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*&ruby(かくへいき){【核兵器】}; [#dbb1e9e8]
Nuclear Weapon.~
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特殊相対性理論の「E=mc^2(エネルギーは光速の二乗×質量に等しい)」の法則を原理とする兵器。~
[[核分裂]]・[[核融合]]など、物質の質量が欠損するような反応を引き起こす事で膨大なエネルギーを発生させ、大破壊を引き起こす。~
[[核分裂]]・[[核融合]]など、物質の質量が欠損する反応を引き起こす事で膨大なエネルギーを発生させ、大破壊を引き起こす。~
この破壊現象は強烈な光、[[電磁波]]、[[熱線>赤外線]]、衝撃波によってもたらされる。~
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最小のものでも数百[[キロトン]]以上の破壊力を発揮し、危害半径が数Km以上に及ぶ[[大量破壊兵器]]である。~
また、原料として[[ウラン]]・[[プルトニウム]]などの[[放射性物質]]が使用されるため、爆発した地点(爆心)とその周辺では致死性の[[放射性物質]]による甚大な環境汚染が発生する。~
最小でも数百[[キロトン]]以上の破壊力を発揮し、危害半径が数km以上に及ぶ[[大量破壊兵器]]である。~
[[戦略核兵器]]に至っては地球全体の自然環境を長期的に破壊し、[[核の冬]]と呼ばれる生物の大絶滅を引き起こし得る。~
また、原料として[[ウラン]]や[[プルトニウム]]などの[[放射性物質]]が使用されるため、[[放射能]]による甚大な環境汚染が発生する。~
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関連:[[水素爆弾]] [[原子爆弾]] [[中性子爆弾]] [[戦略核兵器]] [[戦術核兵器]]

**人類最強の軍事力、として [#t263e25e]
現時点において、核兵器は人類が生み出し得る最大の破壊力であり、人類最強の軍事力と言える。~
そのため、核兵器の出現は[[第七の軍事革命>軍事革命]]と呼べる出来事であった。~
核兵器が登場した1940年代から現代に至るまで、[[核兵器保有国]]になる事で得られる軍事的・外交的な有利は計り知れない。~
**軍事力としての意義 [#t263e25e]
核兵器は現時点で人類が生み出し得る最大の破壊力を持つ、人類最強の軍事力である。~
その威力は一撃で大都市一つ、あるいは数個[[師団]]をまとめて[[全滅]]せしめる。~
地球上でこれほどの規模の大破壊が乱発された時、これに耐えうる国家・組織は存在しない。~
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核兵器は一撃で大都市一つ、あるいは一個軍団(兵員数でいえば数万人規模)をまとめて消滅させる恐るべき破壊力を秘めている。~
しかしその反面、敵から核攻撃を受ける事は自国の滅亡へと直結するほどの被害を被る事になる。~
さらには、無差別的に使用すれば「[[核の冬]]」と呼ばれる大規模な環境破壊をも引き起こし、人類そのものの絶滅にさえ繋がりかねない。
[[核兵器保有国]]が核兵器の使用を決断した時、それを完全に阻止する事は現実的に不可能であり、そうした国を相手取っての[[国家総力戦]]は、どれほどの国力差があっても愚行である。~
戦争当時国のすべてが[[核兵器保有国]]となれば、もはや各国共に焦土になる以外の結末はあり得ない。~
従って、1950年代に[[ソ連軍]]が核兵器を保有したことにより「[[相互確証破壊]]」と呼ばれる状況が成立し、[[列強]]同士での戦争は事実上不可能になった。~
――皮肉な事であるが、核兵器はその破壊力をもって世界平和への[[抑止力]]として機能している。~

**外交政策への影響 [#e02fd985]
上記のような強大な破壊力から、[[核兵器保有国]]になる事で得られる軍事的・外交的な有利は計り知れない。~
[[核兵器保有国]]は非保有国に対して[[砲艦外交]]を行う事が可能になり、実際、当該の国々は常にそのような外交方針をとってきた。~
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そのため、1950年代にソ連が核兵器の開発に成功し、第二の[[核兵器保有国]]となった時点で[[相互確証破壊]]が成立し、結果的にどの国も核兵器を投入できなくなった。~
以降、[[核兵器保有国]]同士での[[国家総力戦]]はタブーとなり、核兵器は皮肉にも世界平和への[[抑止力]]として機能する事となった。~
そうして、先進国同士の直接対決が想定されなくなった結果、その軍事力は旧[[植民地]]や発展途上国への恫喝に振り向けられた。~
経済的発展のために[[軍事]]侵略を行うのは著しく困難になり、世界の富は一部の先進国へと集中していった。

**軍事史上の副次的意義 [#u1c466ce]
核兵器の登場は、それまでの[[軍事思想>ドクトリン]]を支配していた「[[国家総力戦]]」思想が退潮する契機となった。~
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一方で、[[核兵器保有国]]は非保有国に対して[[砲艦外交]]を行うのが常となったのも一つの事実である。~
先進国同士での直接対決が想定されなくなった結果、その軍事力を旧植民地や発展途上国への恫喝に用いる事も容易となった。~
経済的発展のために軍事侵略を行うのは著しく困難になり、世界の富は一部の先進国へと集中していった。
核兵器の破壊力は、たった一日のうちに敵の[[戦略]]と[[領土]]を根底から破壊する。~
よって、敵方が核兵器を使用した時点で、通常戦力を用いる全ての[[戦術]]は意味を持たなくなる。~
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この前提において(そしてそれでもなお戦うとして)、勝利を得る方法は二通りしかない。~
一つは「核兵器を保有していない軍事的弱者に対する[[非対称戦争]]」であり、もう一つは「核兵器を使用するほど重大な価値を持たない小規模な[[紛争]]」である。~
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いずれにしても、核兵器の使用が想定される状況下では「戦闘状態が何年も続き、兵員が漸次消耗していく」[[国家総力戦]]は起こり得なくなった。~
結果、[[人海戦術]]を前提とする[[徴兵制]]を敷く必然性は薄れていき、軍制は高度に錬成された専門家(職業軍人)を中心とする志願兵制に移っていった。~
軍事学もこれを前提として発展し、現在の高度な電子制御兵器とこれに立脚した「[[第八の軍事革命>軍事革命]]」として結実していく事となる。

***(軍事史的観点からの)副次的要素 [#g4882be8]
核兵器の登場がもたらしたもう一つの副次的な要素として、近代軍事思想の主流であった[[国家総力戦]]思想が退潮する契機のひとつとなったことがあげられるだろう。~
前述のように、核兵器はきわめて短時間のうちに万単位の人間を殺傷し、周辺の環境に長期的な影響を及ぼす強大な破壊力を持っているため、それが使用されずとも、戦争が短時日で決着するようになった((国家指導部が理性的であるならば、交戦相手側に核兵器の存在がちらつけば講和を考えるであろう。))。~
そのため、年単位で戦闘状態が続き、兵員が漸次消耗していく[[人海戦術]]を前提とした[[国民皆兵制>徴兵制]]の必要性・必然性が薄まっていき、個人の自由意志による志願兵制への転換が進められていくことになった((この流れは、1990年代以後の[[冷戦]]終結と[[湾岸戦争]]での[[多国籍軍]]の戦いぶりによって全世界的なトレンドになった。))。

**中小国への核軍拡と国際社会の対応 [#g63b7b4c]
核兵器の開発・運用には極めて高度な技術力((放射性物質の管理・純度向上や爆縮、運搬するプラットフォーム([[弾道ミサイル]]・[[戦略爆撃機]]・[[戦略潜水艦]]など)の開発・運用技術など。))が必要な上、核兵器不拡散条約において「1967年1月1日以前に核兵器その他の核爆発装置を製造し、かつ爆発させなかった」国は核兵器の保有を非合法化されたこともあって、保有・運用できる国は極めて限られていた。~
殊にアメリカとソ連は、お互いの同盟国に対する核攻撃に対しても自国へのそれと同様に[[相互確証破壊]]を適用することとしており、以って[[国家総力戦]]を発生させえない態勢を確立していた。~
核兵器を開発・運用するには、極めて高度な科学技術基盤が必要とされる。~
[[放射性物質]]の管理運用には、最新の科学を反映した厳格な体制を敷くことが必要であり、[[弾道ミサイル]]・[[戦略爆撃機]]・[[戦略潜水艦]]など、それを運搬する[[プラットフォーム]]となる兵器の運用にも技術的な成熟が必須である。~
さらに、作ってしまえば奪われる危険性を考えねばならず、保安のために必要なコストも甚大である。~
これらの事から、単純に[[兵器]]としてみた場合、核兵器は極めて[[費用対効果>コスト・パフォーマンス]]の悪い兵器である((そもそも現実的に運用不能なので効果も何もあったものではない、という点を度外視しても、ユニットコストは極めて高価になる。))。~
~
そうした状況は1980年代半ばまで続いたが、冷戦末期に起きた米ソ双方の核軍縮、そして、その後に起きた東欧諸国の民主化とソ連の崩壊による冷戦の終結に伴い、大きく変化した。~
また、「核兵器不拡散条約」により、1967年1月1日以降に核開発を開始するのは極めて危険なこと((国際的に違法であるとされた上、アメリカとソ連による徹底した[[相互確証破壊]]・[[報復]]戦略に直面する事になった。))とされ、その危険によってさらにコストは跳ね上がった。~
このため、事実上、一部の[[列強]]以外に核兵器を保有する事は不可能に近かった。~
~
この頃より~
「核さえあれば、わが国は(決して友好的とはいえない)隣国に対して優位に立てるし、(アメリカ・ロシア・中国・EU・日本などの)先進国とも軍事的・外交的に対等に渡り合える」~
として「国家安全保障」の観点から核武装を行おうとする中小国がいくつか現れた。~
>これは1990年代、ソ連崩壊後の政治的混乱にまぎれて、旧ソ連が保有・運用していた核兵器やその関連技術・資材・スタッフが相当数国外へ流出し、入手がしやすくなっていたことも影響しているとみられる。
しかし、[[冷戦]]も末期を迎える頃には技術進歩によって状況が変わってきた。~
特にソビエト連邦の崩壊以降は、中小国でも現実的に運用可能なほど核技術が成熟し((ソ連崩壊後の混乱に際し、旧ソ連の保有する核弾頭・関連技術・資材・技術者の多くが国外へ流出したとみられている。))、「国家安全保障」の観点から核武装を行おうとする中小国もいくつか出現している。~
~
そうした国々に対し、既存の[[核兵器保有国]]はおおむね苛烈な対応を取っている。~
[[放射性物質]]や[[原子炉]]・[[弾道ミサイル]]関連技術は多くの国で輸出禁止・規制の対象とされており、これらの取引に不正に関わった「[[ならず者国家]]」には、[[国連安保理>国際連合安全保障理事会]]などによる過酷な経済制裁((「当該国の政府機関・個人・法人を相手とした貿易取引や外国為替の制限・禁止」や「国外資産の凍結」、「[[海軍]]や[[海上警察機構>沿岸警備隊]]による、当該国の港へ出入りする商船の[[臨検>拿捕]]」など。))が加えられる。~
また、[[特殊作戦]]による施設の物理的破壊・技術者の[[暗殺]]や、大規模な[[紛争]]に発展した例もある。~
~
しかし、これらの対策は十分な実効性を伴っているとは言えないのが現実である。~
国家の[[諜報機関>スパイ]]が全力を挙げて密貿易を支援した場合、一発の「切り札」を組み上げることは可能だと目されている。~
実際、可能であるから[[紛争]]が勃発するまでに至ってしまったのであるし、その[[紛争]]でさえ予防措置としては十分でない。~
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近年、核軍拡の流れは止まっているとは言い難く、将来的に止まるものとも期待できない。~
特に近年、中東・東アジアの独裁国家による核の脅威が顕在化し、国際社会共通の懸念事項となっている。

そうした国々に対し、既存の[[核兵器保有国]](特にアメリカ)を筆頭とする国は次のような対応をするのが常となっている。~
-経済制裁~
核兵器やその原材料となる[[放射性物質]]、生産に用いられる[[原子炉]]や運搬手段となる[[弾道ミサイル]]・宇宙ロケットの現物、あるいは関連技術を取得させないようにするために行われる。~
具体的には~
「当該国を相手とする物資の輸出入や外国為替の制限・禁止」~
「当該国から出発、または当該国を最終目的地とする商船に対する[[海軍]]・海上警察機構による[[臨検>拿捕]]」~
「当該国に対する経済援助の打ち切り」~
「当該国の政府・法人・個人が保有する在外資産の凍結」~
などが行われる。
-「[[悪の枢軸]]」「[[ならず者国家]]」などのプロパガンダ
-[[国連安保理>国際連合安全保障理事会]]による当該国の核武装非難[[決議>国際連合安全保障理事会決議]]
-[[空爆]]や[[スパイ]]・[[特殊部隊]]による核関連施設の物理的無力化([[特殊作戦]])

しかし、これらの対応が取られるにもかかわらず、実効性が上がっているとは言えないのが現実で((物資の輸出入規制には「第三国経由」「別の物品とのバーター取引」という逃げ道があるし、金銭の流れについても、金融機関の守秘義務を悪用したり、宗教団体や慈善団体などへの寄付を名目とするなどの「マネー・ローンダリング(資金洗浄)」が起き得る。&br;  また、核関連施設の物理的な無力化策はややもすれば国際社会からの批判を浴び、新たな武力紛争の引き金となりえるリスクがある。))、未だに核軍拡の流れは止まっているとは言い難い。~
特に近年、政情の不安定な中東・東アジアの独裁国家による核の脅威が顕在化し、国際社会共通の懸念事項となっている。


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