【階級】(かいきゅう)

grade / class.

命令系統や職責などの関係から人間を等級付けし、差別する事。
誰が誰に対して何の目的で命令して良いのかという「職権」を定めるために用いられる。

人間がある階級に属する時、その階級に対して求められる責任を果たす能力があるものと期待される。
一般に階級が高いほど重大な責任能力を要求されるため、階級が高いほど労働報酬も高額になる。

実際に仕事を行う上での命令系統については、混乱を避けるために別途の規範が定められる。
例えば、階級が高いからといって陸軍将校が海軍に命令を下すのは越権行為であり、罰せられる。
しかし、想定外の状況や、単に規範が忘れ去られた場合には最も高い階級の者が仮に指揮権を得る。

というのが原則だが、実態として、不当に濫用されない職権はない。
階級差による意思疎通の阻害、心理的摩擦や「不当な差別」はどのような社会でも広汎に見られる。

軍人階級

軍隊は極めて厳密な階級組織であり、階級制度なくしては成立しない。

各国はそれぞれの事情と伝統から独特の階級制度を定めているが、国際的には以下のような分類が為されている。

将官(General/Admiral)
師団艦隊の司令官、参謀長など、一つの軍事作戦における最終責任を負える者。
その決断の是非が国際問題にまで波及する可能性があるため、閣下として外交責任を負う事もある。
佐官(Field officer)
連隊大隊の指揮官や参謀艦艇の艦長や副長、航海長・機関長など。
自ら決断して作戦を実行する事は基本的に認められない。
しかし、その行動の正否は作戦の結果や部隊の存続を決定的に左右する。
尉官(Company officer)
中隊小隊の指揮官や幕僚、航空機の操縦要員など。
高度な専門教育を必要とする職務であり、原則として士官学校を卒業しなければ就く事ができない。
実績や経験に応じて佐官や将官へと昇格する可能性がある。
准士官(Warrant officer)
正規の専門教育を受けていないが、尉官に相当するような職責を担える者。
基本的に下士官から昇格するもので、専門知識よりも現場での経験が重んじられる分野で見られる。
准士官から尉官に昇格する事は基本的にない。
下士官(Noncommissioned officer/(Chief)Petty officer)
個々の現場における兵士の監督責任者。基本的に尉官の補佐として「部下の代表」を勤める。
経験豊富な兵から抜擢されるもので、その性質上、経験の浅い尉官よりも実務能力に長ける場合も多い。
兵(Soldier/Private)
前線での直接戦闘や、兵站関連の単純労働などに従事する者。
命令と規範に従う限りにおいて責任能力は要求されず*1、責任を負えるものともみなされない。
軍事活動に伴う人的損失の大部分を占めるため、各個人の能力について長期的信頼を置く事はできない。

各軍の階級呼称

ここではアメリカ軍NATO加盟各国共通の階級コード・大日本帝国陸海軍及び自衛隊における階級のおおむねの対比を示す。

階級呼称アメリカ軍NATO階級コード大日本帝国軍陸上自衛隊海上自衛隊航空自衛隊
士官元帥OF-10元帥大将(該当なし)
将官大将OF-9大将陸将(甲)海将(甲)空将(甲)
中将OF-8中将陸将(乙)海将(乙)空将(乙)
少将OF-7少将陸将補海将補空将補
准将OF-6(該当なし)一等陸佐一等海佐一等空佐
佐官大佐OF-5大佐
中佐OF-4中佐二等陸佐二等海佐二等空佐
少佐OF-3少佐三等陸佐三等海佐三等空佐
尉官大尉OF-2大尉一等陸尉一等海尉一等空尉
中尉OF-1中尉二等陸尉二等海尉二等空尉
少尉少尉三等陸尉三等海尉三等空尉
准士官5等准尉WO-5(該当なし)
4等准尉WO-4
3等准尉WO-3
2等准尉WO-2
1等准尉WO-1
下士官最先任上級曹長OR-9准尉/兵曹長准陸尉准海尉准空尉
部隊等最先任上級曹長
上級曹長
一等曹長OR-8(該当なし)陸曹長海曹長空曹長
曹長
一等軍曹OR-7曹長/上等兵曹一等陸曹一等海曹一等空曹
二等軍曹OR-6軍曹/一等兵曹二等陸曹二等海曹二等空曹
三等軍曹OR-5伍長/二等兵曹三等陸曹三等海曹三等空曹
伍長OR-4兵長/水兵長陸士長海士長空士長
特技兵
上等兵OR-3上等兵/上等水兵一等陸士一等海士一等空士
一等兵OR-2一等兵/一等水兵二等陸士二等海士二等空士
二等兵OR-1二等兵/二等水兵(該当なし)*2

*1 個人としての背任・犯罪についてはまた別の問題となる。
*2 2010年10月31日までは「三士」が存在した。

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