【海上保安庁特殊警備隊】(かいじょうほあんちょうとくしゅけいびたい)

日本国の沿岸警備隊に相当する海上保安庁に設置されている対テロ特殊部隊
SST(Special Security Team)の通称がある。
第五管区海上保安本部(神戸)の「大阪特殊警備基地(大阪府泉佐野市)」に所属している。

本隊のルーツは、1980年代に計画された関西国際空港の建設工事にあたり、(先の成田空港での教訓から)空港建設予定地(海域)周辺で発生することが予想された極左武装組織による「抗議」を名目とした海上テロに対処するため、1985年に第五管区海上保安本部(神戸)隷下の岸和田海上保安署に設置された「関西国際空港海上警備隊」であった。
その後、1990年代に編成された「輸送船警乗隊」*1の人員が統合され、1996年に部隊として発足した。

現在の主な任務は、朝鮮半島有事の際に避難する在外邦人の海上輸送の護衛、原発などの重要施設が密集する日本海沿岸のテロ対策などであるが、その他にも重要な海上任務*2が想定されており、隊員の編成・訓練は船内制圧などのCQBに重点を置いている。
これ以外にも、潜水能力を活かして海難救助に出動することもあり、日本の特殊部隊の中では出動頻度が多い部隊とされている。
このため80名程度の隊員から成るSSTは、警備実施等強化巡視船の特別警備隊や救難強化巡視船の潜水チーム隊員から知力、体力、射撃、格闘術に秀でた者を選抜し、ドイツ製サブマシンガンMP5、自衛隊などが使用する国産の89式小銃、狙撃用ライフル、特殊閃光手榴弾、暗視ゴーグルなどを装備している。

同隊の創設にあたり、研修・指導にはアメリカ海軍SEALsが関わったとされている*3

主な戦歴としては、前身の関西空港海上警備隊時代には、鉱石運搬船暴動事件に出動し、暴動の鎮圧に成功した。 1999(平成11)年3月23日の能登半島沖不審船事件では、不審船制圧のために追跡中の巡視船で待機したが、結局出番なし。不審船騒動としては2001(平成13)年の奄美大島沖不審船事件でも出動したが。この時不審船はSSTの突入を前にして自爆してしまい出番なし。 続いて1999(平成11)年10月22日に日本の海運業者保有の大型貨物船「アランドラ・レインボー号」(7,762トン)が武装海賊に襲撃されると、出動した巡視船「はやと」に乗り込み待機したが、貨物船乗員は救命艇で漂流中に漁船に発見され、また貨物船はインド沿岸警備隊に発見されまたも出番なし。 2000(平成12)年8月4日那覇市西北西約330キロの東シナ海上を航行中のシンガポール船籍ばら積み貨物船「アセアン・エクスプレス号」(約1万500トン)の船内で9人の中国人船員が暴動を起こす事件発生。SSTに出動命令が下り。8名の隊員がラぺリング降下で急襲、無事鎮圧に成功している。 このように、SSTは日本の特殊部隊としては群を抜いて経験が豊富な部隊である。


*1 こちらは1992年に行われた「使用済み核燃料輸送船警備」任務に際し、重武装警備巡視船「しきしま」及び同船の警備対象となる輸送船に乗船する部隊であった。
*2 海賊への警戒や一般の海上保安官では対処が困難な事案(船内での殺人事件や密航船・密輸船の制圧など)、海上及び船舶での爆発物処理など。
*3 前身のひとつである「輸送船警乗隊」が編成されるに当たり、SEALsから指導を受けている。

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