天測航法だけではなく、電子技術の発達により、下記のような地形に頼らない航法も可能となった。

慣性航法
加速度・方位を積分することにより、初期位置からの移動距離を知ることが出来る。
装置や計算の精度による誤差が蓄積されるため、他の方法(地文・天測やGPS)と併用される。
無線航法(TACAN・ロラン・オメガなど)
地上の無線施設から発信される電波を利用して自身の現在位置を知る方法の総称。
衛星航法(NASS・GPSなど)
(原子時計など)超高精度の時計*2を搭載する人工衛星から送信された時間信号により、自身の三次元位置を知るもの。
衛星が見えない場合もあるため、他の方法と併用される。

*1 砂の落下する速度は波によって容易に左右される上、船上での高ストレス環境に耐えられずサボタージュする船員にひっくり返される危険もあった。
*2 GPS衛星に搭載の原子時計は、誤差が数万年に±1秒程度だという。

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