【航空・鉄道事故調査委員会】(こうくう・てつどうじこちょうさいいんかい)

国土交通省に設置されている、航空機または鉄道で死傷者を出すような重大事故が起きた際の原因調査や再発防止のための研究を行う専門機関。

従来、航空機で死傷者を出すような大事故が発生した際の対処(原因調査など)は、旧運輸省の航空局が中心となり、そのたびごとにスタッフを招集してあたっていたが、1971年に起きた「雫石事故」*1の際、一方の当事者である自衛隊側へ一方的な責任を被せる調査結果が出され、問題となった。
このことを教訓に、1974年に中立的な調査機関として「航空事故調査委員会」を設置。その後、2001年に鉄道の重大事故も調査範囲に含められることになって現在の名称に改められた。

下記にあげるような重大事故が発生すると、委員会は1〜数名の調査官を指名して現場に派遣。派遣された調査官は事故現場や関係者の所在地を回って証拠物件の採集や事情聴取を行い、また、外部の専門家も交えての科学的な解析なども行う。
こうした過程を経て作成された「報告書」は一般に公開され、また、必要に応じて行われる関係諸機関への報告・建議により、今後の事故再発防止に努める。

同委員会は活動にあたって常に「公正・中立」の立場を取り、関係者への責任追求は行わないが、アメリカの同種組織である「国家運輸安全委員会(NTSB)」や、日本の海難事故における「海難審判庁*2」のような強い権限がなく、また、人員の規模も小さいため、証拠物件の収集や関係者への事情聴取などでは「業務上過失致死傷罪」で捜査をする警察・検察の後塵を拝することもあるという。

このことから、政府は2007年に「2008年度中に航空・鉄道事故調査委員会と海難審判庁を統合し、新たに『運輸安全委員会』として再編する」ことを発表した。
再編後の「運輸安全委員会」は国土交通省の外局となり、全国8ヶ所に「地方運輸安全事務所」という地域機関を設置して、航空・鉄道・船舶事故の原因調査や情報収集に当たることを予定している。

調査対象となる事故

  • 航空事故の場合
    • 航空機の墜落・衝突または火災
    • 航空機による人の死傷・物件の損壊
    • 機内での乗客・乗員の死亡(病気以外)または行方不明
    • 飛行中の機体損傷
    • 重大インシデント(ニアミスなど、事故発生の恐れがあると認められる事態)
  • 鉄道事故の場合(参考)
    • 列車(車両)の脱線・衝突または火災
    • 列車内での乗客・乗員の死亡(5人以上の死傷者が出たもの、または特に異例のものに限る)
    • 重大インシデント

*1 訓練飛行中の航空自衛隊F-86戦闘機と全日本空輸のB727旅客機が空中衝突して2機とも墜落、旅客機の乗客・乗員全員(計162名)が死亡した大事故
*2 こちらは国土交通省の外局である

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