【軍事ケインズ主義】(ぐんじけいんずしゅぎ)

実務的な開戦事由を念頭に置かず、軍需産業による利権を目的として軍事政策を執り行う事。
英国の経済学者ジョン・メイナード・ケインズの唱えた理論(ケインズ経済学)を論拠とする事が多い。

前提として、「誰かが労働するためには、誰かが賃金を支払う必要がある」と考える。
国家経済に置き換えれば、国民が消費(支払い)をしなければ生産は滞り、経済は萎縮し衰える。
これを防いで健全な国家経済を維持するため、必要に応じて国が公共事業を行い賃金を支払うべきである。
―――というのが、ケインズ主義者の基本的見解である。

軍事ケインズ主義は、上記の前提において「行うべき公共事業」として「軍事」を選択する。
なぜ軍事なのか、という点については、おおむね以下のように主張される。

  • 予算が許す限り無尽蔵に消費を誘引でき、「全て作ったからもう要らない」などという事は起こりえない
  • 軍事は政府の専管事項であるから、他の産業より国家政策をダイレクトに反映させられる
  • 多様な最新科学技術を要求されるため、要求に答えるために国内の科学技術が進歩する
  • 貧困層の若者が徴兵や志願の形で軍に入ることで、国費による効率的な職業訓練を施せる
  • 必要とあらば他国からの略奪によって資金難を物理的に解決できる

しかしその反面、以下のような反論もある。

  • 軍需産業が国家経済に比して巨大になりすぎ、政治的影響力を持ちすぎる
  • 多くの軍事機密を抱える事で特許などの運用が阻害され、科学技術の発展を妨げる
  • 軍拡競争それ自体が戦争を誘発し、戦争での被害が国家経済に破滅的ダメージを与える危険性がある
  • 平和主義的プロパガンダによる他国への浸透スパイ活動・民意操作が困難になる
  • 不要な軍事予算が山ほど計上され、教育・医療・福祉・開発など「必要な」国家事業まで圧迫するようになる

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