【原子力空母】(げんしりょくくうぼ)

動力を原子炉による蒸気タービンで賄う航空母艦

艦自体が航行するための燃料補給がほぼ必要なくなる*1ため、艦載機を運用するためのペイロードが大幅に増強される。
また、莫大な余剰出力を確保する事で、電力や蒸気カタパルトをほぼ無制限に運用できる。
燃料の排煙が生じないため煙突などを設置する必要がなくなり、また排煙による乱流が生じないため離着陸が比較的安定する。
こうした特性により、通常動力空母の限界を超える絶大な投射弾量を確保する事が可能となる。

一方、原子炉を取り扱うために必要となる多くの専門技術者と多大な工数、発生した放射性廃棄物の処理など、運用上の問題がいくつか生じる。
この問題が艦の運用コストを増大させるため、効率化のために大型化が必要となり、基本的に正規空母である必要がある。
現存する原子力空母は正規空母の基準で考えてさえ極度に巨大であり、そのユニットコストは極めて膨大である。

また、空母は艦隊の構成要素であり、そして僚艦はほぼ全て通常動力である*3
単艦単位で考えても艦載機は膨大なジェット燃料を必要とするし、人員も生活物資や休養を必要とする。
このため、原子力の採用は艦隊全体の運用効率、兵站負荷という観点では通常動力に比べて非効率的である。

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世界初の原子力空母「エンタープライズ」。2012年12月退役。

主な原子力空母


*1 (数年に一度行われる)大規模なメンテナンスに際して燃料棒の交換*2が行われることもある。
  その際には船体を切開する必要があるため、年単位で船としての運用が不可能になってしまう。

*2 ちなみに、アメリカのニミッツ級では25年に一度燃料棒を交換しているが、次作のジェラルド・R・フォード級では50年間燃料棒の交換が不要な原子炉を採用し、事実上、就役から退役まで(艦自体の動力としての)燃料補給を不要にするという。
*3 かつては護衛に就く水上艦も原子力推進にすることが試みられたが、膨大なコストがかかることからごく一部の大型艦(巡洋艦クラス)に採用された程度にとどまっている。

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