【航空郵便】(こうくうゆうびん)

Air Mail.

手紙などの郵便物を航空機で輸送する事。
日本語の公文書で厳密に区別する場合、国際郵便は「航空扱い」、国内郵便では「航空機積載」と称する。
日本語で"エアメール(Air Mail)"という場合、単に海外とやり取りする手紙を指す事が多い。

インフラの隔絶した僻地への配達を別とすれば、基本的に定期航空路線の旅客機貨物機に便乗して輸送される。
定期航路の設定されない深夜帯には航空郵便専用のフライトが組まれる場合もある*1
ペイロードの都合上、直行便を利用できず第三国経由で輸送される場合も多い。
しかし、それでも長距離の貨物輸送としては産業目的で現実的に運用できる最速の輸送手段である。

一般に、日本から海を越えて手紙を配達するには、航空便では3〜6日ほどかかる。
これに対して、船便では配達までに1ヶ月以上かかる事もあり得る。

航空機は短距離輸送に著しく不向きであるため、基本的には国外など長距離輸送が必要な場合に手配される。

日本の内国郵便における航空扱い

日本国内の交通事情において、航空輸送は必ずしも最速の輸送手段ではない。
このため、現代の国内向け郵便事業において、明示的に航空輸送(航空郵便)を利用する、とするサービス形態は存在しない。

旧郵政省ではかつて「(国内向け)航空郵便」を提供していたが、前述の理由から1953年に「速達郵便」と統合された。

とはいえ、速達郵便で求められる「最も速やかで遅滞ない運送」は、多くの場合に空輸を意味する。
また、通常の郵便物も、事業者の手配した機体に空きがあれば空輸される事がある。
ただし、ペイロードに限界がある場合は「速達郵便」「時間配達指定郵便*2」が優先される。
載せきれなかった郵便物は、陸上輸送の方が早ければ載せ替えられ、でなければ次の便まで空港に留め置かれる。

一時に大量の郵便物が発送される企業向けの契約*3では、遅配の許容を条件として料金割引が行われる場合がある。
この場合は所要時間よりも運送コストが優先され、単価の高い空輸は避けられる。

また、航空会社が取り扱いを拒否するため空輸できない貨物も存在する。
航空法規では安全運行に障害を及ぼす積載禁止品*4が定められているし、荷主が具体的な品目を明かさない貨物も安全上の理由から積載を拒否される。

いずれにせよ、国内郵便が空輸されるか否かは事業者側が状況に応じて選ぶもので、顧客は特にこれに関知しない。

国際郵便

国際郵便においては、航空郵便自体が独立したサービスメニューとして扱われている。
船便(Surface)とははっきりと区別され、料金も完全に別体系である。
発送の際、差出人が表に「AIR MAIL」などと標記するか、エアメール封筒*5を使うと航空扱いとなる。

万国郵便連合(UPU)の公用語はフランス語であるため、フランス語で「Par Avion」と書き添えればより確実。

関連する商品として、次のようなものがある。

国際スピード郵便(EMS)
一般の航空郵便に優先して輸送され、2日〜4日程度であて先の国に配達されるサービス。
誤配送による遅延を防ぐため、バーコードラベルで発送から到着までを管理される。
主な輸送対象はビジネス上の重要書類*6や書誌の最新刊など。現金・有価証券はサービス対象外。
SAL便
Surface Air Liftの略。「エコノミー航空便」とも。
発信国及び相手国内では船便と同様に扱われ、国境を越える時にのみ、航空機の空きスペースを利用して空輸する。
(郵便局内での処理が後回しになるため)一般の航空郵便に比べて2倍程度の時間がかかるが、その分、料金が安く抑えられている。
ある程度時間のかかってもよい荷物や、在外邦人の定期購読雑誌の郵送などで利用されることが多い。
航空書簡・国際はがき
内国郵便の郵便書簡・はがきに相当するもの。
購入して宛名と通信文を書けば、全世界均一料金で、航空扱いとして万国郵便連合加盟国宛てに送付できる。
なお、航空書簡には25gまでの紙片などを同封することができるが、これを超過した場合は追加料金が必要となる。
航空切手
航空扱いで郵便物を差し出すときに使用する切手。
飛行機飛行船、鳥などをモチーフにした図案が多い。
料金体系の関係上、一般的な切手よりも高額であることが多い。
日本では旧郵政省時代の1953年に航空郵便が速達郵便制度と統合されて以後、発行されていない。
国際返信切手券
国際郵便で返信を依頼するために郵便物に添付する金券。
受取人はこの金券を現地の切手・航空書簡・国際はがきなどに引き換えて返信を行う*7
このような煩雑な手続きが必要なのは、各国の返信用切手に通貨としての国際的な信用が存在しないため。

*1 日本では1970年以降、深夜・早朝の着陸が規制されたため行われていない。
*2 かつては「翌朝10時郵便(モーニング10)」と呼ばれていた。
*3 例としては通信販売のカタログやクレジットカードの料金明細、定期刊行物などがある。
*4 火薬類や高圧ガス、引火性液体、毒劇物、放射性物質など。
  これらの物質を郵送しようとした場合は差出人へ送り返される他、郵便法違反などの罪により処罰されることもある。

*5 赤と青の目立つ縁取りのあるもの。
*6 かつて日本では「国際ビジネス郵便」と呼ばれていた。
*7 一枚当たりの金額は、その国から航空扱いで書状を送る際の最低料金相当とされている(そのため、返信に重量のあることが想定される場合は複数枚送る必要がある)。
  なお、日本で引き換えた場合は一枚当たり130円分の切手、航空書簡もしくは国際はがきを受け取れる。


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