【玉砕】(ぎょくさい)

太平洋戦争当時の日本において、部隊の全滅を意味する言葉。
「全滅」という負の意味を持つ言葉をそのまま用いては、兵士や国民の士気に関わるため、「玉=天皇陛下のために砕け散る」と言う美称に言い換えたものである。

当初「部隊がその地での作戦任務を終え、命令により別の地点へ移動した」こととして「転進」という言葉が使われていたが、連合国軍の反攻が本格化して、戦線の全域で後退を余儀なくされるにつれて、こちらの言葉の方が使用されるようになった。


一般的に、戦況が思わしくなく撤退も難しいという場合、部隊指揮官が降伏を決断し、正規の手続きに則って行動すれば、(一応は)ハーグ陸戦条約ジュネーブ条約などの戦時国際法に則った捕虜としての取り扱いを受けることができる。
しかし、当時の日本軍においては「生きて虜囚の辱めを受けず」と説かれた「戦陣訓」などの影響により、他国の軍隊に比して「降伏」という行為への心理的拒否感が強く*1、それゆえに「部隊が全滅するまで戦い続けること」が「善」とされてきた。
この言葉は、そうした心理的背景から生まれてきた言葉と見られている。

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*1 そもそも「降伏」という行為には敵に屈する精神的苦痛が伴うものであり、また、捕虜になった後、(敵兵による拷問や強制労働など)どんな恐ろしい目に遭わされるか判らない、という強い不安感もある。

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