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*&ruby(ぐんじけいんずしゅぎ){【軍事ケインズ主義】}; [#z4ed746e]
国家が国土防衛よりも「経済政策の一環として」軍拡を行おうとする考え方のこと。~
もともとは経済学の用語である「ケインズ理論((英国の経済学者・ケインズ氏の提唱した理論で、経済に政府が介入することを是とする))」から派生した言葉である。~
実務的な[[開戦事由]]を念頭に置かず、軍需産業による利権を目的として[[軍事]]政策を執り行う事。~
英国の経済学者ジョン・メイナード・ケインズの唱えた理論(ケインズ経済学)を論拠とする事が多い。~
~
[[軍事]]政策は、どの国でも政府の専管事項とされていることから、[[軍隊]]の維持・運営は政府・議会が決定する国家予算の範囲内で行われる。~
このことから、平時に国家予算に占める軍事費の比率を高め、軍拡政策を採ることで以下のような経済効果が発生することになる。~
-兵器をはじめとする軍需関連諸企業への発注が増やされることで、企業の設備投資や労働者の雇用を生み、それが購買力の増大に繋がることで結果的に消費が上向きになる。
-経済的理由などで十分な教育・技能を身につけられず、就職が困難になっていた成年国民が[[徴兵>徴兵制]]や志願入隊などの形で軍隊へ入ることで雇用負担が軽減される。
-軍需産業で開発された技術が民需へ移転して技術力の向上が期待される。
前提として、「誰かが労働するためには、誰かが賃金を支払う必要がある」と考える。~
国家経済に置き換えれば、国民が消費(支払い)をしなければ生産は滞り、経済は萎縮し衰える。~
これを防いで健全な国家経済を維持するため、必要に応じて国が公共事業を行い賃金を支払うべきである。~
――というのが、ケインズ主義者の基本的見解である。~
~
軍事ケインズ主義は、上記の前提において「行うべき公共事業」として「[[軍事]]」を選択する。~
なぜ軍事なのか、という点については、おおむね以下のように主張される。

-予算が許す限り無尽蔵に消費を誘引でき、「全て作ったからもう要らない」などという事は起こりえない
-[[軍事]]は政府の専管事項であるから、他の産業より国家政策をダイレクトに反映させられる
-多様な最新科学技術を要求されるため、要求に応えるために国内の科学技術が進歩する
-貧困層の若者が[[徴兵>徴兵制]]や志願の形で軍に入ることで、国費による効率的な職業訓練を施せる
-必要とあらば他国からの略奪によって資金難を物理的に解決できる

しかしその反面、以下のような反論もある。~
-軍需企業が軍や政府の高官と結託して「軍産官複合体」を形成し、国家全体の政策決定に影響を及ぼすこともある。((2007年に日本の[[防衛省]]で発覚した一連の汚職事件や1980年代にアメリカで発覚した[[イランゲート事件]]など))
-軍需産業の発展は必ずしも民間企業の生産性・技術力の向上に繋がるとは限らない(むしろ民需メーカーの製品の方が高性能なケースも多々ある)
-近年は[[軍事革命]]の進展によって軍組織そのものが少数精鋭化しているため、軍隊の雇用促進効果も薄まっている。((現在の[[自衛隊]]でも「最初の2年は教育期間。その次の2年は『居ても邪魔にならない』」といわれているように、どの国の軍隊でも兵員の養成に膨大な時間とコストがかかるようになっている))
-ひとたび戦争状態に突入すれば(特に[[国家総力戦]]のような状況になると)多くの人材と国富が失われる。
-「その目的で」行われる軍拡政策を遂行するための費用は、主に増税や赤字国債の発行でまかなわれるため、逆に国民経済を冷え込ませることにもなる。
-軍需産業が国家経済に比して巨大になりすぎ、政治的影響力を持ちすぎる
-多くの軍事機密を抱える事で特許などの運用が阻害され、科学技術の発展を妨げる
-軍拡競争それ自体が戦争を誘発し、戦費や戦災によって国家経済を衰退させる危険性がある
-[[平和主義]]的プロパガンダによる他国への[[浸透]]・[[スパイ]]活動・民意操作が困難になる
-不要な軍事予算が山ほど計上され、教育・医療・福祉・開発など「必要な」国家事業まで圧迫するようになる


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