【航法】(こうほう)

Navigation.
乗り物(特に航空機や船舶)が、自分の現在位置を正しく感知し、正しく目的地に向かうための方法のこと。

航法は古くから航海において重要な位置を占めていた。
初期の頃は、沿岸を目視しながら進む「沿岸航法」または「近海航法」と呼ばれる方法に頼っていた。
この方法では、海岸線の地形が非常に重要であった。
また、沿岸では常に座礁する危険があったため、測深用のロープによって手探りで水深を測りつつ進む必要もあった。

この技術が大きく発展したのは15世紀頃の「大航海時代」と呼ばれる時期である。
この時期には、道具として「砂時計」「羅針盤」「天文観測器(アストロラーベや四分儀)」「ハンドロク(ひも付き木片)」が登場し、これらを活用する「推測航法」が開発された。
これは(あらかじめ判明している位置を基準として)自船の方位を羅針盤、緯度を天文観測器、船速を繰り出されたログの長さと砂時計の時間によって測定し、そこからさらに航行距離を測るものである。
また、海図が発達し、それらにより沿岸から離れることが出来るようになった。

しかしながら、砂時計で計れる時間は正確では無かった*1ため、緯度を正確に知ることができず、難破・逃亡は当たり前の時代であった。
この状況は18世紀後半まで続く。

そして18世紀頃になると「八・六分儀」や「航海用精密時計(クロノメータ)」が登場し、天測航法によりほぼ正確(誤差1海里程度)に緯度・経度を知ることが出来るようになった。

さらに最近では、これら確立された地文(海図・地形との照合)・推測・天測航法だけではなく、電子技術の発達により、下記のような地形に頼らない航法も可能となった。

慣性航法
加速度・方位を積分することにより、初期位置からの移動距離を知ることが出来る。
装置や計算の精度による誤差が蓄積されるため、他の方法(地文・天測やGPS)と併用される。
無線航法(TACAN・ロラン・オメガなど)
地上の無線施設からの電波を利用して自機の現在位置を知る方法の総称。
衛星航法(NASS・GPSなど)
(原子時計など)超高精度の時計*2を搭載する人工衛星から送信された時間信号により、自身の三次元位置を知るもの。
衛星が見えない場合もあるため、他の方法と併用される。

関連:JAL公式サイト内「航空実用用語辞典 航法」(http://www.jal.co.jp/jiten/dict/p295.html


*1 砂の落下する速度は波によって容易に左右される上、船上での高ストレス環境に耐えられずサボタージュする船員にひっくり返される危険もあった。
*2 GPS衛星に搭載の原子時計は、誤差が数万年に±1秒程度だという。

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