【攻撃ヘリコプター】(こうげきへりこぷたー)

主にロケット弾対戦車ミサイル機関砲等を搭載し、地上目標への攻撃を主任務とするヘリコプター
「空中戦車」「空飛ぶ砲兵」とも呼ばれる兵器である。

中でも、対戦車戦闘を想定した機種を特に「対戦車ヘリコプター」と呼ぶ事もある。
ただし、米ソ冷戦終結後に機種統合が進んだため、現在そうした機種はほとんど見られない。

黎明期には汎用輸送ヘリコプターの機体をそのまま流用していたため(詳細は後述)、任務の性質上、非常に生存性が低かった。
近年ではバイタルパート装甲が施され、チャフフレアなどの防御装置も搭載されている。
また、機体構造も工夫され、低空からの墜落程度では乗員に被害が及ばないようになっている。
しかし、やはり直接交戦で反撃を受ければ戦車ほどの生存性は期待できない。

地形追随飛行で身を潜めて移動し、交戦時はヒットアンドアウェイに徹するのが基本的な運用法である。
対空装備を持った歩兵アンブッシュに対して極めて脆弱であり、地上部隊との連携を常に必要とする。
また、ヘリコプターの特性上、悪天候にも弱い。
アビオニクスの向上による改善は見られるが、現在でも全天候対応には程遠い。

しかし、現在最も濃密に近接航空支援を行える*1兵器であり、世界中の陸軍で採用されている。

関連:戦闘ヘリコプター AH-1 AH-56

開発の経緯

「攻撃ヘリコプター」という兵器の端緒は、1950年代のアメリカに始まる。

当時、軍隊におけるヘリコプター軍馬軽戦車豆戦車の後継として用いられていた。
高い機動力の反面、構造は脆弱で、正面戦闘能力には全く期待が持てなかった。
そのため、「砲兵の弾着観測」「指揮伝令」「後送」「捜索救難」などに投入された。

そんな折、朝鮮戦争アメリカ海兵隊が戦線後方へのヘリボーンを強行し、成果を挙げた。
これに刺激された陸軍は、ヘリコプターに武装を搭載し、「空飛ぶ砲兵」として運用する計画を立案した。
しかし、当時の技術的な成熟度*2内部での軍政上の軋轢*3もあり、計画は既存の輸送ヘリコプターに武装を積んだだけの「ガンシップ」として実現されることになった。

そして1960年代のベトナム戦争において、ヘリボーン戦術が大々的に採用された*4
輸送ヘリで浸透する歩兵を護衛するため、汎用ヘリコプター・UH-1*5ガンシップ化された上、急遽実戦投入された。

汎用ヘリを転用して造られたガンシップはそれなりの戦果を挙げたが、否定的な戦訓も数多く集積。
過積載に伴う運動性不足、ゲリラ兵の撃つ小銃弾拳銃弾でも撃墜されてしまう脆弱性*6など、甚大な戦術的欠陥が露呈した*7

そこで1960年代半ば、アメリカ陸軍は攻撃ヘリコプターの新規設計に着手。
紆余曲折を経た*8末、ベル社の造ったAH-1が優秀な成果を上げ、各国も軒並み攻撃ヘリコプターの開発に着手していった。

代表的な機種


*1 ベトナム戦争での戦訓によれば、攻撃ヘリコプターは固定翼機の1/3〜1/4の近距離から、なおかつ目標を目視確認して攻撃を行えた。
*2 計画が動き出した1950年代当時、高出力なターボシャフトエンジンを搭載したヘリコプターはまだ実用化されていなかった。
*3 自前で攻撃機を運用する空軍は、陸軍航空隊が独自の攻撃力を持つことに拒否反応を抱いていたという。
  なお、この手の軋轢は、自前の固定翼戦闘攻撃機を運用する海兵隊にもあったという。

*4 これは、戦場となったインドシナ半島の当時の道路状況から、機械化部隊機動展開が困難であったためである。
*5 同機はアメリカ軍が制式採用したヘリコプターで初めてターボシャフトを採用したもので、当時としては高出力であった。
*6 ヘリコプターは固定翼機よりも低速・低高度で飛ぶことが多く、なおかつ、飛行中のパイロットは両手でサイクリックコレクティブを握っているため、被弾による操縦不能がすぐさま墜落に直結した。
*7 当時、アメリカ空軍はこのことを捉えて、陸軍に「ガンシップへの過度の依存は危険である」とのコメントを出したこともあるという。
*8 当初はロッキード社のAH-56が採用されたが、技術的困難から実戦化が断念され、代替機としてAH-1が採用された。
*9 Light Combat Helicopter(軽戦闘ヘリコプター)の略。

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