【寄生戦闘機】(きせいせんとうき)

Parasite fighter.
かつて構想されていた戦闘機の運用形態。
大型の航空機(爆撃機輸送機・飛行船など)に戦闘機を搭載し、哨戒が必要な場合にのみ分離して護衛を務める、というものである。

戦闘機航続距離を伸ばす方法の一案として研究されていた。
この運用思想の多くは黙殺・却下されたが、1950年代には空中給油として結実する事となる。

解決できなかった技術的課題

そもそも寄生戦闘機が考案されたのは、当時の戦闘機航続距離に劣っていたためである。
速度と燃費は常にトレードオフの関係であるため、敵に追いつく優速を持つ戦闘機は常に持続力に劣る。
一方で航続力を得るには燃料を多く搭載せねばならず、速度が犠牲になってしまう。
こうした矛盾を放置していては、戦闘機本来の役割である「攻勢対航空作戦で敵機を迎撃・撃破する」役割を果たせないことになる。

この矛盾を解決するための一策として「(航空母艦艦上機の関係のように)より巨大な航空機に搭載することで、燃料消費を節約しつつ空戦力を得る」という発想から生まれたのが寄生戦闘機であった。
しかし、この発想にはいくつかの根本的な問題点があった。

  • 搭載母機への負担
    大型航空機のペイロードの使い道として「戦闘機一機を丸ごと搭載する」のは通常、あまり合理的ではない。
    戦闘機一機を載せられる余裕があるなら、同じ重量分の対空装備を母機に設置する方が生存性が高まるだろう。
    あるいは重量を空けて機体の運動性を高めた方が良いかもしれない。
  • 戦闘機の性能と重量との関係
    戦闘機の性能は、その重量と不可分な関係にある。
    一般に軽い方が有利とされる速度でさえ、運動性を支える頑強な構造なくしては実現できない。
    寄生戦闘機は母機に対応するための重量制限があるため、通常の戦闘機に比べて性能面で劣悪になる事を避けられなかった。
  • 操縦の難しさ
    「空中で母機から分離して発進し、事後に空中で母機に再接続される」という動作は、操縦士に極めて高い技量が必要とされる操作であり、そのまま衝突事故を起こして母機・子機ともに墜落するリスクは決して低くなかった。
    また、この独特な操作を習得するには長期の機種転換訓練を必要とし、再編成はより困難なものになった。

こうした技術的問題を解決することができず、空中給油の実用化に伴って寄生戦闘機は廃れることになった。


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