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*&ruby(ぐんじかくめい){【軍事革命】}; [#dc1e79e9]
Revolution in Military Affairs (RMA)~
技術革新による軍事の劇的な変化のこと。~
技術革新による[[軍事]]の劇的な変化のこと。~
これまでの人類史上で7回あった、とされており、歴史の古い順にあげると以下の通りとなる。~

+青銅器の登場
+弓矢・投石機の登場
+[[騎兵]]戦術の確立
+[[火器>ガン]]の実用化
+[[国家総力戦]]の概念
+[[装甲車両>戦車]]および[[航空機]]の発達
+[[核兵器]]による[[相互確証破壊]]
:''1.青銅器の登場''|
刀剣や盾など殺人のみを目的とした道具類と、それを扱う訓練体系の成立。~
十分な訓練を受け、十分な装備を与えられた[[軍隊]]は、そうでない兵士の何倍も戦う事ができた。
:''2.弓矢・[[投石機>カタパルト]]の登場''|
敵の手が届かない[[アウトレンジ]]からの一方的な虐殺が可能になった。~
これ以降、[[軍隊]]は常に射撃を警戒しながら行動する事を余儀なくされている。
:''3.[[騎兵]]戦術の確立''|
(全力疾走する人間の数倍の速さで継続して走れる)[[軍馬]]の[[機動力]]による奇襲、[[兵站]]輸送効率の向上、情報伝達の加速をもたらした。~
これによって[[撤退]]は以前と比べて格段に困難になり、追撃戦の戦果は劇的に拡大される。~
そして、[[歩兵]]だけが相手なら生き延びられたはずの敗残兵が次々と蹂躙・捕縛・殺害されるようになった。
:''4.[[火器>ガン]]の実用化''|
黎明期の銃は長弓や[[クロスボウ]]より遙かに劣る殺人器具であったし、初期の大砲は「[[投石機>カタパルト]]の出来損ない」だった。~
軍事革命をもたらしたのは[[火器>ガン]]の優れた性能ではなく、[[火薬>爆薬]]による「馬鹿でかい騒音」である。~
兵士の武器が爆音を立てる事、また敵が爆音と共に襲ってくる事が[[士気]]に与える影響は絶大であった((敵軍が次々と銃声を響かせる中、自分達の立てる音が弓の風切り音だけだったとすれば、弓兵隊が心細さに打ちのめされて[[敵前逃亡]]に走っても不思議はない。&br;  そして実際、そうなった。戦場で戦う人間にとって、静粛である事は臆病である事とほぼ同義であった。))。~
威嚇と恐怖、衝撃と畏怖が[[作戦]]にもたらす影響について理解され始めたのもこの頃からである。
:''5.[[国家総力戦]]の概念''|
軍事学者に[[士気]]の概念が浸透していくに伴い、[[士気]]を保ちやすい[[戦略]]が模索され始めた。~
その要求に対する軍制度上の回答は、一定年齢に達した成年男子国民を強制的に軍隊へ送り込む「[[徴兵制]]」であった。~
兵士個人を元々のコミュニティ(地縁・血縁)から孤立させ、[[部隊]]のみに依存させる事で、指揮官による統率を容易にしたのである。~
一方、この軍事革命によって兵士の人権は今までよりも遙かに強く蹂躙されるようにもなった((つまり、厳密には兵士の[[士気]]が向上したわけではない。&br;  [[敵前逃亡]]が困難になったため、[[士気]]が崩壊した状態でも無理に戦わされたのである。&br;  その証拠として、この軍事革命以降、[[戦争神経症]]に罹患したものと疑われる兵士の数は劇的に増加した。))。~
この軍事革命は人権を求める市民革命とほぼ同時に始まり、後に共産主義やファシズムを生み出す発端となる。~
:''6.[[装甲車両>戦車]]および[[航空機]]の発達''|
[[内燃機関]]の発達により、生物には再現不能な破壊力・[[機動力]]が戦場に投入されるようになった。~
[[軍馬]]数十頭に匹敵する運動エネルギーが当然のように発揮され、数十トンの重量物が平然と荒野を走るようになった。~
[[航空機]]の発達は数千メートル上空の虚空や、数百キロ後方の基地さえ敵の警戒を要する戦場に変えた。~
これら破壊的な機械は長距離の無線通信越しに統率され、世界中どこでも緻密な[[作戦]]を[[展開]]した。~
そして、人間の兵士だけはそのまま、技術革新がもたらした戦場の地獄に取り残されたのである((ウィンストン・チャーチルはこの時期の戦争について、以下のような言葉を残している。&br; 「戦争からきらめきと魔術的な美がついに奪い取られてしまった。&br;  アレキサンダーや、シーザーや、ナポレオンが兵士達と共に危険を分かち合い、馬で戦場を駆け巡り、帝国の運命を決する。&br;  そんなことはもう、なくなった」))。~
:''7.[[核兵器]]による[[相互確証破壊]]''|
1945年の広島・長崎での惨劇を経た後、軍事学者の関心が[[核兵器]]に向けられるのは必然であった。~
一刻でも早く[[核兵器]]への対抗戦術を確立しなければ、自国が軍事的危機を迎えるのは明白であったからだ。~
~
しかし結論から言えば、現在の軍事科学においてさえ、そのような対抗戦術は存在しない。~
もし、敵国が無数の[[核兵器]]を携えて[[国家総力戦]]を仕掛けて来た場合、その攻撃を避けて生き残る術はない。~
この恐るべき事実によって、皮肉にも[[列強]]間での[[国家総力戦]]は起こり得なくなった。~
これ以降の軍事史は、いかに必要以上の破壊力を発揮せずに勝つかを試行錯誤する歴史となっていく。~

そして現在、人類は第8の軍事革命を迎えており、それは[[冷戦]]終結による[[軍隊]]の量的削減と情報通信技術の劇的向上により訪れた戦闘の変革である。~
すなわち、[[データリンク]]装置、[[全地球測位装置]]、精密誘導兵器、高い機動性を持つ部隊などからなる、警戒・通信・指揮・攻撃の統合システムの運用であり、これらによって戦闘の様相が以前と全く違うものになる。~
**第八の軍事革命 [#ed2f637f]
単に「軍事革命」と称する場合、現在進行形で発展しているといわれる第八の軍事革命を指す事が多い。~
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具体的には、従来のように相手国軍の兵員・装備を物理的に破壊するための消耗戦から、圧倒的情報優勢と高速度かつ大容量の[[データリンク]]による「指示を待たない」極めて迅速な指揮及び移動により、相手国が反撃に出る余地の無い短時間で主要な指揮統制施設、通信施設などを同時に複数を物理的(ハードキル)若しくは([[サイバーアタック>サイバーテロ]]等の方法により)論理的に破壊([[ソフトキル]])し、相手国の兵員・装備には殆どダメージが無いまま指揮統制を乱し無力化する「麻痺戦」への変革である。~
その発端は[[冷戦]]終結による[[軍隊]]の量的削減と、情報通信技術の劇的向上によるもので、[[データリンク]]、[[全地球測位装置]]、精密誘導兵器、高い機動性を持つ部隊などの諸要素によって成される。~
その結果として起きるのは、警戒・通信・指揮・攻撃が高度に統合された次世代の「[[電撃戦]]」であり、これらによって戦闘の様相が以前と全く違うものになる。~
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こうした概念は1990年代以降の[[湾岸戦争]]やコソボ紛争、イラク戦争において実証され、アメリカと敵対する国家はほぼ初期の段階で軍隊としての統制を乱された。~
戦闘部隊自体はほぼ無傷であったが、もはや組織的な抵抗は不可能な状態であり、それでも抗戦した部隊はその後の戦闘で多大な損害を出した。~
そしてこれらの戦争では軍隊を完全に撃滅することなく政権崩壊もしくは終戦を迎えている。~
具体的に引き起こされる変化は以下のようなものになる。
-勝利のための基本的軍事行動
--軍事革命以前:兵員・装備の物理的な破壊(消耗戦)
--軍事革命以後:[[指揮統制>C3I]]システムを破壊し、兵員・装備を無力化(麻痺戦)
-開戦直後の[[展開]]
--軍事革命以前:前線の即応部隊が時間を稼ぎつつ情報を収集し、さらなる指示と増援を待つ
--軍事革命以後:情報優勢と高速大容量の[[データリンク]]による「指示を待たない」迅速な指揮と[[展開]]
-作戦運用における中核
--軍事革命以前:[[主力戦車]]、[[戦闘機]]などに代表される地域制圧のための戦力、および奇襲に対応するための護衛能力
--軍事革命以後:[[スパイ]]、[[特殊部隊>特殊部隊(軍事)]]、[[サイバーアタック>サイバーテロ]]など、占領以前にも活動できる諜報・破壊工作員

こうした概念は1990年代以降の[[湾岸戦争]]や[[コソボ紛争]]、[[イラク戦争]]において実証された。~
アメリカと敵対した軍隊は戦争の初期段階で[[指揮統制>C3I]]を乱され、大多数の[[部隊]]が無傷であったにも関わらず戦況を把握できず立ち往生を余儀なくされた。~
その後は抗戦を強行した[[部隊]]との散発的な遭遇戦に終始し、軍隊を撃滅することなく終戦を迎えている。~
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現代軍隊にとって最重要課題であるが、実現できたのは[[アメリカ軍]]のみ。~
現代の軍隊にとって最重要課題である事は間違いないが、現在の所この思想を実現できたのは[[アメリカ軍]]のみ。~
このため、現在の情報軍事技術が各国の常識となった後の戦争については十分な予測・研究が成されていない。~
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関連:[[トランスフォーメーション]] [[非対称戦争]]

関連:[[トランスフォーメーション]] 非対称戦


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