【護衛空母】(ごえいくうぼ)

第二次世界大戦中にアメリカ・イギリス海軍が運用した、小型の航空母艦
アメリカ海軍での記号は"CVE"。

ちなみに日本海軍では、徴用商船から改造された「特設空母」と呼ばれる艦の一部*1がこれに相当する。

搭載機数は20機〜30機程度、巡航速度は20kt前後。
同世代の正規空母軽空母と比較すれば性能面では明らかに見劣りする。
実際、敵の航空母艦との直接対決は全く想定されていなかった。

主な任務は、各種物資や人員を積んで海上を行き来する味方の輸送船団を護衛し、その船団に対する通商破壊を阻止する事である。
敵性航空機潜水艦を発見するための哨戒機と、応戦のための戦闘機が搭載された。
また、航空機を前線基地へ移動させる際の運搬手段・中継拠点、旧式戦艦の護衛などにも利用されていた。

初期には民間船を徴用・改造して作られていたが、後には新規に建造されるようになった。
量産性が重視され、商船の設計思想を取り入れた簡易な構造のものが多い。

アメリカの「ボーグ」級は45隻、「カサブランカ」級は年間で50隻が製造されたが、最盛期には1週間で1隻という尋常ならざる竣工ペースから「週刊空母」の異名を取ったという*2
しかしその一方、現場の将兵からは「ジープ空母」「ベビー空母」「カイザーの棺桶*3」、あるいは艦種略号の「CVE」をもじって「燃え易く(Combustible)、壊れ易く(Vulnerable)、消耗され易い(Expendable)」とも揶揄されていた。

第二次世界大戦終結後、残存艦の一部は武装解除され、商船として売却された。
また、払い下げられず軍に残った艦は航空母艦のまま、あるいはヘリコプター空母輸送艦強襲揚陸艦に改装されて1960年頃まで籍を置いていたが、その頃には艦載機潜水艦の技術革新に対応できず*4、ほとんどがモスボールされたまま現役に復帰することなく解体された。

関連:制海艦 MACシップ

主な護衛空母

  • アメリカ
    • ロングアイランド(もと未完成貨物船「モーマックメイル」)
    • チャージャー(もと未完成貨物船「リオ・デ・ラプラタ」)*5
    • ボーグ級(未完成貨物船を徴用*6
    • サンガモン級(もと徴用タンカー
    • カサブランカ級
    • コメンスメント・ベイ級
  • イギリス
    • オーダシティ(もとドイツ貨物船「ハノーバー」)
    • アーチャー(アメリカから貸与・もとアメリカ未完成貨物船「モーマックランド」)
    • アクティヴィティ(もと未完成冷凍貨物船)
    • カンパニア(もと未完成冷凍貨物船)
    • アヴェンジャー級(アメリカから貸与)
    • アタッカー級(アメリカから貸与された「ボーグ」級)
    • ナイナラ級(もと未完成冷凍貨物船)
    • プレトリア・カスール(もと客船→Qシップ?(特設巡洋艦))
    • MACシップ
  • (参考)日本
    • 大鷹型(もと日本郵船「春日丸」「八幡丸」「新田丸」)
    • 海鷹(もと大阪商船「あるぜんちな丸」)
    • 神鷹(もとドイツ貨客船「シャルンホルスト」)*7
    • あきつ丸(陸軍が「特殊船(揚陸艦)」として徴用した船に、護衛空母としての機能を追加したもの)
    • 熊野丸(同上)
    • しまね丸(石原汽船所有のタンカー*8
    • 山汐丸(山下汽船所有。陸軍の指揮下で運用される予定だった)
    • 速吸(給油艦。英国の分類では「戦闘カタパルト艦」に相当)
    • 鷹野型(同上。すべて未完成)

*1 特設空母の中には、当時の正規空母とほぼ同じスペックを持っていた艦(もと日本郵船の「出雲丸」「橿原丸」。後にそれぞれ正式に軍籍に入れられて「飛鷹」「隼鷹」となった)もあったため、「特設空母=護衛空母」とはならなかった。
*2 同じ頃、正規空母エセックス級もほぼ1ヶ月に1隻という竣工ペースで就役していた。
  このことは、当時のアメリカが持っていた圧倒的な工業力を象徴するエピソードとして知られている。

*3 カサブランカ級や後継のコメンスメント・ベイ級の建造を一括で請け負った「カイザー造船所」からの命名。
*4 エンジン技術の進歩に伴って航空機が大型化していったため、作戦に必要な機体数に対してペイロードが不足することになった。
  また、護衛空母本来の任務であった対潜掃討においても、潜水艦の水中速力や潜航継続時間などの能力向上で対応が難しくなっていった。

*5 当初「アヴェンジャー」級の一艦として英国へ貸与される予定だったが、キャンセルとなってアメリカ軍籍に残されたもの。
*6 前期の艦は建造の進んでいたものを徴用していたが、後には起工前の段階で徴用する形を取っていた。
*7 1939年に神戸港に寄港中、第二次世界大戦が勃発したため帰国不能となって放棄されていたところを日本政府が「戦争終結後、船体価格の倍額を支払う」という条件で買い上げたもの。
*8 民需輸送の傍ら軍事輸送にも協力する、という運用が予定されていた。

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