【航空機関士】(こうくうきかんし)

旅客機貨物機など、複数のエンジンを搭載する大型機に搭乗し、主にエンジンの運転監視や関連機器の調整などにあたる乗員。
英語標記では"Flight Engineer(フライトエンジニア)"と呼ばれている。

航空機の大型化に伴い、それに搭載される機器も増加することになったが、その分、それらの機器の運転状況を表示する計器の数も増加してしまい、パイロットが飛行中に全ての計器を監視することは難しくなった。
また、かつてはエンジンの信頼性も低く、同じ機体に取り付けられたエンジンでも個体ごとに回転数が異なることも珍しくなかった。
そこで、パイロットの負担を減らすべく、主に動力系関連の計器の監視や機器の運転調整を受け持つ乗員として設定されたのがこの職種である。

日本の航空法においては、「航空機に乗り組み、操縦装置を除く発動機及び機体の取扱を行う資格」と定義され、同法第65条にて「構造上、操縦者だけでは発動機及び機体の完全な取扱いができない航空機」には乗り組ませなければならない*1としている。
このため、本来の業務であるエンジン及びその関連機器の運転監視のほか、フラップの昇降やランディングギアの出し入れ、スロットルレバーの操作を機長副操縦士に代わって行うことができ、また、機長副操縦士ともに余裕のない場合は通信も行うことができる。

大型機の運航には欠かせない乗員として活躍してきたが、20世紀末期以後、航空機のアビオニクスの発達と機器の信頼性向上(殊にグラスコックピットの実用化)に伴い、パイロットが全ての計器を常時監視する必要がなくなり(必要なときに必要な情報をディスプレイに呼び出して表示する)、また、エンジンの運転制御もコンピュータに移行したため、急速に活躍の場を失い、2009年7月の日本航空におけるクラシックジャンボ*2の退役に伴って、日本の民間航空業界から姿を消すことになった。

航空機関士(自衛隊)

上記の通り、日本の民間航空業界では(国内線・国際線問わず)全ての機体が2マンクルー方式に移行したため、「航空機関士」という職種は姿を消すことになったが、自衛隊では「部内限りの資格(航空士)」として、現在でもこの職種の乗員が存在している。
(航空法に定めた資格との共通性はないため、民間航空業界では通用しない)

自衛隊では以下の機体に搭乗している。

関連:2マンクルー 3マンクルー 4マンクルー 5マンクルー グラスコックピット


*1 かつてこの条には「4基以上の発動機を有する航空機」「3基の発動機を有し、且つ、35,000kg以上の最大離陸重量を有する航空機」という項目もあった。
*2 B747のうち、-300型までのタイプの通称。

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