【憲兵】(けんぺい)

Millitary Police(MP).
軍隊内部で警察に準じる職務を担当する兵種。
または、軍事機密の取扱許可を与えられた特殊な司法警察?機関。

混乱期の特殊な情勢を除けば、基本的には軍隊の一部門として運営される。
警察権を行使する関係上、憲兵である事を容易に識別できる徽章・腕章などを着用する事が多い。

軍隊の一部として運用される理由は大別して二つある。
まず一つに、被疑者が武装している可能性が論ずるにも値しないほど高いため。
もう一つに、ほとんどの犯罪捜査は軍事機密の開示に値するほど重要な案件ではないためである。
総括すれば、軍人でない捜査官と軍人の犯罪容疑者を接触させるのはあらゆる意味で好ましくない。

憲兵の職務

憲兵が存在する最大意義は、軍隊内部での犯罪に対する捜査・逮捕・裁判・処罰である。
軍事的機動を行う際の交通整理、捕虜の待遇管理や監視なども担当する。
実際に憲兵が行う職務は主に以下の通り。

  • 軍人・軍属が関与した疑いのある犯罪の捜査
  • 軍の施設・船舶内で発生した犯罪の捜査
  • 上記の案件における被疑者確保
  • 軍内での防犯活動
  • 士気の維持。特に規律違反の防止
  • 軍事的機動における交通統制
  • 軍隊が関与する状況下での要人警護
  • 捕虜およびその収容所の管理
  • 施設内の警備。ただし明白に敵襲が警戒される場合を除く
  • 常設軍法会議の運営

自衛隊警務官

自衛隊では憲兵に相当する職種を「警務科」と称する。
ここに配属される隊員は「警務官」「警務官補」として「特別司法警察職員」に指定される*1

警務官
刑事訴訟法で定められた捜査官としての諸権限が行使できる「司法警察員」。
任官には三曹以上の階級を要する*2
警務官補
階級が士長以下で、警務官の資格を持たない警務科の隊員。
捜査官としての権限が制限された「司法巡査」*3であり、警務官の指揮下で職務を遂行する。

警務科は、陸自海自空自がそれぞれ組織する縦割り体制であり、連携・人員の不足から、他国軍の憲兵組織に比して捜査能力で劣る傾向が見られるという。
この欠点を解消するため、これら警務組織を統合する計画が検討されている。

なお、自衛隊には軍法会議の規定がない。
このため、確保した被疑者の取り扱いは検察および一般の裁判所へ引き継がれる。

関連:脱柵

国家憲兵/警察軍/軍警察

国境警備や領海の臨検、大規模なテロリズム対策などを担当する司法警察?機関。
職務遂行のために明白に軍隊的な武力行使を行うが、法制上は司法警察?に分類される組織を指す。
歴史的経緯などから、こうした組織は憲兵の権限を拡張した結果として設置されている事が多い。

日本語では「国家憲兵」と訳する事も多いが、空軍の統制下にはなく、通常の憲兵とは性格が異なる。

国家憲兵制度の一例はフランスやイタリア・オランダ・トルコなどの欧州圏諸国に見られる。


*1 根拠法令は「自衛隊法第96条第1項」。
*2 三尉以上の階級であれば検察官(副検事)になるための司法試験を受ける資格を与えられる。ただし、これまでに警務官から検察官に任官された者はいない。
*3 警察内部の階級である「巡査」とは直接関係がない。

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