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*&ruby(こうほう){【航法】}; [#tc69dcb3]
Navigation.~
乗り物(特に[[航空機]]や船舶)が、自分の現在位置を正しく感知し、正しく目的地に向かうための方法のこと。~
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航法は古くから航海において重要な位置を占めていた。~
初期の頃は、沿岸を目視しながら進む「沿岸航法」または「近海航法」と呼ばれる方法に頼っていた。~
この方法では、海岸線の地形が非常に重要であった。~
また、沿岸では常に座礁する危険があったため、測深用のロープによって手探りで水深を測りつつ進む必要もあった。~
自分の現在位置を把握し、目的地までの移動経路を確認する技術。~
陸・海・空を問わず、旅をし、[[機動]]・[[展開]]する際には必要不可欠である。~
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この技術が大きく発展したのは15世紀頃の「大航海時代」と呼ばれる時期である。~
この時期には、道具として「砂時計」「羅針盤」「天文観測器(アストロラーベや四分儀)」「ハンドロク(ひも付き木片)」が登場し、これらを活用する「推測航法」が開発された。~
これは(あらかじめ判明している位置を基準として)自船の方位を羅針盤、緯度を天文観測器、船速を繰り出されたログの長さと砂時計の時間によって測定し、そこからさらに航行距離を測るものである。~
また、海図が発達し、それらにより沿岸から離れることが出来るようになった。~
基本的には地図を確認する技術だが、地形などを観察して推定する技術も含まれる。~
例えば現代でも、自動車の運転免許を取得する際には「地図を読む」航法の習得がほぼ必須とされる。

**航法の発達史(概略) [#a13661e1]

***文明以前 [#c9de8d6b]
最も初歩的な航法は、陸上で目印となる地物を設定し、その形状と位置関係を覚えておく事である。~
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しかしながら、砂時計で計れる時間は正確では無かった((砂の落下する速度は波によって容易に左右される上、船上での高ストレス環境に耐えられずサボタージュする船員にひっくり返される危険もあった。))ため、緯度を正確に知ることができず、難破・逃亡は当たり前の時代であった。~
この状況は18世紀後半まで続く。~
人類はその黎明期において、見晴らしの良いサバナ気候の草原で狩猟や採集を営んでいた。~
多くても数十名程度の集落があるのみであった時代、振り返れば数km先に集落が見えていた。~
しかしそれでも、狩人はしばしば地平線の向こう側まで獲物を追っていき、そしてしばしば帰ってこなかった。~
今まで歩いた地形を記憶し、家族の待つ集落との位置関係を把握する能力は狩りに必須であった。~

>この資質は遺伝するらしく、現代でも航法に類する技術の習熟速度は男性の方が早い傾向にあると言われる。~
俗に「話を聞かない男、地図の読めない女」などと引き合いに出される事もある。

***古代〜中世 [#v84cc68f]
人類の文明は、地図の作成と航法の共有から始まる。~
言語・図形による意思疎通が始まった最初期、まず伝えるべき情報は航法上の地形図であった。~
それは集団で狩りをするため、あるいは農耕を始めるため、さらには交易を始めるために必須の情報である。~
地図と航法なくして文明は成り立たず、地図と航法を発明した事で人は文明を築く事が可能になった。~
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そして18世紀頃になると「八・六分儀」や「航海用精密時計(クロノメータ)」が登場し、天測航法によりほぼ正確(誤差1[[海里]]程度)に緯度・経度を知ることが出来るようになった。~
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さらに最近では、これら確立された地文(海図・地形との照合)・推測・天測航法だけではなく、電子技術の発達により、下記のような地形に頼らない航法も可能となった。~
 
とはいえ、言語的に共有できる情報には限りがあり、特に現在位置の把握は当人の記憶と直観に頼る他なかった。~
特に船による航海においては、航海士が何度も往復してよく通る沿岸の地形を記憶しておくしかなかった。~

***大航海時代 [#w9f8ee36]
数学・工学・天文学の発達に伴い、航法にもそれらの学術的知見が応用されるようになった。~
砂時計による時間計測、糸による測距、羅針盤による絶対方位の確定、天文観測と暦による現在位置の推定などである。~
こうした知識はルネサンス期のヨーロッパで集積・再整理され、世界が大航海時代を迎える端緒となった。~
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この時期の航法は、上記の数学的な仮定に基づく「推測航法」であった。~
あらかじめ判明している位置を基準とし、羅針盤で方位を、天文観測で緯度を、船速を糸で測定する。~
それら数学的な情報によって現在位置を推定し、地図・海図を広げていく事により、人類は交易圏を速やかに広げていった。~
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しかし、人間が計測する情報は不正確であったり、サボタージュなどで意図的に狂わされる事もしばしばであった。~
古代に比べれば遙かに安全であったとは言え、遭難の危険性は無視できない程度に高く、航海は常に命がけの冒険であった。~

***近代・現代 [#e56fb294]
航法器具は時代を経ると共に洗練され、18世紀ごろには誤差1[[海里]]程度の精度で緯度・経度を推定できるようになった。~
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そして現代ではほぼ全世界の地文計測が完了し、電子技術の発達による新たな航法も生み出されていった。~

:[[慣性航法>慣性航法装置]]|加速度・方位を積分することにより、初期位置からの移動距離を知ることが出来る。&br;装置や計算の精度による誤差が蓄積されるため、他の方法(地文・天測や[[GPS>全地球測位装置]])と併用される。~
:無線航法([[TACAN]]・ロラン・オメガなど)|地上の無線施設からの電波を利用して自機の現在位置を知る方法の総称。~
:衛星航法(NASS・[[GPS>全地球測位装置]]など)|(原子時計など)超高精度の時計(([[GPS衛星>ナブスター]]に搭載の原子時計は、誤差が数万年に±1秒程度だという。))を搭載する[[人工衛星]]から送信された時間信号により、自身の三次元位置を知るもの。&br;衛星が見えない場合もあるため、他の方法と併用される。~
:無線航法([[VOR]]/[[DME]]・[[TACAN]]・[[ロラン>LORAN]]・オメガなど)|地上の無線施設から発信される[[電波>電磁波]]を利用して自身の現在位置を知る方法の総称。~
:衛星航法(NASS・[[GPS>全地球測位装置]]など)|(原子時計など)超高精度の時計(([[GPS衛星>ナブスター]]に搭載の原子時計は、誤差が数万年に±1秒程度だという。))を搭載する[[人工衛星]]から送信された時間信号と自身の時計との比較により、自身の三次元位置を知るもの。&br;衛星が見えない場合もあるため、他の方法と併用される。~

 
関連:[[JAL>日本航空]]公式サイト内「航空実用用語辞典 航法」(http://www.jal.co.jp/jiten/dict/p295.html)


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