【軍政】(ぐんせい)

military administration.

軍隊に対する政治的な管制。「軍事行政」とも。
基本的には平時ないし後方で行うもので、軍事力を実際に行使する職務は含まない。

以下のような職務が含まれる。

  • ドクトリンの策定と是正
  • 教育と訓練の策定管理
  • 会計処理
  • 必要な装備の選定と調達
  • 将兵の採用・選抜・評価・配属
  • 軍事基地の管理
  • 民間企業との契約管理
  • 法的な手続き
  • 広報活動

関連:文民統制 背広組 兵站

官僚制度的対立

軍隊に限った事ではないが、一般に、軍政担当と実戦部隊の利害は対立する。
実際、紛争時の戦闘効率上の理由から行政上の制約が黙殺される越権行為は多い。
軍政部門はしばしば前線指揮官が引き起こした政治的問題の後始末を強いられる。
また一方、前線もしばしば軍政側からの強制によって不適切な流血を強いられる。

効率の低下が将兵の死に直結する以上、前線ではしばしば越権行為を決断できる才覚が要求される。
一方で、越権行為が汚職・背任・残虐行為・敗北主義を繋がるのは明白であり、軍政はこれを許容できない。
ここに最適解はなく、これが見解が異なる派閥間での対立に発展する事も珍しくない。

典型的に、軍政からの規制は開戦直後に最も緩く、時間経過と共に圧力を増していく傾向にある。
これは、軍政が根本的に市民・為政者・政党諸派の代理人である事に起因する。
開戦初期には誰も事態の全貌を把握しておらず、従って誰もが軍隊への政治介入を躊躇う。
しかし戦況報告が集まれば各々が事態を把握し、各派がそれぞれの利害に応じて蠢動し始める。

この事はしばしば前線に悲劇を招く。
軍隊は頓珍漢な愚行を最も犯しやすい開戦初期に、最も高い自律性を持つ。
そして、失敗から十分に学習した後は、国内からの政治的圧力によって統制を阻害され愚行を強要される。


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