【軍楽隊】(ぐんがくたい)

Military Band.
軍隊の組織のひとつで、音楽(楽器の演奏・作曲など)のスキルを持つ将兵によって構成された組織・部隊。
野外で演奏され、大きな音量が必要とされるため、管楽器と打楽器による「吹奏楽」の形態をとることが多い。

中世までの戦争では、歩兵部隊による密集戦法が取られることが多かったが、この際には、隊形の構築・転換、移動の開始・停止といった命令を末端の兵士にまで浸透させるため、「信号」としての大きな音が必要とされた。
また、会戦の際には密集隊形を保ったまま敵に突入することになるが、この時に、兵士の誰かが恐怖に駆られて敵前逃亡するようなことがあっては陣形が崩壊して戦闘にならなくなるため、勇壮なBGMを演奏することで士気を維持することも必要とされた。
こうした理由から、軍楽隊の構成は大きな音の出る管楽器や打楽器を中心として構築され、歩兵や砲兵・騎兵といった正面戦闘部隊に随行して戦闘に参加していた。

しかし近世以後、火器の発達によって陸戦が散兵戦主体になると、後方における将兵の慰安や士気高揚、または儀礼のための演奏や有事における後方支援部隊の補助要員*1といった支援任務が主体となっていった。

このため現在では、軍隊の中にジャズやロックのバンドが編成されることもあるという。

また、戦時・平時を問わず活動できる組織であるため、民間人による管打楽器編成の楽団を組織するモデルにもなっており、軍を退役した軍楽隊員が(民間楽団の演奏家や指揮者・作曲家など)音楽家へ転身することも多い。

英国では「ミリタリー・バンド」の言葉を、民間人によって編成された楽団に対しても用いることがある。
これは、英国において労働者階級の人々に広まった「金管バンド(ブラスバンド)」と区別するため、といわれている。

自衛隊音楽隊

現在の自衛隊では、軍楽隊に相当する組織を「音楽隊」、軍楽科に相当する職種職域を「音楽科」として、それぞれに部隊を編成している。
以下にその概要を示す。

  • 陸上自衛隊
    • 中央音楽隊(埼玉県・朝霞駐屯地)
      国賓に対する栄誉礼での奏楽の他、中央競馬の一部G1レース(日本ダービー・ジャパンカップなど)での発走前のファンファーレの演奏なども行っている。
      また、音楽科隊員に対する特技教育も受け持っている。
    • 北部方面音楽隊(北海道・真駒内駐屯地)
    • 東北方面音楽隊(宮城県・仙台駐屯地)
    • 東部方面音楽隊(埼玉県・朝霞駐屯地)
    • 中部方面音楽隊(兵庫県・伊丹駐屯地)
    • 西部方面音楽隊(熊本県・健軍駐屯地)
    • 師団・旅団・混成団音楽隊
  • 海上自衛隊
    • 東京音楽隊(東京都・上用賀基地)
    • 横須賀音楽隊
    • 呉音楽隊
    • 佐世保音楽隊
    • 大湊音楽隊
    • 舞鶴音楽隊
  • 航空自衛隊
    • 航空中央音楽隊(東京都・立川基地)
    • 北部航空音楽隊(青森県・三沢基地)
    • 中部航空音楽隊(静岡県・浜松基地)
    • 西部航空音楽隊(福岡県・春日基地)
    • 南西航空音楽隊(沖縄県・那覇基地)

また、これら専門の音楽隊以外にも、基地や駐屯地に勤務する隊員の部活動として音楽部や太鼓部が作られていることもある。


*1 自衛隊では、有事に音楽科隊員は警務隊の補助をすることになっている

トップ 新規 一覧 単語検索 最終更新ヘルプ   最終更新のRSS