【航空学生】(こうくうがくせい)

海上自衛隊航空自衛隊における航空士パイロット戦術航空士)の養成課程。
飛行要員養成の中核であり、自衛隊パイロットの大半がこの課程の出身である。

養成課程を管理する教育部隊は海上自衛隊航空自衛隊にそれぞれひとつのみ。
海上自衛隊は山口県・小月基地の小月教育航空群小月教育航空隊が担当。
航空自衛隊は山口県・防府南基地の第12飛行教育団航空学生教育群が担当。

なお、陸上自衛隊の航空隊にはこれに相当する養成課程がない。
陸自の飛行要員は主に「陸曹航空操縦学生課程」で確保されるが、この課程は現役の陸曹のみを選抜対象とする。

募集資格は「日本国籍を有し、高校卒業程度の学歴を持つ18歳以上21歳未満の男女*1」で、毎年60〜70名前後が採用される。
候補生の大半は中途で落第し、無事に全課程を修了してウィングマークを受けられる同期生は概ね15人に満たない。

学生として採用された時点で二士非任期制隊員)に任官され、その待遇に応じた給与も併せて受ける。
採用後、2年間は教育部隊で自衛官航空士としての基礎教育に専念し、この間は飛行機の取り扱いはしない。
この段階での学力不良は職務懈怠とみなされ、落第生は免職処分を受けて退学となる。救済措置は定期試験後に一度認められる追試のみ。

基礎教育が修了すると「学生」の立場から脱して三曹に昇進し「飛行幹部候補生」としての専門教育に移る。
その後、約4年間に渡って幹部教育と操縦教育を受ける。
訓練の進捗に応じて階級が累進し、飛行要員として実務に投入される時点で三尉となる。
この段階でも落第生は飛行要員としての将来を絶たれるが、修了状況に応じて航空士航空機関士として配属される場合もある。

なお、飛行要員としての教育を修了すると国土交通省から事業用操縦士の資格が発給される。
ただし、除隊後2年間は航空機に搭乗する職種に就く事を禁じられる。

関連:予科練? 陸曹航空操縦学生

他コースからのパイロット候補生との差異

海自・空自の飛行要員には、本課程の出身者以外にも防衛大学校や一般大学の出身者もいる*2
ただし、大卒者は中途まで他の職種職域志願者と同じ教育を受けた後に操縦教育に入る。
一方、航空学生はパイロット戦術航空士以外の職域を前提としない教育が行われ、大卒者より数年若く実務に投入される。
そのため、航空学生課程の出身者は大卒者より操縦技量が高い傾向にあり、入隊から退官までの総飛行時間も格段に多い。

一方で、出世・昇進については防衛大学校や一般大学出身者に比べて困難になる。
航空学生出身の幹部航空部隊を指揮する事のみを求められ、佐官将官に至るために必要とされる地上勤務の機会がほとんどない。
このため、航空学生から始まったキャリアは三佐までで終わるのが典型的で、出世頭でも一佐が限界だという。


*1 これは防衛大学校防衛医科大学校の受験資格と同じである。
*2 これは陸上自衛隊の航空部隊においても同様で、陸曹航空操縦学生出身者と大卒者が混在している。

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