【金の壁】(かねのかべ)

技術的には実現可能だが、実際に行うと開発費・生産費・維持費を捻出できずに破綻するプロジェクトを指す比喩表現。
元は超音速航空機の開発計画に関する揶揄で、音の壁熱の壁を突破した先に待つ「最後の壁」とされている。

この他「配備するのが遅すぎて成果が無意味になる『時間の壁』」「法制上の欠陥や政治的都合によってプロジェクトが暗礁に乗り上げる『バカの壁』」などもあるにはあるが、これらは常に問題になるわけではない。

技術史は常に金の壁との戦いであったが、ことさら20世紀後半以降は兵器開発・配備のコストが高騰の一途を辿っている。
科学技術上の問題ではないため、一般的な科学者・技術者の立場では検知できない。
このため、量産・実用段階に入った後、経済面で問題が起きてから初めて存在に気付く事も少なくない。
そしてほとんどの場合、発覚後に行える現実的な対策はプロジェクトの縮小・凍結のみである。

関連:音の壁 熱の壁 コンコルド コンコルド症候群 商用オフザシェルフ

金の壁が問題となったプロジェクトの一例

航空軍事にかかる開発分野で、金の壁が重要な問題となったプロジェクトの一例を挙げる。


*1 徹底したステルス性と当時の最新鋭技術をふんだんに盛り込んだ結果「同重量の金塊よりも高い」「ギネスブックにも載っている世界一高価な航空機」とも揶揄された。
*2 プロジェクト自体は紆余曲折の末、米ボーイング社との共同開発機・B767及びB777として実現している。
*3 機体の開発に商用オフザシェルフを取り入れたにもかかわらずコスト高騰が止まらず、結局不採用となった。
*4 1,900以上に及ぶ要求項目が盛り込まれた結果、ユニットコストがVC-25Aをも上回ってしまい、不採用となった。
*5 「機体重量の90%以上が再利用可能」とされていたが、実際の運用では予想以上の経費がかかり、従来の「使い捨て式」宇宙船のほうが効率的になってしまった。
*6 駆逐艦でありながら、往時の前ド級戦艦にも匹敵する排水量を誇ったが、3隻で建造が打ち切られた。
*7 2020年、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的流行による航空需要の大幅な減退により商品化が困難とされ、計画が凍結された。
*8 日本以外に韓国・台湾・オーストラリアが導入を検討したが、1990年代末の「アジア通貨危機」によりいずれの国でも導入が見送られた(元々、同目的で使用されるE-3(こちらはB707がベース)よりもコスト高であった)。
*9 E-3CE-8RC-135(いずれもB707及びKC-135をベースとしている)の後継として開発されたが、国防予算の縮小により開発が凍結された。

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