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*&ruby(きんせつしんかん){【近接信管】}; [#p937f783]
砲弾等が目標に命中しなくても、最接近時に起爆する事でダメージを与える事を目的とした信管。~
Proximity fuze / Variable-Time fuze(俗)~
~
**概念 [#g901bd5a]
近接信管の概念は1930年頃には既にいくつか提案されており、ドイツでは既に開発も始まっていたといわれているが、アメリカではあまりにも複雑すぎるとしてほとんど省みられることがなかった。~
これに関する特許も多数申請されていたが、概念のみで実用化へのアイデアが含まれていなかったことも関心を集めにくかった原因とされている。~
しかし、1940年代に入り[[第二次世界大戦]]が激化するに伴い、[[航空機]]の進化に[[高射砲]]の性能が追いついていけないことが明らかになった。~
日々高速化して行く[[航空機]]に対し、従来の[[時限信管]]や着発信管では、もはやこれらを捉えることが困難となっていた。~

**開発に至る経緯 [#ya86f397]
アメリカでようやく近接信管の開発がはじめられた頃、イギリスでは[[ロケット弾]]や[[爆弾]]用の近接信管が既に実用化されていた。~
しかし、20,000[[G]]もの[[加速度>G]]が加わる砲弾には応用できないとされ、それ以上の研究は進んでいなかった。~
目標や障害物との距離を検知し、加害範囲内にそれを捉えた時起爆するよう設定された信管。~
[[高射砲]]、[[ミサイル]]、[[榴弾砲]]など、命中精度が不十分で直撃弾を見込めない場合に用いられる。~
~
[[航空機]]の進化による脅威を最も多く受けたのは[[海軍]]である。~
それまで、[[航空機]]による対艦攻撃など取るに足りないと思われていたが、わずか数年で[[航空機]]の進化は[[艦艇]]の天敵となるまでに深刻さを増していた。((その最たる例が、日本海軍による[[真珠湾攻撃]]とマレー沖海戦であった。))~
そのため[[アメリカ海軍]]は、主要対空火器であった5インチ砲に用いる近接信管の開発に非常に強い興味を示した。(後にイギリス海軍も開発に加わることとなった)~
初期段階の研究では電気式、音響式、光学式、電波式などの様々な形式が取り上げられ、最終的には信頼性と生産性の面から光学式と電波式に絞って研究が進められた。~
そして実用化には光学式の方が容易と判断されたため、まずは光学式の開発に重点がおかれた。~
光学式は夜間や悪天候に弱いという弱点も認識されていたため、光学式の開発が終了すると、続いて電波式の開発に全力が注がれた。~
電波式と言っても更に様々な形式に細分化することができたが、[[ドップラーレーダー]]を利用した方法が最も有効であると評価された。~

**実用化 [#lbfe26d8]
砲弾が撃ち出されると、信管が作動し電波を発生させる。~
信管は目標に反射された電波を自身で受信する。~
砲弾が目標に近づいている間はドップラー現象により波長が小さく(高周波に)なるが、逆に遠ざかるようになると波長が大きく(低周波に)なる。~
すなわち、受信する電波の波長が高周波から低周波に変化する瞬間がその砲弾が目標に最も接近した瞬間である。~
電波式近接信管は、この低周波を捉えることにより起爆し、最も近くの目標に対し最も近くで砲弾を炸裂させることを可能とするものである。~
物体の存在だけがわかる簡易的な[[レーダー]]を搭載し、[[電波>電磁波]]を放射して測距を行う。~
近年ではより高精度で検知されにくい[[レーザー]]を用いて測距するものが主流となっている。~
~
開発は困難を極めた。最初に開発されたMark.32は大きすぎるだけでなく大量生産するには向いていなかった。~
しかし、のべ1000人もの研究者が精密機器とも言うべきこの信管の開発に携わり、1941年9月までに世界で初めて信頼性と生産性を備えた電波式近接信管(いわゆるVT信管)の開発に成功した。~
直接命中せずとも至近で砲弾を炸裂させるこの画期的な信管により、撃墜率は3倍になった。~

**その後の進化 [#sec98d2e]
この電波式近接信管は、最高軍事機密として保護されその後も改良が続けられた。~
電波を斜め前方に発することで、起爆時のタイムラグを克服したり[[ロケット弾]]や[[ミサイル]]、[[野砲]]などにも応用された。~
また、逆に自らが敵の電波式近接信管の脅威に晒された場合を想定して、これを妨害する方法も研究された。~
近年では、電波式に替わってより精度の高い[[レーザー]]式の近接信管が開発され、各種の対空ミサイルで採用されている。~
概念研究そのものは1930年代にはすでに始まっていたが、当時はまだ実用化困難とされ注目されていなかった。~
しかし[[第二次世界大戦]]において、命中精度の低かった当時の[[高射砲]]を補強する目的で大々的に研究が行われた。~
いち早く開発に成功したのは[[アメリカ海軍]]で、1943年1月に最初の[[撃墜]]戦果が確認されている。~
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とはいえ、同時代にはすでに[[防勢対航空作戦]]の警戒網が整っており、[[高射砲]]は対空戦闘の主役ではなかった。~
近接信管が兵器としての本領を発揮したのは[[第二次世界大戦]]終結後、[[ミサイル]]・[[誘導爆弾]]の出現以降である。~
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現代戦では[[空爆]]・[[間接砲撃]]の危害半径を拡大させる[[曳下射撃]]に用いられるのが一般的。~
また、航空戦においても[[地対空>地対空ミサイル]]・[[空対空>空対空ミサイル]][[ミサイル]]を近接信管で起爆させている。~
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関連:[[マリアナの七面鳥撃ち]]

**測距の原理 [#zfd911f2]
近接信管の測距は、[[電磁波]]の[[ドップラー効果]]を基にした原理を用いている。~
距離が次第に近づいている状態だと、跳ね返ってきた電波は元より波長が短い高周波である。~
一方、距離が次第に遠ざかっている状態では、跳ね返ってきた電波は元より波長が長い低周波である。~
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したがって、測定電波が高周波から低周波に切り替わった瞬間に起爆すれば良い、という事になる。~
または数学的推定により、一定距離まで近づいた事が確認された時点で起爆するよう設定される事もある。


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