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*&ruby(きせいせんとうき){【寄生戦闘機】}; [#j58a14c6]

Parasite fighter.~
かつて構想されていた[[戦闘機]]の一バリエーション。~
大型の[[航空機]]([[爆撃機]]・[[輸送機]]・飛行船など)に搭載され、([[航空母艦]]の[[艦載機]]のように)敵地上空で分離して母機の護衛に当たることを目指した機体。~
~
1950年代に[[空中給油]]が実用化されるまでは「[[爆撃機編隊>コンバットボックス]]に有効な護衛戦力を提供する手段((当時の機体はおしなべて[[エンジン]]出力が非力で、戦闘機として必要な俊敏さと[[航続距離]]とが[[トレードオフ]]の関係にあった(この関係は現代でも基本的に変わらないが)。))」として何度か考案され、実戦投入された機体も少数あったが、以下のような問題点があったことから、[[空中給油]]の実用化に伴って廃れていった。~
かつて構想されていた[[戦闘機]]の運用形態。~
[[爆撃機]]・[[輸送機]]・[[飛行船]]などの大型機に[[戦闘機]]を搭載し、[[哨戒>戦闘空中哨戒]]時のみ分離して護衛を行うもの。~
~
-鈍重な母機([[爆撃機]]・[[輸送機]]・飛行船など)に重量のある子機([[戦闘機]])を搭載すると、機動力が大きく低下する((その例として([[戦闘機]]ではないが)[[桜花]]を搭載した[[一式陸攻>一式陸上攻撃機]]や[[ミステル]]などがあげられる。))。~
そのため、[[航空優勢]]のない空域では敵の格好の的になる恐れが強かった。
-子機の重量や大きさに制限が厳しく、[[戦闘機]]として必要な機動性や[[武器の搭載量>ペイロード]]にも影響する((アメリが開発した[[XF-85「ゴブリン」>XF-85]]がこれにあたる。&br;  同機は「B-36の[[爆弾倉>ウェポンベイ]]に入る大きさ」にしなければならなかったため機体が非常に小型になり、同時に戦闘機として必要な機動性も奪われてしまった。))。
-子機を操縦する[[パイロット]]には、通常の機体よりも高い操縦技量が必要であった。~
実験では腕利きのテストパイロットが操縦するので、母機からの分離や再接続が成功する例もあったが、実戦部隊では個々のパイロットの技量に差があるため確実性に乏しかった。~
[[戦闘機]]の[[航続距離]]を伸ばす方法の一案として研究されていた。~
この運用思想の多くは黙殺・却下されたが、1950年代には[[空中給油]]として結実する事となる。

**解決できなかった技術的課題 [#n73fb7ee]
そもそも寄生戦闘機が考案されたのは、当時の[[戦闘機]]が[[航続距離]]に劣っていたためである。~
速度と燃費は常に[[トレードオフ]]の関係であるため、敵に追いつく優速を持つ[[戦闘機]]は常に持続力に劣る。~
一方で[[航続力>航続距離]]を得るには[[燃料]]を多く搭載せねばならず、速度が犠牲になってしまう。~
この矛盾は、[[戦闘機]]が最も必要とされる局面である[[攻勢対航空作戦]]において非常に重大な問題であった。~
~
この矛盾を解決するための一策として、「空中に[[航空母艦]]を置く」という発想から生まれたのが寄生戦闘機であった。~
しかし、この発想にはいくつかの根本的な問題点があった。~

:[[搭載母機>プラットフォーム]]への負担|大型[[航空機]]の[[ペイロード]]の使い道として「戦闘機一機を丸ごと搭載する」のは通常、あまり合理的ではない。~
戦闘機を載せられる余裕があるなら、同じ重量分の対空兵装を母機に設置する方が生存性が高まるだろう。~
あるいは重量を空けて機体の[[運動性]]を高めた方が良いかもしれない。
:戦闘機の重量|[[戦闘機]]の性能は、その重量と不可分な関係にある。~
一般に軽い方が有利とされる[[速度]]でさえ、[[運動性]]を支える頑強な構造なくしては実現できない。~
寄生戦闘機は母機に対応するための重量制限があるため、通常の戦闘機に比べて性能劣位を避けられなかった。~
:操縦難易度|「空中で母機から分離して発進し、事後に空中で母機に再接続される」という動作は極めて困難である。~
熟練の[[操縦士>エビエーター]]でも衝突事故のリスクは回避しきれず、衝突事故による[[墜落]]のリスクは決して低くなかった。~
また、この独特な操作を習得するには長期の機種転換訓練を必要とし、[[再編成]]はより困難なものになった。

こうした技術的問題を解決することができず、[[空中給油]]の実用化に伴って寄生戦闘機は廃れることになった。


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