【空冷エンジン】(くうれいえんじん)

内燃機関の分類のひとつ。
レシプロエンジンロータリーエンジンのうち、外気との熱交換で冷却を行うもの。

表面積の大きなヒレ状の放熱板を燃焼室の周囲に取り付け、これに外気を当てる事で冷却を行う。
単純に外気にさらすだけの「自然冷却式」と、送風機で外気を送り込む「強制冷却式」等に種別される。

構造が液冷エンジンと比較して単純で整備しやすく、故障や損傷にも強い。
反面、放熱関連の部分に大きな体積が要求されるため、出力の大きいものは許容しがたいほど巨大化する事がある。
また、大気の状態に影響を受けやすく、特に熱帯気候での使用に適さない。
機構の一部が外気に露出しているため排気・騒音などの遮蔽が困難で、「環境問題」が顕在化して時代にはこれも設計上の欠点となった。

関連:液冷エンジン ガスタービン ジェットエンジン

需要

特性上、出力が低い小型エンジンにおいて有利であり、小型二輪車や徒手携行用(伐採など)の内燃機関としては現代でも主流。

自動車用エンジンとして長らく主流だったが、排気・騒音に関する法規制によって出荷不能となる事例が相次ぎ、2000年以降はほぼ全ての需要を喪っている。
時代を経るごとにエンジンの高出力化と液冷エンジンの技術的成熟が進んだため、1970年代にはもはや"原始的"な空冷式を採用する利点は薄れつつあった。
「停車中に稼働させ続けると過熱の恐れがある」「排気が混入するため廃熱を暖房に転用できない」といった空冷エンジン特有の欠点があった事も否めない。

航空機エンジンとしても広く普及していたが、当初から液冷エンジンと比較され、液冷式では問題が生じるための消極的理由で空冷式を採用した事例が多い。
例えば戦前の日本では工業基盤の未熟さから液冷エンジンの製造が困難であったし、同時代のアメリカ製軍用機は輸出や長征による整備不良を見越して空冷式を採用していた。
いずれにせよジェットエンジンの登場によって航空用空冷エンジンの需要は絶たれ、現在では超軽量動力機にわずかな残滓を留めるのみとなっている。


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