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【核兵器】 †
Nuclear Weapon.
特殊相対性理論の「E=mc^2(エネルギーは光速の二乗×質量に等しい)」の法則を元に、物質の質量が欠損するような反応を引き起こす事で質量を膨大なエネルギーに転換、それによって生成される強烈な光、電磁波、熱線、衝撃波によって周囲数キロ〜十数キロ以上に渡る被害を及ぼす兵器。
付随する副次効果として、現状の核兵器が利用する放射性物質による放射線被曝が何年にも渡って周辺環境を汚染する。
ウランやプルトニウムなどが起こす核融合反応を利用する水素爆弾、核分裂反応を利用する原子爆弾が知られている。
水素爆弾は主に相互確証破壊戦略の中核を担う戦略核兵器として配備され、原子爆弾はやや威力に劣るため多くは戦術核兵器として配備される。
第七の軍事革命 †
現在、人類の持つ科学力では核兵器を超える破壊力を持つ兵器を作ることが出来ないため、核兵器は事実上最強の軍事力と言える。
そのため、核兵器の出現は第七の軍事革命と呼べる出来事となり、これらを保有・運用する国家は軍事的・外交的に大きなアドバンテージを得ることになった。
核兵器は、敵国の都市に向けて使用すれば一発で都市を消滅させ、野戦で使用すれば数個師団の兵力をまとめて葬り去ることができる強大な破壊力を軍隊に与えることになったが、逆にこれを敵に使用されると、国家の存亡にも直結する甚大な被害が生じてしまう。
そのため、保有国同士が互いに他の保有国の国家中枢に戦略核兵器を命中させられる態勢が整うと、そのことによって核兵器を使用できない状態(相互確証破壊)が現出し、結果的に核兵器保有国同士の国家総力戦を防ぐ抑止力として機能することになってしまった。
その一方で、核兵器保有国は非保有国に対して砲艦外交を行うことが可能となり、外交交渉を自国有利に進めるためのカードとしての役割も与えられた。
そしてまた、このことは
「核兵器を保有しさえすれば、小国が圧倒的な大国を相手にことを構えても国家総力戦に持ち込まれずに済む」
という認識になり、核兵器保有国との間に外交的な問題を抱えていて、「国家安全保障」の観点から核兵器の所有を望む国も現れることになった。
(軍事史的な観点から)核兵器がもたらしたもう一つの副次的な要素として、近代軍事思想の主流であった国家総力戦思想が退潮する契機となったことがあげられるだろう。
前述のように、核兵器はきわめて短時間のうちに万単位の人間を殺傷する強大な破壊力を持っているため、それが使用されずとも、戦争が短時日で決着するようになった*1。
そのため、年単位で戦闘状態が続き、兵員が漸次消耗していく人海戦術を前提とした国民皆兵制の必要性・必然性が薄まっていき、個人の自由意志による志願兵制への転換が進められていくことになった*2。
*1 国家指導部が理性的であるならば、交戦相手側に核兵器の存在がちらつけば講和を考えるであろう。
*2 この流れは、1990年代以後の冷戦終結と湾岸戦争での多国籍軍の戦いぶりによって全世界的なトレンドになった。