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*&ruby(こうくうじゅんようかん){【航空巡洋艦】}; [#sf3fc598]
[[航空母艦]]の[[航空機]]運用能力と、[[巡洋艦]]の戦闘力を兼ね備えるべくつくられた[[艦艇]]。~
ただし実際には性能が中途半端になるため、実用例はほとんどない。~

**第二次世界大戦期 [#m4a66ce4]
1920年代頃より、[[巡洋艦]]には数機程度の[[水上機]]を搭載する事が多くなった。~
[[艦載砲]]の弾着観測や[[偵察]]のために[[偵察機]]が必要とされたためである。~
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1930年代〜1940年代、この艦載機の運用拡大を図るべく、実験的な航空巡洋艦がいくつか運用された。~
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[[日本海軍>日本軍]]では[[重巡洋艦]]「[[最上]]」が航空巡洋艦に改装されている。~
また、実験的な航空巡洋艦として[[利根型>利根]]重巡洋艦(「利根」「筑摩」)が建造されている。~
一方、スウェーデン海軍でも同様に[[軽巡洋艦]]「ゴトランド」が新造されている。~
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これらは総じて[[砲塔]]を艦の前部に集中させ、後部に[[飛行甲板]]を備える設計となっていた((これは[[航空戦艦]]となった日本の「伊勢」「[[日向]]」、戦後に「ヘリコプター巡洋艦」として建造されたソ連海軍の「[[モスクワ]]」や[[海上自衛隊]]の[[ヘリコプター搭載護衛艦>護衛艦]]「[[はるな]]」級、「[[しらね]]」級も同様であった。))。~
これらは総じて[[砲塔]]を艦の前部に集中させ、後部に[[飛行甲板]]を備える設計となっていた。~
>これは[[航空戦艦]]となった日本の「伊勢」「[[日向]]」、戦後に「ヘリコプター巡洋艦」として建造されたソ連海軍の「[[モスクワ]]」や[[海上自衛隊]]の[[ヘリコプター搭載護衛艦>護衛艦]]「[[はるな]]」級、「[[しらね]]」級も同様であった。

しかし、この設計では甲板の空間が[[艦載砲]]と[[魚雷]]発射管に圧迫されてしまう。~
結果、[[飛行甲板]]は着艦不可能なほど狭くなり、[[水上機]]しか運用できなかった。

**冷戦時代のソ連海軍 [#h10b216a]
[[冷戦]]時代、[[ソ連軍]]では[[固定翼>固定翼機]][[艦載機]]運用能力を備えた艦を「航空巡洋艦」と公称して就役させていた。~
それらは[[航空母艦]]としての艦載機運用能力に加えて、[[巡洋艦]]に匹敵する重武装が施されていた。~
公式にはあくまでも「[[巡洋艦]]」であるが、運用実態としては航空母艦である。~
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このような艦が作られることになった理由は、以下のような要因があったと考えられている。~

***地勢的・技術的な問題 [#vafb76c2]
旧ソビエト連邦・現ロシア連邦はその地勢上(([[領海]]の過半が北極圏にあり、冬期には港湾が凍結して運用不能になる。))、[[海軍]]の運用に多大な制約を抱えている。~
このため造船所・港湾施設は黒海沿岸に集中し、太平洋側に[[艦隊]]を集結させるのが困難である。~
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よって、ソ連海軍がアメリカ艦隊、特に[[空母打撃群>機動部隊]]に対して[[艦隊決戦]]を挑むのは現実的でない――この見解に基づいて[[艦載機]]は軽視され、[[ミサイル]]に偏重する[[ドクトリン]]が採用された。~
結果、艦載機運用のみに特化した[[航空母艦]]の代わりに、自衛能力を持つ[[巡洋艦]]が必要とされた。~
>加えて、[[ミサイル]]の小型化が難航したため、自衛のための武装が著しく大型化した。~
この結果として[[巡洋艦]]に匹敵する武装となり、純粋な[[航空母艦]]としての運用ができなくなっているのである。~

***国際条約との関連 [#cee0be0b]
ソビエト連邦・ロシア連邦は、共に1936年に締結されたモントルー海峡条約に批准している。~
同条約では、黒海と地中海を繋ぐボスポラス海峡の通行に制約が課せられているが、特に重要なのは、[[航空母艦]]、および[[口径]]8インチ以上の[[艦載砲]]を搭載した艦の通行が禁止されている点である。~
この制約を回避して、[[固定翼>固定翼機]][[艦載機]]を搭載する艦を運用できるようにするために「航空巡洋艦」という艦種を公称するようになったものとみられる。
>すなわち、「航空巡洋艦」は巡洋艦であるから「航空母艦」ではない。~
また同様に、[[ミサイル]]は[[艦載砲]]ではないから砲口径に対する制限にもあたらない。

関連:[[キエフ>キエフ(航空母艦)]] [[アドミラル・オブ・ザ・ソビエトフリート・NG・グズネツォフ]]


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