【旗艦】(きかん/はたぶね)

Flagship.

艦隊の指揮官(と幕僚)が乗り込んで指揮を執る艦艇

帆船の時代、艦隊司令官が乗艦のマストに信号旗を掲げて指示を送っていた事を語源とする。
その性質上、敵から集中攻撃を受けやすく、伝統的に「艦隊で最強の艦」が選ばれる事が多かった*1
また、多数の参謀と各種資料・器具がペイロードを大きく圧迫するため、小型艦では任を果たせなかった*2
大艦巨砲主義が衰退を迎える以前、主力艦隊の旗艦には戦艦をもって充てるのが海軍の常識であった。

しかし、無線通信機器が投入された第二次世界大戦以降の戦訓により、この状況は変化した。
戦艦という艦種が過去のものとなったのに合わせ、旗艦は戦闘能力を度外視してC4Iに特化されるようになった。
また、無線越しの情報だけで十全に指揮を執る事が可能になったため、交戦海域に進出する事も希になり、海軍の象徴的な存在として扱われるようにもなっていった。

そして現代では、指揮統制機能をすべて地上施設に移し、旗艦を置かなくなった海軍艦隊もある*3

軍事史全体を通じて「将軍が最前線に赴く」のはほぼ常に愚策とされる。
戦死すれば混乱によってC3Iが麻痺し、戦線に甚大な衝撃を与える事になるからだ。
指揮官が自ら戦場に赴く必要があるのは、そこに居なければ指揮が不可能である場合のみに限られる。
情報技術が発達した現代、「旗艦」の存在意義は完全に消えたか、残っていても希少なものであろう。

関連:ブルー・リッジ 三笠 大和(超ド級戦艦) あきづき(海上自衛隊・初代) 長門 大淀(軽巡洋艦) 香取(練習巡洋艦)


*1 余談だが、現代ではここから転じて「ある集団やグループの中で(ステータスや戦略的重要性から)最も重要な位置づけにあるもの」を指す言葉としても用いられている。
*2 そのため、駆逐艦で構成される水雷戦隊では居住施設を拡張した「嚮導駆逐艦」が充てられていた時代もあった。
*3 一例として、海上自衛隊では自衛艦隊・護衛艦隊にあった「旗艦」制度を現在廃止しており、陸上基地から統率を行っている。
  ただし、護衛艦隊隷下の各護衛隊群には「旗艦」とされる艦がある。


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