*&ruby(こうくうぼかん){【航空母艦】}; [#t39692da]
Aircraft Carrier.~
~
複数の[[航空機]]([[艦上機]])を搭載し、これの発着及び整備を行う能力を持つ[[艦艇]]。空母。~
原義を直訳すれば「航空機運搬艦」という程度の意味で、「母」と称するのは日本語特有の詩的表現。~
~
[[固定翼機]]を扱う場合は甲板に[[滑走路]]([[飛行甲板]])を備える。~
しかし、飛行甲板は船体のサイズとの兼ね合いもあって、[[離艦>離陸]]及び[[着艦>着陸]]時の滑走に十分な長さを確保できない事も多い。~
このため、離着艦を行う際は風を利用するために艦ごと向きを変える事が多い。~
(機体に[[失速]]しないだけの速度・[[揚力]]を与えて)離艦を補助するために[[カタパルト]]・[[スキージャンプ]]などの構造を備える艦も多い。~
また、着艦時には[[アレスティングギア]]を用いて強制的な急停止((これを指して「[[制御された墜落]]」とも呼ぶ。))が行われるのが普通。~
~
黎明期には艦隊護衛や、少数を多方面で運用し[[ゲリラ]]的な攻撃を行う艦として運用された。~
しかし[[真珠湾攻撃]]によって[[航空主兵主義]]が立証され、[[艦隊決戦]]の主力に躍り出た。

関連:[[CIWS]] [[ジェットブラストディフレクター]] [[イージス艦]] [[テイルフッククラブ]] [[強襲揚陸艦]]

&ref(cv63.jpg);~
"CV-63 Kitty Hawk" 米海軍最後の通常動力型正規空母 満載排水量:82000t 搭載機72+6機 米第7艦隊所属(横須賀) 2009年1月31日退役。~

**航空母艦の大型化とそれに伴うデメリット [#g0c1502a]
ここ半世紀、[[艦上機]]を含めてあらゆる[[軍用機]]は大型化する傾向にある。~
このため、航空母艦は軒並み大型化するか、搭載機数を削減するかの選択を迫られている。~
~
しかしどちらにせよ、航空母艦、特に[[正規空母]]は常軌を逸する規模まで巨大化の一途を辿っている~
往時の[[戦艦]]と同様、空母は国威の象徴であり、その存在は時として国際問題になるほど威圧的である((そのこともあってか、アメリカ合衆国大統領は、海外で大規模な紛争・武力衝突・自然災害などが発生すると「一番近くにいる空母は?」と尋ねるという。))。

>例えば、[[アメリカ海軍]]の[[ニミッツ]]級[[正規空母]]は、[[満載排水量]]10万トンを超える世界最大の軍艦である。~
この規模の[[スーパーキャリアー]]は一隻で[[攻勢対航空作戦]]を実施可能で、中堅レベル以下の全ての国家の[[空軍]]を単独で撃滅し得る戦力を持つ。

ゆえに、空母は極めて高額な兵器である。~
搭載機も空母そのものに負けず劣らず高額で、勤務する[[エビエーター]]も精鋭が集められる。~
最新軍事技術の塊は必然的に機密の塊でもあり、[[防諜>スパイ]]にかかる経済的・政治的コストも甚大である。~
~
結果、大型空母を失った場合に生じる損害は、[[列強]]各国をもってしても耐え難いほど増大する事となった。~
そのため、戦闘で失われる危険のある海域にはまず派遣されず、余程の事がない限り出動しない。~
つまり、出動したと言う事はそれだけ深刻な事態と言える。~
~
また、それほど高価な艦艇であるため、損耗を前提とした[[作戦]]には投入できない。~
実際の運用に際しては、常に[[イージス艦]]などの[[護衛艦]]・[[攻撃潜水艦]]・[[哨戒機]]で周りを固め、海上・海中・空中に対する厳重な警戒網を敷く必要がある((空母自身に搭載できる兵装は自衛用の[[CIWS]]([[機関砲]]や短射程[[艦対空ミサイル]])・[[対潜魚雷]]程度で、しかも申し訳程度にしか搭載できないことが普通。))。~
さらに、港で整備・補修に入る間の補充も当然必要となるので、空母は最低3隻以上保有しなければ[[戦略]]的に運用できない。~
~
ここまで甚大な負担に耐えられる国家は、世界を見渡しても非常に限られており、実質的にはアメリカ合衆国の一極独占状態である。~
正規空母を保有・運用できないが、それなりの海上航空戦力を持つことを望む他の国では、[[軽空母]]や[[STOVL空母]]・[[ヘリコプター空母]]を建造・運用することが多い。~
また、近年では[[揚陸艦]]や補給艦の機能を併せ持たせてマルチロール化した「[[制海艦]]」「[[多目的空母]]」といった艦も構想されており、実際にそのコンセプトを取り入れて建造された艦もある。

**分類 [#cab3e523]
※()内は[[アメリカ海軍]]での略号。

-[[正規空母]](CV)
--[[原子力空母]](CVN)
--([[大型空母]])
--([[攻撃空母]])
--([[対潜空母]])
-[[軽空母]](CVL)
--[[STOVL空母]]
--[[ヘリコプター空母]]
--[[多目的空母]]
-[[護衛空母]](CVE)
--[[MACシップ]]
-[[制海艦]]
-[[航空巡洋艦]]
-[[航空戦艦]]
-[[潜水空母>伊400]]

**空母保有国の一覧 [#k1f87e00]
-正規空母
--アメリカ
---[[レンジャー]](退役)
---[[ヨークタウン]]級(退役)
---[[ワスプ]](退役)
---[[エセックス]]級/[[タイコンデロガ]]級(退役)
---[[ミッドウェイ]]級(退役)
---[[フォレスタル]]級(退役)
---[[キティホーク]]級(退役)
---[[エンタープライズ]]
---[[ニミッツ]]級
---ジェラルド・R・フォード級(計画中)
--ロシア
---[[アドミラル・クズネツォフ>アドミラル・オブ・ザ・ソビエトフリート・NG・グズネツォフ]]
--フランス
---[[シャルル・ド・ゴール]]
---PA2(Porte-Avions2:フランス次期空母)(計画中)
--ブラジル
---サン・パウロ(元フランス・[[クレマンソー]]級「フォッシュ」)
--インド
---ヴィクラマーディティヤ(元ロシア・改[[キエフ]]級「バクー」、改装工事中)
---ヴィクラント(2代目((初代は元英国マジェスティック級「ハーキュリーズ」、1997年1月31日に退役。))。建造中)
--中国
---&ruby(シーラン){施琅};(元ロシア・[[アドミラル・クズネツォフ>アドミラル・オブ・ザ・ソビエトフリート・NG・グズネツォフ]]級「ワリヤーグ」。2010年就役予定)
-軽空母・ヘリコプター空母
--イギリス
---[[インヴィンシブル>インビンシブル(空母)]]級
---[[クイーン・エリザベス]]級(建造中)
--インド
---ヴィラート((元英セントー級「ハーミーズ」。))
--イタリア
---ジュゼッペ・ガリバルディ
---カヴール([[輸送艦兼用>多目的空母]])
--スペイン
---プリンシペ・デ・アストゥリアス
---フアン・カルロス1世(建造中、[[揚陸艦兼用>多目的空母]])
--タイ
---チャクリ・ナルエベト
--日本
---[[ひゅうが]]型
---[[19500トン型護衛艦]](22DDH)(ヘリコプター空母・公式には「ヘリコプター搭載[[護衛艦]]」)

**過去に空母を保有していた国の一覧 [#k1f87e00]
-カナダ
--ウォリアー(HMS Warrior R31)
(イギリスから貸与されたコロッサス級航空母艦。マグニフィセントと交換。)
--ボナヴェンチャー(HMCS Bonaventure CVL-22)
(元英国マジェスティック級航空母艦「パワフル(HMS Powerful R95)」)
--マグニフィセント(HMCS Magnificent)
(元英国マジェスティック級航空母艦)
-アルゼンチン(2隻とも元英国コロッサス級航空母艦「ウォリアー」・「ヴェネラブル(HMS Venerable R63)。退役。)
--インデペンデンシア(ARA Independencia)
--ベインティシンコ・デ・マヨ(ARA Veinticinco de Mayo)((1982年の[[フォークランド紛争]]にも参戦。))
-オランダ
--カレル・ドールマン(Hr. Ms. Karel Doorman R 81)
(元英国コロッサス級航空母艦「ヴェネラブル」。アルゼンチンへ売却。)
-オーストラリア
(2隻とも元英国マジェスティック級航空母艦「マジェスティック(HMS Majestic R77)」・「テリブル(HMS Terrible R93)」。退役。)
--メルボルン(HMAS Melbourne R21)
--シドニー(HMAS Sydney R17/A214)
-ドイツ(未完成)
--グラーフ・ツェッペリン(Graf Zeppelin)※[[第二次世界大戦]]終戦後ソ連に接収され洋上基地(PB-101)になる。
--ヴィーザル([[アドミラル・ヒッパー級>アドミラル・ヒッパー]][[重巡洋艦>巡洋艦]]4番艦「ザイドリッツ(Seydlitz)」を建造途中に改造したが、物資不足で建造中止・廃棄。)

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